理由
「それでは、早速ですが天界へと向かいます」
「え?」
「少し目を瞑ってください」
「は、はい!」
そう言われ目を瞑る。
すると重力が無くなった様な気がし、驚いて目を開けると彼女が覗き込むようにこちらを見ていた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっと不思議な感覚がしただけだ」
周囲へ目をやると、天国と呼べるような風景だった。
ここは街に相当するのだろうか。
地面は草原が広がっていて、空には虹が架かっている。
建物が並び中心には噴水があり、そこで数人の人が楽しそうに談笑している。
そして更には羽が生えた子ども達が空を飛び回っている。
ミシェルを見ると、いつの間にかとても立派な羽が生えていた。
「一体ここは...?」
自然と俺の口からでる言葉にミシェルはこう答えた。
「ここは天界です。そして、あそこに居る方たちが天使です」
「天使?」
「はい。文字どうり神の使いである天使です。」
「じゃあ君も?」
「そうです。ですが、私は少々他の天使とは違います。私は四大天使の内の1人で、主に天使達を神様に代わりまとめる役を務めています」
「へぇ...凄いな...」
関心していると、ミシェルが話を切り出した。
「では、何故あなたをここは連れて来たのかを話します」
「あ、お願いします」
(いけない、てっきり忘れていた。俺がここに来た理由はしっかりと聞かないとな)
「まず初めに、あなたには神様になっていただきます」
ミシェルは平然とした態度でそう言った。
「え?」
数秒程度、俺の思考回路は完全にストップした。
「いや、ちょっと待って!!」
「わかっています、ちゃんとその経緯も説明します」
「あ、あぁ...」
「ご案内する所がありますので、歩きながら説明しますね」
するとミシェルは俺がここに来るまでの出来事を話し始めた。
「大昔、ここには沢山の天使に慕われていたとても美しい大天使が存在していました。しかしある日、彼女は神様の反感を買う出来事を起こしてしまいました。全てに絶望した彼女は自分に賛同する天使を集め、怒りに任せて悪の道へと進みました。その後、堕天使の首領となり我々に対し戦いを挑みましたが、神様により天界から堕とされました」
「暫くは平和でした。しかし、50年程前、彼女がまた舞い戻って来たのです。以前とは格段に違う力に我々は成す術がありませんでした。そこで神様は自らの身を利用して堕天使たちを封印することにしたのです」
「その時、神様は予言を残していきました。それは神様の後継者に関することです。神様はこう言いました。『やがて我おも凌駕する程の統率者が現れるであろう。名は木下優也。彼は絶対的な正義を持つであろう。生まれるのはまだ先だ。彼がここに来るまで、ミシェルを我の代わりとする』と」
「そして年月が過ぎ、あなたが精神的に完全な自立を達成した今日、夢を利用してあなたに接触しました」
(精神の自立...?そんなことした覚えは無いが...)
「精神とは肉体と違い人間にとって非常に分かりにくいものです。精神は常に成長しており、個人差が大きくあります。精神の自立とはあなたの思考や感情等の揺らぎが安定の域に達したことを意味します。要するに大人になったと言うことです」
「なるほど...」
突然解説し始めたことに驚きつつも納得した。
(もしかして俺の考えてることってミシェルに読まれているんじゃ...)
「もちろんですよ?」
こちらを向き笑顔で答えるミシェルに恐怖を覚えた。
「さて、到着しました。あそこがあなたが活動を置く拠点となります」
立ち止まった彼女が指差した方向にはとても立派な建物があった。
「ここで生活するってことか?」
「いえ、プライベートに関しては自由です。ですが、この建物には下界に関することや下界の魂などの様々な情報が使いの天使より転送されますので、神様としての活動はここで行うことを推奨します」
「凄いな...でも何か想像と違う...」
「それでは、中をご案内しますね」
ミシェルがそう言い、扉の前に立つと勝手に扉が開いた。
(天国にも自動ドアがあるんだ)
「では、入りましょうか」
こちらを向き、ミシェルはそう言った。
どうも、前原涼です。
今回は前回に比べ文字が多く、読みにくかったかもしれません。
皆様に物語の内容がより分かりやすく伝わるよう様々な工夫をしてまいります。
次回もよろしくお願いします。