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は~いあなたはラッキーで~す  作者: sazae9
1.ラッキー?アンラッキー?
1/3

過去の思い

「は~いあなたラッキーで~す。抽選に選ばれました!」


夜中になった携帯電話。

私はいつものコールだと思い、通話ボタンを押していた。


……今日は何があった……

何時もの事ながら憂鬱な気持ちになる。


……


ん~眠い……いつ何時でも起こされる生活も疲れたが……『選ばれた?』何てどんな状況になっているのだ?




……



――私は何に選ばれたのだろう?


仕事の電話ではないのか?


……


んー、覚醒しない今の思考……



――今までの人生で、懸賞に応募したことはない。



学生の期間が終わり、お金を稼がないと毎日を平和に過ごせなくなって、どれくらいの年月が過ぎたのだろう。


これまで、賭け事もせず堅実に過ごしてきた人生。この人生は果たして良い人生と言えたのだろうか。


この電話の言葉を聞いて、ふと過去を思い出す。



……

……



少年時代、友人の家に遊びに行った。

まだ黒電話と言われる、アナログな電話を使用している時代であった。

個人に連絡をするのではなく、一家に連絡し、個人を呼び出してもらう時代。


僕は友人の家に遊びに行った。

そこは何時も行く友人の家、皆が集まる家。私たちは親がいない友人の家に集まることが日課だった。


……


「よっ、開いてたから勝手に上がってきた。遊ぼーぜ。」


「おう! 今日は止めてやるぞ! お前のシュートを。――だけどちょっと待ってくれな。今日はあの先輩も来てるから……」


……


その先輩は明るいんだが調子に乗りやすい先輩だった。

その先輩が今日も調子に乗っている……




――友人の家に遊びに来ていたその先輩が――勝手にいたずら電話をかけ始めた。



「は~い、あなたはラッキーで~す!海外旅行が当たりました!」


そう電話口で話している。

受話器を置いた後は、電話の相手の反応を面白おかしく話していた。喜んでいた人、困惑する人、怒る人。さまざまな反応があったと言う。


――現代ではすぐに連絡が個人に届く時代。良くも悪くも、自分の時間に人が割り込みやすい時代となっている。


いたずら電話をするとしたら非通知設定にして、誰がかけたかわからなくする必要がある。


架空請求詐欺と同様で、本当の自分の身元を明かさずにだます。

あの時の先輩は、人の家だからこそ行った行為であろう。

もしも相手が怒って、何か不利益を被って警察などに探ってもらった場合、自分にたどりつかないようにする悪知恵だと思っている。


……


思考がずれたが、この身元を明かさずにいきなり話し出した内容は、普通に考えたらいたずらか詐欺であろう。金銭の被害は無いが気分的に……


……

……




さて、過去の思いは別にして、今この電話の言葉に私はどうやって返すのが正解なのかと考えているうちに、相手が再度話し出した。


「困惑しているであろうあなた!この抽選結果は覆りません、残念!おめでとう!」


――覆らないとはどういう事だろう?

――私が断ると相手はどうにもできないと思うのだが。

――それとも、当選者がいなくなると言いたいのだろうか。


「この抽選は、今世界にいるすべての人々の中から一人だけ選ばれるものです! そして抽選をする間隔は、まったく決まっておりません。あなたの前の当選者は、百年前です!」


百年前とはずいぶん昔のことだな。

ん~?手の込んでいなところを見ると、いたずら電話だな?

何十年ぶりだろうな、こんな電話は。

まだこんなことをする少年がいるのだな。


「ここで!何に当選したか教えちゃうよ! なんと、なんと!!」


……

……


間が長いな。『なんと』から進まない。

そんなにためて言うからには何か落ちを作って笑わせてくれるいたずらなのかな?


「なんと! 異世界に転移する義務に当選しました!! ウェ~~~イ!」



――――異世界に転移?


最近まとまった時間が無くなり、移動時間などで読むようになったあの世界観か?


年甲斐もないと思うのだが、無性に読みたくなる。

素人が書いているものと言うが、自分の好みの文章が手軽に読めるので止められない――――あの世界?


「おめでとう! 義務がという所が重要だ! あなたにはなんと――――拒否権がない!! うぇい!」


拒否権がない?

拒否したら良いだけでないのか?


「ここから先は僕の担当でないから、もう次に行ってもらうよ!次のところで詳しく話を聞いてね! ごめんね! 僕が賭け事に弱かったばっかりに。だけど、僕のせいだから、少しは僕のポイントも使えるようにしておいたから許してね! じゃあ良い異世界生活を!!」


私が口を開こうとすると、目の前が光に包まれた。


――目の前が真っ白になった時、もう一度声が聞こえてきた。


……


「――本当にごめんね。でも、あっちの世界ですごい人になれるだけの僕のポイントを使えるようにしておいたから。それにあなたのポイントを合わせると、今まであちらに渡った人の中で一番多いポイントを使えると思うから……。じゃあ今度こそ本当にお別れだ。すまなかった。私があんな賭けをしたからだ。本当に反省している。だから――どうか良い人生を送れるように祈る。地球の神として反省する。」



地球の神?

最後に『反省する』と言われた後、意識が薄れていくのを感じた。


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