能力選択
――ふんわりした感覚が消え、何となく意識が戻って来たようだ。
少しずつ目を開けていくと、目の前には何もなかった。
体は動かせるようで、徐々に体を起こす。
そして周りを見渡してみるが、地平線が見えるだけだった。
自分は今どうなっているのか混乱し、恐怖を感じて来ると、頭の中に響くように声が聞こえてきた。
『君が地球の神がこの世界に転移させた人だね。』
急に声が聞こえ更に混乱してきた。しかしその様子を知ってか知らずか、頭の中の声は話を続けだした。
『ごめんね。僕たちの世界の魂が一つ壊れてしまったんだ。君の世界では魂の数が豊富にあり、一つくらい壊れても世界はどうにも変化はない。しかし僕たちの世界は作りが違って、¨強い¨魂の数の減少に敏感なんだ。だから僕の世界が壊れないように地球の神にお願いした。魂を一つ分けてもらえないかと。』
――魂?
――お願いした?
――私は賭け事がどうと言われた記憶が?
『……君が聞いた言葉は正しい。僕はお願いした、魂を一つ分けてくれないかと……。しかし地球の神も自分の世界を大切にしていた。自分の世界の魂を、自分の大切な魂を渡すことはできないと……。しかし僕も必死だった。ちょっと卑怯な手も使って賭け事に持ち込んだ。そして賭け事に僕が勝った……。――その時の地球の神の絶望した顔を思い出すと僕もつらくなる。だけど僕の世界の大勢の生き物のためにも、僕はどんな手も使わなければいけなかった。だから地球の神を許してあげてほしい。あの態度は少しでも君に負担をかけないようにとった態度なんだ。普段の地球の神はあんな性格ではないんだよ。』
――地球の神?
――あの人の態度は、悲痛な思いを悟られないように?
『そうなんだ。申し訳なさそうに神がお願いする場面を見てどう思う?おそらく生き物であれば神気を感じて、自分を攻めてしまう。しかし地球の神は自分が悪いことにして、この世界に来た後も君に心の負担をかけないように考えていたんだよ。あんな態度をとると、相手を恨めるだろ。恨む相手、敵がいる状態っていうのは楽なんだよ、人のせいにできるから。しかし僕は伝える。僕がすべて悪い。申し訳なかった。』
――神二人に謝られた男?
僕は何なのだろう?
これからの僕はどうなるのだろう?
――夢?
『これは夢ではない。君はこれから僕の世界に行く。僕の世界は君の世界ではよく小説になっている、魔物もいて、魔法が使える世界だ。』
――小説?
――魔法?
『そうだ。生き物はステータスと言うものを持っていている。位が高いほど強い――。そしてレベル――スキルなどと言うものもある。だから選んでほしい。自分の取りたいスキルを。地球の神のポイント、君のポイント、そして僕もポイントを分け与えるよ。だから君にはこの世界で思うように生きてほしい。』
――選べる?
――好きなように送る人生?
『そうだ。神二人の罪滅ぼしに出来る限りの願いをかなえる。種族、年齢、見た目、スキル、ステータスの数字を高くするのは全部は無理だけど……可能な限りは叶えるよ。』
――種族?
『そう、僕の世界は人間以外にも色々な種族がいる。君の世界と比較して、人族は人間だ。獣人族は、君の世界での動物の特徴と人の特徴を併せ持っている。妖精族は長寿で、エルフやドワーフ、妖精などがいる。龍人族は龍と人の合わさった種族。魔族は君の世界で悪魔と人の合わさった感じだ。あとは精霊や魔物、魔王なんてものもいる。魔王は、その時々で違うが、魔族とは別だ。ある時現れる魔物の王だ。そして僕の世界には僕が直接武力を使うことはない。すべてはみんなが決める事だから。そして、魂は通常は再生して、消滅しないから。世界は続いていくんだ。』
なんとなく頭に入ってきた。
僕はこれから違う世界に行く。
だから能力を選ぶことが出来る。
『そう。ここにい一冊の本がある。この中から自分の欲しいスキルを選んでほしい。ステータスの数値については、きちんと死ににくいものにしておくから、出来たら君はスキルだけを選んでほしい。ここに一般的なLV一のステータスを教えておく。』
名前:○○
LV:一
基礎体力:十
基礎魔力:十
思考:十
運:二
ユニークスキル:なし
スキル:一つ
加護:なし
*ユニークスキルはレア
*スキルは努力するとつく。生まれた時からついている人は才能。自分の行動を補助してくれる。
*加護は様々な効果がある。
*スキルにはレベルがついているものがある。最高レベルは十。
――ここにきて急に現実感が出てきた。
本の中身もすごい項目ばかりだ。
見た目や記憶の保持、年齢、種族と色々変更できるようだ。
今までの私の人生を振り返り、この中から選んでみる。
後悔のある人生だった……
だからこそこれからの人生はずるくとも何でもできるようにしておきたい。
いつ何が必要になるかわからないから。
そして、選んだもの全てが許可されるものでもないから。
自分の今を受け入れ、じっくり考える。
……
……
……
……
……
……長い時間考えた。考えた末、小説でよく見たスキルを選んでみる。
そして記憶を……
色々と考えて反映してみる。
名前:未設定
LV:一
基礎体力:百
基礎魔力:百
思考:百
運:十
ユニークスキル:神眼・不眠不休・無限収納・万能地図・賢者
スキル:体術五・剣術五・魔法九・気配五・隠蔽十
加護:なし
これが私の希望だ。おそらく感じたポイントと本に書かれていた消費ポイントは同じ位だろう。
そして、年齢この世界では十五歳が成人みたいだから十五歳で――
記憶は――知識は持って、人生の記憶は消してもらう。
ただ、十五歳で違う世界に行くことに不便がない程度にしてもらおう。
言葉はスキルなしでもわかるようになるようだ。だから魔物の言葉までわかるのは嫌なので、言語理解は付けない。
顔は上の中で――髪は黒にしたかったが、珍しすぎるようで、薄茶色で。
身長は転移の時点をピークにするようなので、あちらの世界での平均の百七十センチにする――細マッチョな見た目で……
自分の能力を決めていると途中から不安でなく、期待が強くなった。
だから――これでもかと言うほど詰め込んでみた。
「これだけでいいの?もっと選べるけども。それとも僕が後は限界まで選ぶ?」
これでもまだ選べるなんて、神様……
反省しているのはわかるけど凄すぎます。
ん~、だけどテンションが上がってきた。
「じゃあ僕が後はステータスも含めて足すよ。」
……
……
……
その結果が……
名前:未設定
LV:一
基礎体力:二百
基礎魔力:二百
思考:二百
運:十
ユニークスキル:神眼・不眠不休・無限収納・万能地図・賢者・(無限の魔力)(不思議な等価交換)
スキル:(武術七)・魔法九・気配五・隠蔽十・(礼儀作法一)
加護:地球の神の加護・アルーテの神の加護
……
……
『そろそろステータスの変更の影響が出てきているね。じゃあ、街まで歩いて三十分くらいの、魔物の少ない森の中に転移させるから。今回は本当の申し訳ありませんでした。何かあったら助言はできるから、教会に来てね。じゃあこの世界、アルーテで良い人生を。』
……
『あっ、いい忘れるところだった……。アルーテの世界は大体はレLVが一上がると、一から三の間位の数値が上昇するから……。で、アルーテだとLVが百位が最高だから……ん、計算だけだと三百十位が各能力値が最高だから――最高だから――――チートだよ。――――お詫びだよ――――』
そう言われると、目の前がまた白く染まった。
――私はまた意識を手放した。