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8-1 ブルーマンデー

お久しぶりです。8章は恐怖的ななにかです。



「あぁ・・・行きたくねぇ・・・今すぐ家に帰って寝ようかな」

「ま、まぁ、月曜日だから仕方ないけどね? それに行かなかったらもっと面倒するじゃん・・・」


うだうだと愚痴をこぼし続けるミノルを、ゼフィーが宥める。今はゼフィーの〈限定天装(リミテッドヘヴン)〉で飛行中だ。昨夜飛んできた怪鳥の手紙には、こう書かれていた。


『招集 翌日正午より、定例報告会を開催する。新規加入者であるユート ヒイラギも連れ、集合しろ』


ミノルによると、邪教徒の、所謂《教祖様》からの手紙らしい。


宛名に書かれていたのはナツメ、ミノル、ゼフィー、ユートの四人だけだったが、一応シューミルもついてきている。


「全く、他人に用があるのならそちらから出向くのが道理というものですわ。下らない用事なら即刻帰らせていただきましょう」


ナツメも機嫌が悪い。黒のドレスを風になびかせながら、何やら文句を言っている。今にも引き返そうとする二人をずっと宥めているゼフィーは思ったより苦労人なのかもしれない。


「はぁ、とてもとても残念なことに、見えて参りましたわ」


深くため息をつきながら高度を下げる。見えるのは大きな城だった。いや、要塞と言うべきか。黒っぽいそれは、城と呼ぶに相応しいサイズであったが、中世の城のような趣は無く、機能性に富んだ実用的な建築に見える。


地面に降り立つと同時に、誰が明けたわけでもなく目の前の荘厳な鉄扉が滑らかに開いた。五人は戸の開く通りに奥に進んでゆく。


「相変わらずバカみてーな作りだな全く・・・」


ミノルはこの要塞の主に捕捉されているであろうことがわかっていてもなお、物怖じしないようだ。ここには度々来ることになるとは言っていたが、よほど好かないのだろう。


そうして案内されたのは食堂のような、白い布がかけられた大きな長机が置かれた、広い部屋だった。


今までは戸をくぐると同時にどこかの戸が開いていたが、椅子が五つ引かれてからは、何も変わりがない。ここで待て、ということだろう。


手前からナツメとミノル、ユートとゼフィーが向かい合うように座り、その隣にシューミルが座る。


そして―――――三十分ほど待たされた。壁に掛けられた大きな鷲の絵画を眺めていたユートは暇ではなかったが、二人は違うようだった。


「忘れてんじゃねぇのか・・・?」

「人を呼びつけておいて茶も出せないなんて、一体どうなっていますの?」

「あー、お茶なら持ってますよ」


身体収納(ストレージ)〉で持っていた水筒を出してみたが、そういうことではないらしい。兎に角、二人のイライラが最高潮に達しようとした時、


「長らくお待たせいたしました。ヴィアメル様がお呼びでございます」


突如、どこからともなく現れたのは、白髪の老人。執事のような格好をしている。


「テメ――――」


その言葉が続くことはなかった。執事の姿が忽然と消えてしまったのだ。


否、移動したのはユート達らしい。長机を除いた全ての物が変わって、部屋の境目も曖昧な、宇宙のような青い空間に、机だけが浮いている。


「っておわっ!?」


いつの間にか、残っていた席に、ずらりと黒いローブの人間が座っていた。フードを深くかぶっているため性別すらもわからないが、全員が俯いてぴたりとも動かない辺り、非人間じみていた。


「それでは、今回の連絡を開始するとしよう」


上座に座った男が立ち上がる。切れ長の吊り上がった三白眼、綺麗な銀色の髪、長身痩躯のこの男が、ナツメやミノルの目の敵なのだと、わざわざ聞くまでも無く分かった。


「今回、新たに加入者が現れた。オレやそこの牙むき出しの犬共と同じく、転生者だ。名はユート ヒイラギという。それでは、挨拶を」

「えっ!?」


突然の無茶ぶりに慌てる。


「あっ、えーっと、転移者、ユート ヒイラギです。よろしくお願いします」


なんてことのない、むしろ下手くそな挨拶。それでも、黒いローブの信者たちは立ち上がって拍手を始め、しばらくして深々と一礼してから椅子に座りなおした。


「それでは各部門の報告を」


長机の端の方から順に、ローブの信者たちが報告を始める。どうやら地方ごとに分かれて布教活動を行っていたようだ。時々、「処刑」「捕縛」などの単語が聞こえてきてぞっとするが。


「ふむ・・・・今回の活動は上出来だ。これを維持できるように。それでは解散」


信者たちは元々そこにいなかったかのように消えてしまっていた。この空間といい、《教祖様》が作り出したものなのだろうか。


「ユート君」


《教祖様》に呼ばれる。その声音は、報告会の時のそれとは違い、優しいものだった。


「はい、なんでしょう」先生に呼ばれたときみたいで、つい敬語になる。


「私はヴィアメル=デイトナ、君より一つ前に転移した者だ。教団《極紅の真神教》の指導者をしている。神託があってから君を救うべく彼らを派遣したが、無事でいてくれてよかったよ。今後もよろしく」


手を差し出される。ユートが握手を返そうと、手に触れかけたその時、


ゾクリ、と背筋に冷たいものが走った。


これは・・・〈鬼神の魔眼〉の副作用と同じだ。以前鏡に向かって自分を対象に発動したことがあるのでわかる。


まさか〈色眼鏡〉じゃあるまいし・・・・いずれにせよ、何らかのスキルを発動されたのだと判断するべきだろう。


そう考えてみると、知らぬ間にヴィアメルさんを信用しかけていたことを気づかされた。


ナツメたちも嫌っているのには理由があるはずだ。油断しないほうがいいだろう。


とりあえず、〈鬼神の魔眼〉。お返しだ。


―――――――――――ステータスが表示され、ユートは目を疑った。






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