7-5 みんなの平日(夏芽さん編)
「いつもは大抵料理をしているわね。もちろん向こうの材料で作ることが多いけれど、たまにはこっちの材料も使ってみたりしているわ」
創作料理もするらしい。ちなみに転生する前から料理は出来たとか。
「猫耳ちゃんは料理をしたことはあるのかしら?」
「いえ、少し習っただけで殆ど知りません」
「それだったら教えてあげようか? こっちの料理をさ」
「いいんですか? 是非お願いします!」
「ふふ、ゼフィーも稔も料理はさっぱりだったから、腕がなるわね」
二人で勝手に盛り上がってしまっている。シューミルが打ち解けてくれるのは嬉しいけど、なんというか少しアウェーになってしまった。
「あなたは料理はどうなのかしら?」
「うっ・・・・」
ひたすらに記憶を走査し、料理に関連するものを引っ張り起こす。何か、何かなかったか・・・・・
「クッキー・・・?」
選ばれたのは、小学生の家庭科の授業で焼いたクッキーだった。これならちゃんと記憶も残ってる。材料を混ぜたり捏ねたり焼いたりするだけだ。
「うん、じゃ未経験ね。基礎から説明しながらやるから、しっかり聞いておくこと」
そ、そうですか。クッキーなぞ料理に値しないですか・・・・
それから、しばらく夏芽さんに料理のレクチャー基本編をしてもらった。
シューミルは少し習っただけと言っていたが、リンゴの皮むきが一度も失敗せずにできる程度の熟練度だったので、あとは知識面を補うだけで十分と言われていた。
よくよく考えるとシューミルは短剣スキルを持っていたので、それが影響したのかもしれない。と多少僻んでみたが、結局どうあがいてもその差が埋まらないのは明確だった。
今は半ばいじけつつ今日の朝食分の皿を洗っている。シューミルは味噌汁を作るようで、色々と習っているようだ。
ほどなくして、嬉しそうな声が聞こえてくる。シューミルはいつも自分は出来ないことが多いと言うが、何だかんだ呑み込みはかなり早いほうだと思う。
見れば、夏芽さんも楽しそうに教えている。こういう、ザ・平和! みたいな空気は、きっと人の心を癒すのだろう。
「―――――様、ご主人様、起きてください」
「・・・・・・ん?」
はっ。いつの間にかうたた寝してしまっていた。そろそろ時計の短針が一周するころだった。
「ん、シューミル、どうした?」
「お味噌汁というものを作ってみました!食べてみてください!!」
お椀に入った味噌汁を渡される。この世界には見ていた限り味噌は無かったので、味噌汁を飲むのは二か月弱ぶりだ。
「・・・うん、うまいな」
「本当ですか!?」
具のカボチャが若干煮崩れしかけていたが、甘みと塩味がちょうどいい。かなりおいしかった。
「うん。おいしいよ。一人で作ったの?」
「いえ、夏芽姉さまが教えてくれました!」
「私は手順を教えただけよ?」
「へー、すごいじゃん」
「ありがとうございます。えへへ・・・・」
尻尾をぴこぴこして照れている。こんな表情をしているのはお使いの時以来な気がした。
「それじゃあまだお昼ご飯の準備が残ってるから、続きをしましょうか。シューミルちゃん、先に行ってお味噌汁の鍋を移しといてくれる?」
「はい!」
駆け足気味でまたキッチンへ。とても楽しそうだった。
「可愛い妹が出来ちゃった」
「・・・・なんだか勘違いを招く言い方ですね。夏芽姉さまって呼ばせるんですか?」
「一人っ子だったから、ずっと妹が居たらな、って思ってたんです。シューミルちゃんは長女だったようですけどね」
「へぇ、僕も夏芽姉さんって呼びましょうか?」
「あ、弟はいいわ」
「あっはい」
キッチンに戻るとき、いいでしょう? と付け加えたニュアンスは、良いか確認を取るというより、ただ自慢しているようだった。
二人にはぜひ仲良くなってほしいものだ。ここの女組(ゼフィー除く)の二人目として、楽しくやっていってほしい。若干発想が父親じみてきたな。
・・・・ただ問題は、自分の仕事を見つけるつもりで来たのにアウェーどころか完全に部外者になってしまったということだ。本末転倒どころじゃない。
明日はシューミルを夏芽さんの所に行かせて、自分は稔さんの所に行こうと思った。
シューミルちゃん、なんだかんだ何でもできるかもしれません(気づいたら有能に・・・)




