7-12 鳥猫の仲
7章はこれで終わりです。
ご主人様の部屋に戻って五分と経たないうちに、何かが破裂するような音が聞こえました。クラッカーなんて目じゃないくらいの大きさの音が、何度も何度も連続して響いています。
音の方向性からして家から、外に対しての音のようです。家で何かが起きたわけじゃないのは分かりました、それでは何があったのだろうかと心配になります。
私は猫系の獣人なので、そのトレードマークとも言える猫耳は、普通の人間よりたくさん音を集めることができます。そのせいか大きな音や、聞いたことのない音などには恐怖を抱きやすいのが問題ですが。
一階に一度降りるべきでしょうか、それともここで待機するべきでしょうか・・・夏芽さんたちがご主人様に危険が及ぶようなことをするわけないのは重々承知ですが、心配です。けど、私が行ってもいざというときは足手まといになるだけだし・・・
部屋をうろうろしながら耳を澄ます。相変わらず音は続いていた。
その間もずっと、村で捕まってしまった時のことや、国から逃げ出そうとした時のことを思い出していた。
私はいつも、ご主人様に助けられています。
『仲間だ』なんて言ってくださったときから。いいえ、最初に会ったあの時から、私はずっとご主人様に救われてきました。
そうして大事な時は、いつもご主人様に守られ、私は指をくわえてみているだけです。
ステータス、スキル、魔法・・・・そんな幾つもの強さの指標も、到底及びませんし、何より、ご主人様は私よりも、心が強いのだと思います。
諦める、そんな選択をしないのだと思います。
私は、ご主人様の為だけに、強くなりたい・・・・・
突如、外の方からカァと大きなカラスの鳴き声がしました。半分自己嫌悪で作られた自分だけの世界にいた私は飛び上がりそうになりました。油断はいけませんね。
慌てて窓を開けて確認すると、黒い鳥と夏芽さんの魔法が見えました。色とりどりの魔法は段々と近づいてくる鳥に向かっているようです。
あの鳥はただの動物ではなく、魔物のようです。シューミルは直感でそう感知していた。獣人特有の性質である魔力を感じる能力が高濃度の魔力を察知していたのだ。
それはぐんぐんと近づいてきて・・・思っていたよりかなり大きいようです。夏芽さんの魔法をものともせずこっちに向かってきます。一瞬だけ、その鳥と目が合ったような気がした。
私にはなぜかその時、その鳥が、一瞬だけ驚いて、その後すぐに笑ったような気がしました。って、それどころじゃない。このままで大丈夫なのだろうか。
幾筋もの魔法はあの大きな鳥を狙っているようですが、全く効いているようには見えません。時々よけているようですけど、わざと遊びで避けているといった余裕を感じます。
そして、それはついに家の真上にきて時計回りに旋回し始め、何度も大きく鳴きました。
仲間を呼んでいるのだろうかと思いましたが、どうやら違うようです。一向に何かが現れる気配はありません。
それからしばらくして、また元の方向へ飛び去って行きました。一体何だったのでしょうか。
そのまま来た方向を眺めていると、ゼフィーさんが家から出てきて、何か落ちていた巻物のようなものを拾って戻りました。あの鳥はあれを運ぶために来たのでしょうか。賢いですね。
私は妹たちと小鳥を思い出しました。あの子は手紙を運んでくれるほど賢くはなってくれませんでしたけど、チチチ、チチチ、ととてもかわいく鳴いてくれました。歌がとても好きな子だったようです。
あの大きな鳥とも、いつかもう一度会うことがあったら、仲良くなれるかな・・・?
シューミルはぼんやりとそう思いながら、紅い空を眺めた。
シューミルがあの鳥に会うのは、そう遠いことではない。




