6-15 自己紹介
連日投稿二日目です。明後日もやります。
「お帰りなさい。遅かったのね」
居間に戻ると、ナツメが片手をあげて出迎えてくれる。
「ああ。ゆっくりさっき話せって言われたからな」
「そうね。それで、納得してもらえたのかしら?」
「とりあえずは。元々変な人扱いだったしな」
ナツメがくっくっと肩を揺らす。長い深緑の髪がつられて揺れた。
「さて、と。そろそろ始めましょうか。猫耳ちゃんもよく聞いてね?」
「猫耳ちゃんじゃなくてシューミルです」
ひとしきり笑った後、真剣な表情に戻る。シューミルは初対面が脅迫紛いの対応だったせいか、多少苦手意識があるようだ。
「私は上城夏芽。この世界ではナツメ ブラッセスという貴族だったわ。そこの二人と同じく、元日本人よ。過去に何があったかはおいおい話すとして、私は死んで、こっちの世界に転生することになったわ。転生してから二十年弱、つまりこの体はもう少しで二十歳を迎えるということね。この中では一番年上かしら? まあともかく、よろしくね」
向こうで死んだという点では同じでも、この人は転移ではなく転生しているのか。あとの二人も幼いようだし、転生をしているのだろう。
「じゃあ次は順序的に俺かな。俺は遠野稔。今はミノル クロウリーって名前と一緒に十二歳のガキやってるが、れっきとしたおっさんだ。つまり俺が一番年上だからな。よく覚えておけよ。昔は機械修理業と、裏のほうでコソコソ武器商人をやってたもんで機械には強くてな。この家にある機械類は大抵俺が設計してるから、作ってほしい物があったら言ってくれよ」
なるほど、電化製品まで置いてある理由はそういうことか。にしても武器商人って、本当か・・・?
「名刺代わりってわけじゃねえが・・・要るか?」
棚の方へ向かい、何やら布にくるんだ重たいものを取って来て手渡してくる。布を外してみると、そこには黒いリボルバー式の拳銃があった。
「え、これ・・・」
まだ疑うかい? とでも言いたげな目でこっちを見てくる。
ユートは別に銃に詳しいわけではないのでこれを見たからと言って何かがわかるというわけでもないのだが、この世界に来てから拳銃やそれに似たものは見たことが無いし、デザインもテレビなどで一般的に見るソレなので、この中の誰かが作ったということは間違いないだろうとわかる。
「ま、扱ったことねぇ素人が弄ってもしゃあねえわな。今度暇な時にでも教えてやっから、それまでお預けだ」
ミノル・・・もとい遠野さんはそれを手早くしまい、また元の棚にもどしてしまった。
「じゃあ次は、ゼフィーの番ね」
夏芽さんが、ゼフィーの方を手で示す。ここで手のひらを向けるあたり、お嬢様的振る舞いが身に染みついているのか、あるいは元々丁寧な人なのか、接客業でもしていたのか・・・
「えーっとね、じゃあゼフィーも自己紹介しまーす。ゼフィーはね、ゼフィーだよ! よろしく!!」
立ちあがって、ちょこんとお辞儀。また椅子に座った。ニコニコと笑顔をこっちに向け続けている。
「・・・で?」
ユートは思わずそう口に出していた。もっと転生前の名前とか話さないのか?
「あ、えーっとね、ケガを治すのが上手で、天使さんみたいになれるよ! あとプリンが好き!」
心底楽しそうに手をぱたぱたしている。遠野さんはあきれたとばかりに肩をすくめている。
「痛い目見たくなかったら、そろそろ話しましょうか。ゼフィー君?」
夏芽さんが怒気、というか殺意を向けて問い直す。ゼフィーがぎょっとしているあたり、起こったら相当怖いのだろう。
―――――って、ゼフィー、君!?
「仕方ないっすねぇ。僕は宍戸友則、生前はただの科学者っす。27歳の時に実験ミスって死んじゃったら変なとこにいて、魔法アリ獣人アリのファンタジー世界にチート付きで転生させてもらえるっていうトンデモ話提案されたからどうせだし女の子がいいかなーって女の子になりました。最高です。御馳走様っす。以上っす」
・・・・・何と言おうか、想像以上に大変な奴だった。
「あっそれと、普段はこっちだから、よろしくね、お兄ちゃん!」
天真爛漫で可愛いなー、って思っていたころが恥ずかしい・・・・
「ま、俺たちも最初は騙されてたから気にすんなって」と背をさすって稔さんに慰められるのが余計に苦痛だ。
「・・・え? え!?」
一方、シューミルは理解が追い付いていないらしい。ユートはひとまず説明を保留することにした。明らかに混乱するだろうし、これ以上警戒する相手を増やしても仕方が無いと思ったからだ。なにより健全な育成を妨げそうだし。
「じゃあ次は、お願いできるかしら? ユート君」
話を変えようと夏芽さんが紅茶のポットに手をかけた。どうやら夏芽さんは生前状態のゼフィー、つまり友則さんが苦手らしい。
「はい。生前は柊悠斗という名前で、新体操をやっていた17歳の高校生です。みなさんとは違って新たに生まれ変わる転生ではなく、元の体を維持したままの転移でした。それからも色々あって、こうして助けてもらったわけです。・・・ところで、みなさんはなんで僕の名前と居場所を知っていたんですか?」
「教えてもらったからよ。《教祖様》にね」
夏芽さんがそう言う。あとの二人も頷いていた。
「《教祖様》・・・ですか?」
「ええ。邪神教教祖の神託よ。ちなみに私たちも邪神教の幹部、ということになっているわね。ここに住んでいる主な理由でもあるわ」
夏芽さんの言う、《教祖様》は、根っから信仰しているというより皮肉っていると言った方が正しいようだ。何らかの因縁があるのかもしれない。
「おいおい教祖様に会ってもらうことになると思うわ。ま、それは良いとして、ひとまずやらなくちゃいけないことを説明するわね」
「私たちと一緒に、夜更かししましょう?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて、夏芽さんが言った。
ゼフィーちゃん可愛いと思ってしまった方ごめんなさいm(_)mもとよりこうするつもりでしたハイ(確信犯)




