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1-4 便利スキルと言ったな、あれは嘘だ。

早朝。


「少し早起きしすぎたかな・・・・?」


ユートは冒険者ギルドの前にいた。楽しみなことがあると早起きしてしまう体質のせいで、今回もそれに倣って目覚めたのは朝五時頃。それから軽い準備と、こっちに来る前から毎日やっていたストレッチを済ませる。それが終わったころが大体六時前。そして六時過ぎにここまでたどり着いたのだ。


そうして案の定、冒険者ギルドは閉まっている。さて、どうしたものかな。


辺りを見回しても誰もいない。朝食を買おうにもどうしようもないしな。


仕方ないので〈連鎖する四肢(ボディ・チェイン)〉の練習をしておこうと思い、ユートは門番にすぐ戻りますと伝えて城壁の外に出た。昨日採集をした草原まで向かう。


草原は、朝露に濡れていた。しっとりと冷たい空気を吸い込むのが気持ち良い。ここでトレーニングするのを日課にしてもいいかもしれないな。


まずはMPを半分使うまで手足を出したり消したり振り回したりして、その後走り込み、素振り。それを1セットとして、2セットやった。終わるころには結構日が昇っていて、朝の涼しさはもうどこかに行っていた。


そろそろギルドも開いているだろう。戻ってみるのもいいかもしれない。


ふと思いついたので、ギルドカードを確認する。


ユート ヒイラギ/男性-17歳

体力 170/172

魔力 17/20

腕力 48

知力 63

敏捷 72

耐性 40

スキル

《身体術Lv14》(敏捷強化・回避小上昇・体力強化)

《剣術Lv2》(剣威力上昇・剣耐久上昇)

《女神の悪戯Lv1》(鬼神の魔眼・連鎖する四肢)

《再生力Lv1》(体力自動小回復・魔力自動小回復・状態異常回復)


体力が少しと・・・おっ、魔力が大きく伸びてるな。使っていけば伸びやすいってのは本当なようだ。あと剣術のレベルが一つ上がったか。練習の成果が見えるのは嬉しい。


ユートはご機嫌で冒険者ギルドまで向かうのだった。


__________________________________



「おはようございまーす」ユートが冒険者ギルドにたどり着いた時、まだ人は少なかった。眠たげな職員と、冒険者が数人。時間はさっき広場で確認して七時半くらいだったので、大抵の冒険者はねぼすけなのだろう。


今日はユミナさんは受付には居なかった。ほかの職員を探して、依頼の内容を聞く。


出来そうなものの中で、よさそうだと思ったものは三つ。


1、ナオリ草の採集(Eランク)昨日と同じもので、危険性はほぼゼロだが、報酬が安い。その日暮らすためのお金が集まるくらいのものだ。


2、イノシシ狩り(Eランク)狩りといっても、仕掛けてある罠を回収して、捕まっているようならとどめを刺して連れてくるだけのものだ。罠を見れば捕まっていたかどうかは解るので、イノシシを逃がせばばれるし、捕まっていなくても報酬には影響はないとのこと。ただ、罠は魔物がでる場所にもあるので、多少危険。ただ、報酬は採集よりはよい。


3、魔物狩り ただ魔物を狩って素材を集め、買い取ってもらうだけ。どこに行くかによってリスクもリターンも大きく変わる。


3番は主にパーティーを組むことが多いようだが・・・・・見回す限り同じようにボッチでキョロキョロしているような人間は見当たらない。ここは無難に2番にしとくか・・・・?


