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6-19 チートがなんか気持ち悪かったから就職に失敗した




「それじゃ、今から朝まで寝るのは禁止、ってことで。誰かが寝そうだったら起こしてあげてくださいね?」


夏芽さんがコーヒーを淹れながら確認する。ユートはゼフィーから砂糖を受け取りつつ、最初から気になっていた疑問を口にした。


「この家といい食べ物といい、どういう風に入手しているんですか?」


「ああ、それはだな・・・」


と説明しようとする稔さんの口をふさいで、ゼフィーは悪い顔をしてこっちを見てくる。


「見たい?」


そう耳元で囁き、くっくっと笑う。


ひ、ひょっとして、不味いことを聞いたか・・・?


戦慄が走る。じわじわと這い寄っていた眠気は、一気にどこかに吹き飛ばされていた。


「・・・たくバカバカしい。〈化学変性〉これが答えだ」


稔さんは砂糖のスプーンを手に取り、あっという間にボールペンに変えてしまった。マジックのようだが、これがスキルの効果らしい。


「俺も色々試したんだが、どうやら物を構成する原子を変異させることができるらしい。中世で目指されていた錬金術のようなものだと思ってくれ。ただ、元となる原子数の絶対量は変わらないらしく、それなりに大きなものを作りたいならたくさんの材料が要るってこった」


またボールペンはスプーンに戻り、砂糖瓶に突き刺さった。


「これと思うとおりに機械を作れる〈思機通和〉で、この家の物は大抵作った。ま、俺だけじゃこんな真似は到底出来なかったんだけどな」

「?」


好きなものに変異させる能力、それを組み上げる能力があるのに、どうして物が作れないのだろうか。その答えは、ゼフィーにあるらしい。得意げな表情でこっちを見ている。


「・・・へ「そうなのです!!」・・・そ、そうか」


まだほとんど何も言っていないのだけど。ゼフィーは説明を始めた。


「この能力は作りたい物が何で出来ているかを把握しないと作成出来ないんす。そこで、昔は化学者をやっていたボクの出番が来たわけっす。このボクの天才的で奇跡的な頭脳を以てすれば・・・」

「ま、何度も失敗したけどな」

「ええ。あと口調を統一しなさい」


二人からの同時ツッコミ。ゼフィーはユートに次いで新参者であるせいか、夏芽さんと稔さんの連携には敵わないようで、ま、そんな感じだよ、とどちらの口調だかわからないように言って黙ってしまった。


夏芽さんは料理をしていたし、稔さんは物の作成や修理、ゼフィーは・・・よくわからないけど、とにかく何でも全員に役割があるようだ。それに気づくと同時に、言葉が口を衝いて出た。


「あの、僕にも何かやることってありますか?」


三人は顔を見合わせ、同時に笑い出す。


「ええ、そうね。それじゃあまず、あなたの力とか、得意なことを教えてくれるかしら?」


ユートはギルドカードを見せながら、自分のステータスや、スキルなどについて事細かに説明した。


「・・・・うーん」

「・・・・あー」

「・・・・あははー」


先ほどまで三者三様の反応をしていた夏芽さん達だが、説明を終えた後も全員困ったようにしている。


そして口を揃え、


「変」


とだけ言ったのだった。


「《女神の悪戯》と言うくらいだからこんな変なものなのかなーって若干諦めていたんですが、みなさんはどうなんですか・・・?」

「う、うん。そうね。確かに情報の共有は大事だわ。わ、私のギルドカードよ」


夏芽さんが棚から取り出したギルドカードを受け取る。ユートの無骨な冒険者ギルドカードとは違った、綺麗な薄紫色のカードだった。魔術ギルドのギルドカードらしい。


ナツメ ブラッセス/女性-19歳 

体力 145/145

魔力 350/350

腕力 46

知力 69

敏捷 53

耐性 65

スキル

《棒術Lv43》(腕力強化・回避中上昇・魔力上昇・敏捷上昇・極突)

《悪魔の叡智Lv32》(知力大上昇・魔法威力上昇・魔力回復上昇・魔法察知)

《女神の悪戯Lv28》(血繰術・吸血・傀儡・血の回廊・血染めの月・悪魔返り)

《再生力Lv46》(体力自動大回復・魔力自動大回復・状態異常無効化)


モチーフは悪魔、吸血鬼と言ったところだろうか。強化系のスキル、上昇系の常時発動スキルも揃っていて、強そうだ。


そして何より、圧倒的な統一感があるというか、イメージがしやすいというか・・・・実力では勿論、それ以外の所でも負けた気がする。


「じゃあ次は俺のだ。分からないところがあったら聞いてくれ」


稔さんから鍛冶ギルドのカードを受け取る。冒険者ギルドのものよりもっと不愛想だが、これはこれで味を感じた。


ミノル クロウリー/14歳

体力 172/172

魔力 180/180

腕力 61

知力 58

敏捷 60

耐性 60

スキル

《拳術Lv35》(腕力大強化・回避大上昇)

《戦神の豪咆Lv28》(筋力大上昇・魔法威力上昇・敏捷上昇・地系魔法強化)

《女神の悪戯Lv23》(未来予測・不死鳥・炎化・化学変性・炎の脈動・魂燃・思機通和)

《再生力Lv21》(体力自動中回復・魔力自動中回復・状態異常回復)


未来予測に不死鳥、ねぇ・・・・・なんだか自殺願望が湧いてきた。


「トドメはゼフィーのだよ!!」


白い陶器のようなギルドカード。神官ギルドのものらしい。頼むからトドメとか言わないでくれ。


ゼフィー リーヴェスト/12歳

体力 139/139

魔力 462/462

腕力 42

知力 48

敏捷 56

耐性 75

スキル

《弓術Lv21》(腕力小強化・命中大上昇・魔力中上昇)

《聖者の微笑Lv25》(知力大上昇・治癒系魔法大強化・魔力回復上昇・遅効回復)

《女神の悪戯Lv20》(限定天装・生命力活性・反魂・降天・宣告・生命転移)

《再生力Lv20》(体力自動中回復・魔力自動中回復・状態異常無効化)


元男という話がオチのように変なスキルを運ぶだろうという希望的観測は何の意味も無かったようで、ユートを助けたのは天使のような姿をしたゼフィーであったという事実が、そしてその時に多少なりとも可愛いと感じた記憶が、ユートの胸を押しつぶす。


「あぁぁぁぁ・・・・・・」


ユートの悲痛なうめき声も、自分だけ腕が増えたり体の中に物をしまったりするスキルをもっとカッコイイものに書き換えることはない。


「その・・・まあ、なんだ。頑張れ。窓拭きとか床拭きとか」


稔さんから嬉しくないフォローを受けつつ、当面は「やることを探しつつ、たまに窓や床を拭く係」というなんとも言い難い係に任命されてしまったのだ。





これで激動かつ最長の6章は終了です。ご読了ありがとうございました。

もしよければ、評価・感想・下のランキングタグのポチッ☆などを宜しくお願い致します。

次章は木曜日から・・・と言いたいところですが、少し予定が込んでしまっているので、多分大丈夫とは思いますが、ひょっとすると来週の日曜日からの開始になる可能性がございます。


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