サルとキツネ(ちょっとゴブリン)
ヤマーダ目線でしばらく続きます。
「へっくしょん!」
裸のヤマーダからくしゃみが木霊する。
……ハァ
……ハァァ
……ハァァァー
………
………今日が、冒険初日だよ
………
「アーーーッ!」
「ダーマサーーレターーーッ!!」
と一人で叫ぶヤマーダ。
…騙されたんだよな?…
あーあぁーっ!
学業を成就する前に
御守り盗まれてるしっ!
「チッキショーーーーッ!!」
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1時間後
ヤマーダの興奮がやっと冷めてきた。
……ハァ……
とりあえず現状は
“ステータス”
名前・ヤマーダ
種族・人間?
年齢・14歳男
職業・無職(Lv-)、魔物使い(Lv2)
ギルドP・E(6p)
レベル・3
体力・13(+2)
魔力・11(+4)
攻撃・8
防御・8
知識・7
敏捷・14(+10)
運・19(+20)
装備・なし
魔法・呼び寄(Lv2)、回復(Lv1)
スキル・空気使い(Lv4)、言語理解(Lv5)
宿泊回復(Lv-)、時間回復(Lv-)
スキル補正(Lv-)、芸(Lv2)
所持金・0G
所持品・なし
何か、
レベルがいっぱい増えて
装備が全てなくなった!
…あっ!
所持金も全くない
これじゃあ、町に入れない!
…のか?
でも、ギルドに登録したっし
水晶玉さんで確認出来るんじゃ
って、日も暮れかけているから
ここで野宿すんのか?
オレ…
ハダカだよ…
ヤマーダが頭の中でバーチャル会議をしていると、
『オイ!ハダカザル』
何か声が聞こえたぞ?
ヤマーダが辺りを見渡すが誰もいない。
『無視すんなよ、ハダカザル!』
「誰だよ、オレに言ってんのか?」(ヤマーダ)
『下だよ、下! 下をちゃんと見ろよ、ハダカザル!』
ヤマーダが足下を見ると、金色の小ギツネと目が合った。
『《お水》頂戴?』
…?
疑問形?
《お水》をご所望で?
でも…
「なぁお前、この姿で水なんか持っているとでも思うか?」
ハダカのヤマーダが嫌みをいうと、
『だってオマエ、伝説の《空気使い》なんでしょ』
「えっ! ちょっと待って! なんで、俺のスキルを知ってんのさ?」
ヤマーダが疑問に思っていると、
『《鑑定》に決まってるじゃない、ハダカザル』
ハイ、
またハダカザルいただきました~
…しっかし、
この小ギツネ、口悪いな~
ヤマーダは両手のひらをお椀状にして、《美味しい水》を注ぎ、小ギツネに飲ませてやる。
『美味しーっ! やっぱり《空気使い》は《超美味しい水》を作れるんだねぇ』
…っん、
なんで空気使いのことが?
あと、《超美味しい水》って?
キツネ先生ーっ!質問ーっ!
「《超美味しい水》って何だ?」
『スキルを調べれば解るじゃない?』
えっ!マジですか?
“空気使い”
空気使い(Lv4)・
《超美味しい水》《結構な炎》《そよ風》《超美味しい空気》を術者の半径10mまで作成可能。作成可能の範囲には、生物内及び無機物内の空気も含まれる。任意の職業に転職でき、重職は4つまで可能。
確かにキツネ先生の言った通りだ!
《美味しい》が《超美味しい》ってさ
《空気使い》って、
有能なスキルなんじゃねぇ!
ついでに
“魔物使い”
魔物使い・
魔物と仲良くなることで様々なお願いが出来る。
《呼び寄》、《回復》、《芸》を覚えられる。
魔物がお願いを叶えるかはレベルと気分によって変化する。
能力補正は体力(Lv×1)、魔力(Lv×2)。
今、知ったんだけど、
《魔物使い》って
魔物を従えるんじゃなくて
お願いすんのかよっ!
立場、メッチャ下じゃねぇ…
『よし、オマエを仲間にしてあげるわ!』
小ギツネからの意外な提案。
「結構です」
即答するヤマーダ。
『今、アタシは大人になる旅をしてるの。あー、これからは、何時でも《超美味しい水》が飲めるから、旅がだいぶ楽になるわ!』
な、なぁ!
ちゃんとオレの話聞いてんの?
今、断ったよね?
「…あのさぁ、名前も知らない小ギツネ様から仲間に誘っていただいてもさぁ…」
『アタシの名前はネーコ、気軽にネーコさんて呼ばせてあげる』
キツネ先生は、
オレの話を聞かないのかな?
