7-2 出オチ
最初にミノルが作ったのは、ネームプレートだった。名前とイラストがついた全員分のそれを手渡された。
「はい。これを各自部屋のドアにつけておいてくれ。ひっくり返したら入るなの合図だからな!」
裏には『Do not disturb』の文字が。便利そうだな。
「・・・? なんて書いてあるんですか?」
「起こすな、って意味だよ」
英語で書いてあるので、シューミルには読めなかったらしい。まあ、その辺りもおいおいどうにかするべきだろう。
「次はゼフィーの番ねー! ミノル・・・・をお願い」
「わかったぜ」
何やら耳打ちし、隠れて生成する。こっそりと受け取り、見せないようランドセルにしまってしまった。
そして次はナツメさんに耳打ちする。
「・・・なるほど、承りましたわ」
ナツメさんが頷き、次はミノルに耳打ちで注文する。
「では、・・・と・・・と・・・・をお願いしますわ」
「了解」
いくつか連続で生成し、同じように自分のポシェットにしまう。一体何を作ったのだろうか?
「次はユートだ。何か欲しいもんはあるか?」
「うーんと・・・・」
向こうにあってこっちにはなくて、欲しいもの・・・・
パッと出てくるようで出てこない。現代は物であふれていると言うが、その弊害なのだろうか。あそこにはあらかた揃っているからかもしれない。
「じゃあ、・・・と・・・・・・と・・・・・でお願いします」
「お? まあ構わんが・・・」
生成してくれたそれらを〈身体収納〉でしまう。セキュリティーとしては大勝利である。まあミノルに話している時点で完全な秘密ではないのだが。
「猫耳の嬢ちゃんは何かあるか? ・・・ってもこっちのことなんてわからないか。まぁご主人様に聞いて欲しいものがあったら言ってみてくれ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
「おう。そんじゃ次は鍛錬と行きますか」
ミノルが軽く準備運動を始める。鍛錬?
「いや、とりあえず見せてなかったスキルの紹介をしておこうと思ってな。いつもは練習試合的なことをしているぞ。よかったら先に見せてくれ。ああ、死の欲動に関してはやらなくていいからな」
なるほど。そう言えば見たことあるのはナツメの〈血の回廊〉、ミノルの〈化学変性〉〈思機通和〉、ゼフィーの〈限定天装〉だけだし、こちらが見せたのも〈身体収納〉だけだ。しっかり情報共有はしておくべきだろう。
「じゃあまず、〈連鎖する四肢〉」
ぐぢゅっ、と音を立てて腕が増える。ユートは何本も腕を出してみたり、出した腕からさらに腕を出してみたりした。相変わらず嫌な音だ。
「んで、〈身体収納〉」
物を出したり取り出したりする。わざわざドロドロに溶ける意味は果たしてあるのか。
「次は、〈鬼神の魔眼〉」
一人一人に発動してステータスを表示する。変な威圧感と悪寒がするという副作用に順に声が上がった。
「で、最後に〈喚命術-暗闇-〉」
別に幽霊を呼ぶだけでよかったのだが、せっかくなので久しぶりにサヘルを召喚。
「久々にワイ参上! っておおっ!? ここ魔界やんけぇ! どないしよ! 魔界の歌でも歌ったろうかいな! まっかいーはーまーってちょっと待ってぇな!?」
「戻れ」
「出オチなんて嫌やぁぁぁぁぁ」
呼んで3秒で後悔した。最大戦力をひけらかそうとしてごめんなさい。
「・・・・・以上」
自分でも訳が判らな過ぎてため息が出る。三人もコメントが浮かばないようだ。
「じゃあ次は俺たちなわけだが・・・ナツメ、練習試合って感じでどうだ?」
「ええ。久々ですし構いませんわよ。ゼフィー、二人の安全は任せましたわ」
「りょーかーい!任せといて!」
二人は笑い合いながら離れて行き・・・って、これちょっと離れすぎじゃないか?
二人とユート達の間は150メートルくらいあいている。これではあまり細かく見えそうにない。
「おおーう。これは大迫力になりそうだねー!」
それって上級魔法クラスの攻撃がやり取りされるってことじゃないか? 上級魔法は基本的に何人もが集まって放つ魔法なので、それだけで一流魔導士数人に匹敵することがわかる。
「あ、ちなみにゼフィーのスキルは守るのと癒すのばっかりだから、基本的には魔法ばっかりだよ! それじゃ、【透障壁】【魔導壁】」
薄緑色の壁が半球状に生成され、ユート達を守る。
かくして、人外と人外の戦いが始まった。
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次回も日曜日です。




