祝、人間卒業
「うおぁ!!」
なんと俺の背中に大きな羽が生えていた。
重さは全く感じないが動かすことはできる。
どうやら既に体の一部になっているようだ。
「ちなみに、羽は天使の階級を表すものです。大きければ大きいほど身分が高いことを指します。邪魔であれば自分の意思で一時的に消すことも出来ますよ」
「マジか。まぁ、今はこのままでいいよ」
「そうですか。では、急ですが他の大天使も紹介しますのでこちらへ」
「おう」
部屋を出て再び広い廊下を歩いているとミシェルが何かを思い出したかのように声を出した。
「あ」
「ん?どうしたんだ?」
すると、ミシェルは天使なのに小悪魔のように微笑みながらこう言った。
「あなたの考えはもう読めませんのでご安心ください」
立派な扉の前に立ち止まった。
「こちらへお入りください」
そう促されて部屋に足を踏み込むと、これまた豪華な部屋だった。
先ほどの部屋ほど広くはないが、広い部類に入る部屋だ。
部屋の奥の扉の正面に位置するところに、まるで大企業の社長が使っていそうな書斎机と椅子があり、その後ろには窓が設置されている。
そして机の手前にはソファとテーブルが置いてある。
壁際には本棚が並べられており、中にはびっしりと本が詰まっている。
こうして見ると、本当に社長室にも見える。
「ん?」
視界にはソファに座った三人の天使が目に入った。
「紹介します、手前から『ランジェロ』『アルフィ』『セラフィード』です」
「なるほど、君たちが残りの大天使か」
俺がそう言うと、合図したかのように三人が立ち上がった。
「初めまして、セラフィードと申します」
そう言って前に出て来た天使は俺よりも遥かに背が高く、銀髪で長い髪を後ろに束ねていて、眼鏡を掛けている。
顔はかなり整っており、クールな感じが漂っている。
「初めまして。俺は木下優也だ。優也と呼んでくれ」
「はい。これからよろしくお願いします」
少しだけ(何処と無くミシェルに似ているな)と思ったのは内緒。
「あの、私はアルフィです。よろしくお願いします」
アルフィと名乗った少女はとても小さい。
ミシェルよりも小さい。
そして思わず抱きしめてしまいたくなる程にほんわかしている。
一言で言うなら「癒し」。
髪は綺麗な赤色のショートヘアーだ。
顔はとても愛らしくまさに天使そのものだ。
「あぁ、よろしくなアルフィ。困ったことがあったらいつでも言ってくれよ!」
「はい!」
後ろでミシェルが「普通は逆だと思いますが...」と呟いたことを俺は聞き逃していない。
「さて、君は?」
俺の目線の先は頼もしそうなお兄さんが立っている。
「あぁ、俺はランジェロだ。よろしく頼む」
彼はとても頼りになりそうだ。
容姿は中肉中背で俺より少し背が高い。
髪はショートの黒髪で、顔はセラフィード程ではないが整っており、爽やか系のイケメンだ。
片手には本を持っており、爽やかながら知的なオーラを放っている。
「おう。よろしくな、ランジェロ」
「取り敢えず、今日のところは解散してくれ」と指示を出し大天使たちを解散させた。
一通りの挨拶が済み机の方へ歩くと、部屋の角に本棚に隠されたように扉が設置してあるのが目に入った。
「この扉は?」
俺の質問にはその場に残ったミシェルが答えてくれた。
「その奥には大きな鏡があります。その鏡はあなたが望んだ場所を映し出してくれます」
「やっぱ天界すげぇな」
「さて、俺はここに座ればいいのか?」
例の社長が座りそうな椅子を指差しそう言った。
「はい。まだ仕事が慣れないうちは私共がサポートいたしますので安心してください」
「それは心強いな。それより、神様の仕事って一体なにがあるんだ?」
「そうですね、例えばこちらへ来た魂の裁き、下界の人々へ試練や幸福を与える、地獄へ堕ちた魂達の心を入れ替える等様々な仕事があります」
「幾つか質問していいか?」
「どうぞ」
「まず、試練や幸福って何?」
「試練とは人々に対し、難しい何らかの問題与え解決させるよう促すことを指し、知恵をさらに増やすことを目的とします。ですが、問題ばかりでは目の前にある可能性を潰してしまいます。そこで幸福を与えるのです」
「例えば?」
「人間で言えば、経済の発展や農作物の収穫量を増えやすくしたりですね」
「なるほど。じゃあ、二つ目」
「どうぞ」
「地獄に関して教えてくれ」
「地獄とは天国に来るにはまだ早い魂達が行く場所です。そもそも、魂とは人間のものだけではなく、下界で信仰されていた天使や動植物も含まれます」
「え?信仰されてる天使とか居るの!?」
「はい。天使には本当に沢山の役割があり、それを身分ごとに担っています。信仰を目的としている天使は...」
「...どうしたんだ?」
「一つ一つ説明するのが面倒なので、天界や天使などの情報は後ほどまとめてお渡ししてもよろしいですか?」
「確かに、そっちの方がいいな。」
「では、そのように」
「じゃあ、今日のところはのんびりしておくよ」
「わかりました」
返事をすると、ミシェルは部屋を出た。
(さて、なにをしようか。そうだ、神様の力とやらを見てみるか)
そう思いつき、俺は今まで居た建物を出た。
お久しぶりです。前原涼です。
バタバタしており、投稿が遅れてしまいました。