キツネなのにネーコ…なんか笑える
……後、たぶんメスだな
「オレはヤマーダ。まぁ《鑑定》で知ってんだろ?」
『じゃあ、ヤマーダって呼んであげるわ、ハダカザル』
ハイ、
まったまたハダカザル出ましたー
しかも呼び捨て!
「でもさ、ハダカザルって止めてくんない」
『しょうがないなぁ、分かったわ。じゃあ、パーティー登録するから了解して!』
何でいつの間に、
オレが仲間になることになってんの?
会話のキャッチボールが、
ドッヂボールに?
“ネーコからの登録申請がありました”
たぶん念じればいいんだよな
“了解”っと
“ネーコとパーティーを組みました”
“ネーコのステータスが開示されます”
おっ!
仲間にすると仲間のステータスが見れんだ
よし!
“ステータス《ネーコ》”
仲間・ネーコ
種族・アヤカシギツネ(魔物)
年齢・5歳女
職業・無職(Lv-)
レベル・15
体力・32
魔力・45
攻撃・27
防御・32
知識・57(+10)
敏捷・56(+10)
運・25(+20)
装備・かわいい首輪(知識+10)
魔法・火魔法(Lv3)、闇魔法(Lv3)
空間魔法(Lv2)
スキル・鑑定(Lv3)、宿泊回復(Lv-)
時間回復(Lv-)、スキル補正(Lv-)
人化(Lv2)
所持金・2,000G
所持品・-
コイツ、魔物なんかい!
しかも、5歳って!
オレより年下じゃんか!
もっと年長者を敬えよ!
あと、《無職》って…
…あれ?
でも、なんで魔物と喋れんだ?
《言語理解》のレベルが
上がったからかなぁ?
そっれにしてもコイツ
スッゲー能力高いよな!
レベルがオレより10以上高いし
体力は2倍、魔力なんかは3倍もあるよ
よー分からんスキルもあるし…
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ヤマーダとネーコが互いの自己紹介をしていたら、日が暮れてきた。
『今日はここら辺で野宿して、明日から北に向かうわよ! ヤマーダ、分かった?』
5歳に仕切られる今日このごろ
by 山田歩
『ヤマーダ! ちゃんと聞いてんの!』
「はいはい、ちゃんと聞いてますよ、ネーコさん」
まあ、ネーコの行きたい方向は
臭3人衆の町とは逆方向だし
丁度いいか
近くの大木の根元を今夜の宿とした二人。
「なぁネーコ、なんか寒くないか?」
春先?とはいえ、服を着ないと寒さがダイレクトに感じられる。
『《空気使い》の《結構な炎》でも出せばいいじゃない』
「なるほど」
『ついでだからアタシに《超美味しい水》ちょうだい!』
「あ~はいはい、《超美味しい水》ですよー」
『でさ、ずっと疑問なんだけど、なんでアンタ裸なの? 人族って服を着てたと思うけど、ヤマーダの趣味ってヤツ?』
《水》を飲み一息ついたネーコが、ヤマーダの格好を不思議に思い尋ねてきた。
よ~し、そこまで聞きたいのなら
ヤマーダ様の大冒険譚を聴かせてやるか
ネーコにいままでの経緯を身振り手振りを交え、物語り調でながながと話した。
『ふーん…ヤマーダってバカなの?』
率直な感想。
ハイ、馬鹿でーす!
「でもさ、普通、冒険者が冒険者を騙すと思うか?」
『思うわよ! 当たり前じゃない!! みんな生きるために必死なのよ! …ヤマーダってボーっとし過ぎじゃないの』
ネーコから厳しい指摘を受けることで、自分の置かれた環境が地球とあまりに違うことに、気づき始めた。
やっべーぞ、異世界!!
こりゃ日本と滅茶苦茶違うじゃねぇか!!
これが、ハードモードっヤツなのか!?
ヤマーダはこれからの異世界生活に一抹の不安を覚えつつ、就寝するのだった。
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一晩明けて
…ガシッ…ドッドガッ、バキッ!
………っん……なんか
……うるせーなー!
っておい、痛っ!、痛!!
ヤマーダが虚ろな目で辺りを見渡すと、2匹のゴブリンに木の棒で攻撃されていた。
腹部が熱を帯びて痛むことから、既に肋骨が折れているようだ。
『殺ス!』
『奪ウ!』
ゴブリンの眼には、強烈な殺気を帯びている。
おいーっ!
どーっなってんのーー!
続く
次回は、ヤマーダが街に向かう予定です。