帰路。【エスパルマ編】
ニーナは、飲み物に睡眠薬を混入されていて、その日の宿に着くころまで起きなかった。
もちろん、犯人はアシュレイだ。
・・私は、あの後いたたまれない気持ちになっていた。だって、アシュレイにぎゅってされて、ほっぺにチューですよ!?びっくりしたし、その後の笑顔は生涯忘れることができないくらい、綺麗だった。
正直に認めよう。恋愛戦闘力0の頭でっかちの私は、ちょろイン要素が強い。めちゃくちゃドキドキしてしまった。
でも、その後のアシュレイはいつも通りだった。いつも通り・・だけど、笑顔がとても優しくなった。天使が大天使に進化してしまったかのようにキラキラしてとても直視できない。直視したら、ちょろインの私はうっかりアシュレイの虜になりかねない。
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アシュレイを無事に領地に送り届けると、執事さんも使用人もすぐに迎えに出てきた。・・彼らも皆エスパルマの人間で監視役だったけど、5年くらいかけて調教した、とアシュレイは言っていた。
生い立ちが複雑すぎて、平和ボケした私はかけられる言葉があまりない。そう言うと、アシュレイが蕩けそうな笑顔で「リアは笑顔でいてくれればいいよ。」とか言うから、またきゅんとしてしまう。私の浮気者!!
再び馬車の中は私とニーナだけになる。
「お嬢様、先日は眠ってしまい申し訳ありませんでした。」
ニーナが深く深く頭を下げる。
「えっ!!いいのよ!!!そんなの全然!!!!」
だって、言えないけど、睡眠薬を混入されていたんだから!!起きてたらびっくりだよ。
ニーナが悲壮な顔で言う。
「私はお嬢様の侍女失格でございます。これを機に私は実家に戻ろうかと。」
「え、だめ!寂しいじゃない。いなくならないで。」
「お嬢様・・・。」
「ニーナが、私が嫌だからとか、ご両親と過ごしたいとかあるなら止められないけど。」
「お嬢様は私のことが苦手だったのでは?」
「そんなの、もう慣れたし、今では大好きよ?私はお調子者だからニーナみたいな人が傍にいてくれないとダメなのよ。」
「お嬢様・・・私は子供の頃から思ったことをすぐ口にしてしまう性格でして。」
「うん知ってる。」
思わず食い気味に言ってしまったけど、ニーナは薄く苦笑いしただけだった。
「侍女の仕事もエデン家に来るまでは、色々な家を転々としていました。大抵、口が災いして他の使用人とも仲良くはなれず、仕事を淡々とこなす日々でした。」
「そ、そうだったの。」
「お嬢様は、本当に出来が悪くて。」
「ぐっ。」
「勉強を全くしてくださいませんでした。」
「・・・そうね。」
王様の名前も知らなかったもんなぁ。
「お嬢様はこの半年で本当に変わられました。お嬢様の努力は私が一番知っています。勉強も、サロンも、歌だってこっそりとお部屋で練習されて…どんどんと成長していく貴女が本当にまぶしかった。なのに、私は変わらないままです。貴女に相応しいとは思えません。」
掛け値なしのニーナの言葉にじーんとする。
「ニーナ・・・。そんな風に思ってくれていたの?・・・というか、何?相応しいって。誰が決めてるの?私はニーナに傍にいて欲しい。それでいいじゃない。」
ニーナが温かい笑みを零す。私もつられて笑顔になる。
「ねぇ、ニーナはどうして危険なエスパルマ王国までついて来てくれたの?」
「・・・私も、お嬢様のことを好きになったからですよ。」
「え?」
「いえ、侍女として当然のことです。」
今、好きって言ってくれたよね?くすぐったくて嬉しい。
4月から、前世を思い出すなんて奇想天外なことも、辛いことも、悲しいこともあったけど・・・だからこそ喜びをより一層感じられる。頑張ってきてよかった。友達が増えた。大切な人が増えた。刺激が多くて、毎日充実して…今、すごく幸せだ。
これにてエスパルマ編終了です。エスパルマ編はこれまでの話の雰囲気と毛色が全く違う話になったのに読んでくださって本当に嬉しいです!
エスパルマ編で評価してくださった方本当にありがとうございます。きっと、アシュレイを好きでいてくれる方なんだろうな、とすごく嬉しく思っていました!




