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異世界転移したけどチートがなんか気持ち悪い  作者: Mei2
7章 息継ぎと希望
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7-4 猫じゃらし





「ただいまー!」


昨日と同じように、ゼフィーがとてとてと居間のほうへ走っていく。手を洗いなさいと母のように注意する夏芽さんの口調は、元通りになっていた。


「あなたたちも、手を洗ったら手伝ってくれるかしら?」

「ええ。構いませんけど。何ですか?」

「魔物が追って来ていないか、監視していて欲しいの」


ユート達はここに戻ってくる際、またゼフィーの【限定天装(リミテッドヘヴン)】で飛んできたわけだが、そこで魔力を感知して寄ってきたらしい魔物を何体か見つけた。


大きな亀のような魔物、ピンク色のゴリラなど、よくわからないが強そうだった。実際強いらしい。


「方向的には・・・ちょうどあなたたちの部屋から見えると思うから、窓から眺めておけば十分よ。何か来るか、私が呼んだら降りてきてちょうだい」

「はい。わかりました」


自室の棚に荷物を置く。と言っても殆どは身体収納(ストレージ)にしまっているのだが。なりふり構わず能力を使用できるのは便利だ。そもそも隠さなくてもいいようなスキルだともっといいんだけどね!


若干やっかみ状態で窓の前に椅子を持ってきて、腰掛ける。


「ご一緒します」


シューミルも隣に来て座った。二人で赤色の外を眺める。


五分ほど、何も考えないまま時間が経過した。少し窓から目を離すと、辺りが緑色に見えた。


シューミルはまだ窓のほうを見ていた。自分だけサボっているような気がして、慌てて窓に視線を戻す。墓参りや神社とかで目を開けるタイミングをうかがうアレだ。


そこからまた五分くらいが経過した。勿論魔物は来ない。ユートは今日の夕飯のことを考えながら時間をつぶしていた。シューミルの方も眠くなってきたみたいで、時々あくびをしていた。


「城の入り口に門番とかいるけど、あの人たちはよく飽きないな」


素直な感想を漏らす。まぁ、誰かが来るだけやることや見るものはあるのだろうが・・・シューミルも同感のようで、頷いていた。


退屈凌ぎに、稔さんに作ってもらったものを身体収納(ストレージ)で取り出す。


茎の上に太い毛むくじゃらがついたそれを、シューミルの前で揺らす。


そう、猫じゃらしである。猫の習性がどのくらい残るのかはわからないが、魚は好きなようだしどうだろうかと思ったのである。


「・・・・・?」


しかし、シューミルは特に反応しない。なんですか? と言いたげにこっちを見ている。


「あーすまん、忘れてくれ」


身体収納(ストレージ)で再びしまう。見事に外れだった。


ただ、まだ次弾ははある。これで・・・・・


「おーい、そろそろもういいぞー」


階下から稔さんの声が聞こえてくる。実験その2はお預けとなった。


「じゃ、一旦降りようか」

「はい」


階段を下って、居間の戸を開ける。


その瞬間に、待ち構えていたようにパン、パン、パンと小さな爆発音が鳴った。


薄い火薬の臭い、飛びかかってくる安物のカラフルな紙、これは・・・


「そう! 歓迎会だよー!!」


ゼフィーが続けざまにクラッカーを鳴らしながら言う。部屋も色々と飾りつけされていた。


「ごめんなさいね、準備に時間がかかってしまったものだからあんな訳の分からない仕事を押し付けてしまって」

「なるほど、後半必要があるのか分からなくなってきて寝てしまいそうでしたよ・・・あれ、シューミル?」


隣にいたシューミルが居ない。振り返ると、戸の後ろに隠れてこっちをじっと見ていた。クラッカーが怖かったらしい。


自分も幼稚園児くらいの頃にクラッカーを初めて鳴らしたときは怖かったことを思い出しつつ、お祝いの時に使うものだと説明する。ちなみにこれはゼフィーの発案らしい。ひょっとしてさっき稔さんに頼んでいたものってこれだったのか?


「それじゃあ改めて。ようこそ、わが家へ」


微笑む夏芽さんはとても楽しそうで、生き生きとしていた。


それからは夏芽さんの用意してくれたご馳走を食べたり、みんなでトランプで遊んだりした。意外なことに、ルールを覚えたてのはずのシューミルが一番強かった。


余談だが稔さんはお酒が無いことを愚痴っていた。《再生力》があるので酔わないし体にも悪くないのだが、何故か夏芽さんが許さないらしい。


全員が笑顔の中、楽しい時間はあっという間だった。


「楽しいな・・・・・」


漠然とした言葉だが、それが今の本音だった。


真っ暗な部屋の中で、隣で寝るシューミルの温もりを感じながら、一人で考える。


こうやって、みんな優しく接してくれるのだから、自分もそれに報いなければいけないだろう。


明日からは三人と行動を共にしてみて、何か出来ることを探そう。


そう考えながら、ユートは眠りについた。





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