第三話 アルーテに転移? 転生?
私は今非常に困っている……
何か記憶には残っているが、いきなり獣道? いや、幅が広いから道に横たわっていた。
ん~、神と会っていたのはその通りなんだろう。私の意識が戻った時に体を触って確認したが、明らかに違った……何がとは言わないが、確実に今までの体ではなかった。
ついでに何となく自分の手を見ていると浮かんできたものがあった……
名前:未設定
LV:一
基礎体力:二百
基礎魔力:二百
思考:二百
運:十
ユニークスキル:神眼・不眠不休・無限収納・万能地図・賢者・無限の魔力・不思議な等価交換
スキル:武術七・魔法九・気配五・隠蔽十・礼儀作法一
加護:地球の神の加護・アルーテの神の加護
――空中にいきなり現れた、私が知っているタブレット。そのタブレットがもう少し改良が進み、空中に現れ操作できる感覚が今の神眼の能力なのだろう。
……何となく感じた。
だからどうなんだと言う状況だが、私は地面に座り込み考え込んだ。
……
……
うん、私は異世界に来たんだな。それでないと、私が産まれたあの地域よりも周囲に人工物が無いのは説明がつかない。
見渡す限り空き缶がない、ビニール袋がない、比較的広い道なのに車の跡がない。
全てがこじつけに思えるが、何か世界の臭いが違うような気がした。
……
――異世界だとして、どうしようか考えていると万能地図のユニークスキルを思い出した。このスキルがあれば周囲がどうなっているか把握出来る……そう思ってスキル――スキル――スキルと頭の中で念じてみたが、またタブレットのようなものが見えて、中心は私だろう。そして赤い点は危険な赤……敵対する奴だろう印が表示された。
だがその印もどの程度の距離が離れているかわからないし、地形も出てこない。――万能と言うスキルなわりには使い勝手が悪いな~、と思っていたら、どれくらいの縮図なのかは表示され、見やすくなった。
それでも地形までは自分の周囲までよりわからないようで、無機質な灰色一色でほぼ地図が埋まっていた。
……
その地図を確認すると、僕たちの五十メートルほど前に赤い印があった。
タブレット様に表示しながら敵が近くにいるのかと考えていたが、このままの万能地図の表示だと不便だと考えて、視界の片隅に移動できないか想像した。
すると私の思いが通じたようで、右下にミニマップのように地図が表示され、ゲームのような視界に変わった。
これはいいけど、いいんだけど……何で青い印の周囲に赤い印が集まっているマップになるのだ……
慣れたと思ったらいきなり誰かのピンチなのか、これは助けないといけないのか。
私は今武器を持っていない。
私は今おそらくこの世界では普通の服を着ている。
私は――戦ったこともなく、何も装備もなく、心構えもなく、頼りになる魔法の使い方も今はわからない。
異世界に来たのなら、ちょっと人助けでもしようか……と神との出会いの場で考えていたが、やはり心の準備は出来ていない。
……
……
だが、少しの間考えていたが、私はこのような場面で人を見捨てる人だったのか?
夜、夜中でも携帯電話を抱えて眠っているほど――『困った時には電話をしてこい!』と部下に話していた。
自分の負担になろうともそれは止められなかった……
――だったらこの状況で私は何をするべきなのか?
……
……
「助けなきゃ……」
ついポロッと出た言葉が助けたいと言う意思だった。
――そう思った次の瞬間には走り出していた。
――今の私の移動の速さはオリンピック選手並みにはあるだろう。スタミナも、息切れもしない。
今やること、あの青い印にたどり着く、それだけを目的に走っていた。
……
――やっと青い印の近くまでたどり着いたが、その方向を見てみると、今までに見たことがない生き物に人間が囲まれている場面だった。
――ピンクの髪の毛を振り乱し醜悪な生き物を相手に剣を振っている少女。
――小さな体に大きな顔。醜悪な表情をした角のある生き物が、遠目で見ても刃こぼれしている剣を振り回す。
多くは角のある醜悪な生き物で構成され、ほとんどが素手だが、対する人は圧されていた。
立派な金属の鎧を装備しているが、何処からか炎の玉が飛んできてぶつかっている。
革のような装備をしている人にも一人に対して、五匹は角のある生き物が囲んでいる。
――あれは本屋で子供の年齢対象な場所にあった、空想の生き物で……ゴブリン?
――ゴブリンだなあれは……と高速で思考を繋いでいく……
であれば私が今出来ることは……
――ん、あいつの強さはどうか――――
私の目が疼いた……
『ゴブリン
名前:なし
LV:五
基礎体力:三十
基礎魔力:五
思考:二
運:一
ユニークスキル:異種交配
スキル:体術一
加護:なし
……
ん――痛いな――目が痛い――だが慣れることは可能だな。
これが相手の、あの集団で一人を囲んでいるゴブリンの能力か?
……ん? 普通に許容したが、これは神に会った事が本当だと理解できたからか?
――アルーテの神の加護:……精神耐性……
ー精神耐性:精神に作用する事柄の耐性
……
っと、自分の事に意識が向いていたが、この数はヤバイか。
青い印は十人ほど、赤い印は匹か……百ほどまでに増えている。
またもやスキルに思考を奪われていたが、見える範囲にいるピンクの髪の人が叫んだ!
「皆さん! 私を置いて逃げてください! 私の心配は不要です! この醜悪なゴブリンの狙いは私です! 女の私を置いていって下さい!」
「「「「うるさい! 黙って守られていろ!!」」」」
ん?
「あなたは我々が守る!」
「あーーー! 自分が犠牲になろうとしても駄目だよ!」
「俺たちゃーあなたの味方――守護だ!」
「――駄目ですよ。そんな事を言っても。」
「ですが! このままではあなたたちが!」
「ふっ……あなたのような身分の人から受けた我々の恩に比べたら!」
「我々はーーー!」
「あなたのために命を捧げます!」
「――ん――あなたたち……命は……」
こんな会話を続けている最中にも戦いが続いている。
相手はゴブリン……この数値が強いかはわからないが、数に圧されている。ここに私が数値だけの計算で介入してよいのか……
「くっ! 来ます! 押し寄せてきます……」
……
流石にこれを見逃すのは私の性格上無理か――はーーー、良くわからないうちにこの状況で……。数値は正しいのか! ――正しいのなら助けられるが……
「助けは必要か!?」と私はピンクの髪の女に叫んだ。
しかしピンクの髪の女は「助けは不要です! あなたは早くこの場から逃げてください! 我々のことは見なかった事に――――」
くっ、ここまで言わせてその答えか……
「介入する! ――――――――(何だ! この感覚で――)――我はの言葉に答えよ(んーーー?)――精霊よ――――黒雷!(はっ? 何で口が勝手に……)」
ジャガガーーーーーンーーージュジャアアアンンーーーー
雷が……何の現象か、黒い雷がゴブリンにだけ……
――ゴブリンは動きを止めた。
――何もいえぬまま……
――青い印が白くなった……味方でもなく、ただ敵とも思えないかのように……
――これが私と異世界らしいピンクの髪の女の子との出会いだった……