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第9話 まどろむふわふわ
わからない
何かを忘れている気がするけど、それは何だったか思い出せない。白い靄がかかっているような、重い霧を押し返そうとしても押せないどころか押し返される。
自分が何だったのか。
自分は私だった。
私はひとだった?
それ以外は凄く曖昧だった。
頭の中で考えてもふわふわとしてまとまらない。
ふわふわしている。
そう、ふわふわと。
目を開けると目の前は白くて暖かくてふわふわしていた。
触ってみるとそれは糸が幾つも絡まっていた。
自分の手も見える。
「小さい」
にぎにぎとしてみたり目の前のふわふわをつかんでみたり。
なんだかわからないけど、楽しくて眠い。
「んふふ」
私のまぶたは落ちて、私はまどろみに沈む。
まさか自分が赤ん坊の姿を飛び越して歩ける姿で、繭から生まれるなんて思わないし目の前に誰かがいるなんて思わない。
私はこの時、自分のことがわかっていなかった。