「はい! ユートくんおはよう! お姉さんが今日はパーティー組んであげてもいいけど、いいよね!?」


肩をがしっと掴まれる。振り向くと、ユミナさんだった。今日は軽鎧を着て、腰に細剣を提げている。


「ええ!? 案内のお仕事はいいんですか?」


ユートがそう言うと、ユミナさんの手が素早く動き―――――――――


次の瞬間には、細剣の切っ先が喉元に。


「私は週の半分は冒険者なのよ? それでも心配?」としたり顔で尋ねてくる。


「い、いえ。頼もしい限りです。はい」


満足したような表情で細剣をおろしてくれた。


「んじゃ! アタシはユートくんと魔物狩り行ってくるからねー!」


周りの羨望と怨嗟の目を存分に受けつつ、ユートはユミナさんに引きずられてギルドを後にするのだった。


______________________________________



「でも、よかったんですかね・・・・?」


王都の門をくぐったところで、ユートが尋ねる。


「ん? ああ、こうやって新入りにしっかりレクチャーするのもアタシの役目だからね。それに、キミは筋がよさそうだ。それに連中に比べて礼儀正しいしね」


淡々と装備の点検をしながら答える。その手つきは熟練者のそれで、思わず見とれてしまった。


さっきので強さはわかったけど、どのくらいの差なんだろう。ふと気になって、鬼神の魔眼を発動させる。


ユミナ ユキカゼ/女性-24歳

体力 160/160

魔力 37/37

腕力 58

知力 51

敏捷 63

耐性 65

スキル

《応援Lv26》(味方腕力上昇・魅了)

《剣舞術Lv28》(敏捷強化・体力強化・魔力剣技・双刺撃)


ステータスも平均的に高くて、スキルのレベルも高い。週の半分は冒険者をやっているという話は本当の話だろう。


「・・・・・ちょっと? 余りそんな目で見ないでよ?新人さんだからって許さないよ?」


突然、ユミナさんが両手で体を隠すようにしながら言う。確かに手慣れているなとは思っていたけど・・・


「だから、そんな目で見ないでってば!」本気で怒られた。柄に添えられた右手は、次は容赦しないぞ、と威嚇の意を示している。


「えっ、今そんな目してましたか?」

「キミ、自覚無いのかい? すっとぼけているようだったらその厭らしい目を抉り取るよ?」


既に細剣は抜かれている。実力でも経験でも勝てる気がしない。問題は心当たりがさっぱりないということだが、謝る以外に道はあるまい。


「すいませんでしたぁっ!」


ユートは華麗に土下座を決め、非礼を詫びる。しばらくして、ユミナさんの溜息。


「・・・・・はぁ。呆れたよ。その様子じゃ無自覚だったけどとりあえず謝っとけって感じかな? ほら、顔上げて」


見透かされていた。ごもっともですといいながら頭を上げる。


「キミ、何か変なスキル持ってるだろ?多分それのせいだと思うんだけど」ユミナさんが納刀しながら聞く。


「昨日他人のステータスについて訊いたりとやかくいったりするのはマナー違反だって言ってましたよね・・・・まあ、ありますけど」


「やっぱりか・・・。それ、色眼鏡ってスキルじゃないわよね?」


「いえ、違います。ってか、色眼鏡ってどんなスキルなんですか?」


「ほんとに田舎から来たのね。スキル名を唱えずに念じるだけで相手の服を透かして見ることができる有名スキルよ」


何その男子中学生の夢を叶える為だけにあるようなスキル。いらないけど欲しいかもしれない。


「いえ、この際言ってしまいますが、鬼神の魔眼ってスキルです。そんなに酷い目つきでしたか?」


ユミナさんは人として生理的に恐怖を感じたわ、と前置きしてから、聞いたことないわね、と言った。


発動条件は色眼鏡と同じで、見えるものは裸ではなくステータスであることを告げる。それを聞いてユミナさんは胸を撫で下ろす。


「って! つまりキミはアタシのステータスを勝手に覗いたってことじゃない!」


ユートはこっぴどく怒られることになったのだった。スキルを使っているときは厭らしい目で見ているように見られるという最低の副作用があることだし、今後は人相手に使うのは本当に追い詰められていざという時まで封印しよう、と決心するのだった。




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