1-6 出発
「みんな、おはようっさね! 今日は五人になって最初の狩り、初狩りっさね!」
早朝。ファムが号令をかける。今日は、ユートがこの世界に転移してから四日目。昨日は一日、自己紹介やコンビネーションの確認に費やしてしまったので、魔物と戦うことになるのは二度目になる。
ファムは朝型なのか、元気そうにして、自慢の炎魔法の基盤となる杖をぶんぶんと振り回している。黒魔導士然とした露出度高めの格好とスレンダーな肢体、特徴的な赤髪が、朝焼けにあてられて映えている。
「はい、頑張りましょーです」
対照的に、まだ眠そうなアカリ。ファムのとはまた違った、神聖な雰囲気の漂う杖を、何度も取り落としそうになっている。ボブカットに整えられた栗色色の髪、白のだぼっとした服、イメージ通り、得意なのは回復や補助系の魔法だ。本人によると、運動が苦手だったので魔法をやってみたらぱーって出来るようになった、らしい。昨日魔法を少し教えてもらってみたが、あーとかこーとかばかりでさっぱりだった。
「うおおおおおちょっと楽しくなってきたっスよ!」
自分の背丈くらいの槍を振り回している長身の男。会って二日目だというのに、声とノリで解る。ファスターだ。得意の槍術で後ろから的確に敵を狙う正確さと集中力はコンビネーションの確認のときに解ったが、なかなかのものだ。
「よし、それじゃあ時間になったことだし、出発っスね」
「そうっさね! 腕がなるっさね!」
「え? リ、リーダーがまだ来てないです!」
「「「「あっ!!」」」」
初狩りの最初の仕事は、宿で「出発だろうよ・・・」と寝言を言っていたクランを叩き起こすことからだった。
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「それじゃあいつもの通り、今から今回の依頼の内容確認だろうよ」
クランが、馬車を操りながら言う。
「はい、それでは説明します。ユートさんも質問があったらどんどん訊いていいのです」
「うん。遠出するのは初めてだから、気を引き締めて聞くよ」
「今回の依頼はDランクのもので、王都の近隣にあるウッカ村の近くの魔狼の討伐です。この季節に、満月が近づくと魔狼は活性化し、繁殖をするため一か所に集まります。そのとき、被害が出るのでそれを防ぐための村の防衛、討伐で数を減らすことが目標です。明日の夜が満月の日なので、今日向こうにたどり着いて演習、明日が本番、という予定です」
アカリが依頼書を説明も交えて読み上げる。
魔狼は、会ったことは無いものの、クランたちによると大した敵ではないらしい。素早いこと、索的能力に長けることを除けば、力も体力も無いので、一対一でも余裕、とのことだ。
「それじゃあコンビネーションについてだけど、それは昨日確認した通りっさね。まずあたしが炎魔法で数を減らして、クランとユートが前、ファスターが中段から槍で突いて、怪我をしたらすぐにアカリが回復、これで完璧っさね」
ファムが計画について説明する。
「ユート、なんか質問とか無いっスか?」
ファスターが訊いてくる。
「じゃあえっと、魔狼と戦うところはどこにする? 気づいたら囲まれてるとかそうなると厄介そうなんだけど」
「それだったら、奴らは森にいるから、森に少し入って引き付けて、すぐ戻って近くの平原で戦うっス。それに・・・・奴らは一匹狼気取りだからそんなにチームプレーしないっス」
「えっ? 狼っていうから結構草むらに隠れてて気づくころには囲まれているっていうやつかと」
「普通の狼はそうですけど、魔狼は狼より少し強い分、群れない習性があるんです。中には獲物を狙って争ったりするものも居るみたいで」
「っていうかアイツらって沢山集まってしまう目を逸らしながら逃げたりするっさね」
何その一匹狼くずれのぼっち。まあ倒しやすいならいいけど。
「うん、ありがとう。俺はもういいかな」
「いよっし!! それじゃあみんなで、頑張るだろうよ!!!」
「「「「おーー!!」」」」
クランの掛け声で、ユート達は出発した。




