表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/104

6-6 親交戦後半

結局投稿しました。明日はしません。それでは本編どうぞ。





「対する橘クラスも、反撃の魔道具を発動しようとしているぞ! さてこれでどう戦局は動くのか!?」


橘クラスがリングの中心に設置して発動したのは、あちこちに【水流(ヴァッサー】を放ち続ける、小さなスプリンクラーのような魔道具だった。


最初は水弾で攻撃を阻害しているだけに見えたが、橘クラスの狙いはそれだけではなかったらしい。


三分とたたないうちに、足元はぬかるみ、リングの中にはあちこちに水たまりが出来ていた。足元に二人を配役している橘クラスはともかく、桜クラスはかなり歩きづらそうにしている。


さらに、クレイゴーレムも水弾に当たると壊れてしまうし、どうやら水分量が多すぎるとうまく形にならず復活できないようだ。


アズキでも複数の操縦を一人でやりきることは難しく、逃すことで精一杯になったところを仕留められて、すぐに残り三体まで数を減らしてしまった。


「ゴーレムの兵隊が次々と薙ぎ倒されていきます! これは桜クラス絶体絶命のピンチ! 魔道具の相性は最悪、しかし水たまりは増える一方だぞぉ!?」


アズキは悔しそうに歯噛みしながら、残りのクレイゴーレムを操っている。が、それもすぐに橘クラスの機体に周りこまれ、水たまりのほうに追いやられる。


そうしてついに、橘クラスの砲撃にまとめて壊されてしまった。


「ついにゴーレムが全て姿を消した! 残るは将軍あと一人、状況は圧倒的に橘クラスが有利だぁ! この状況をひっくり返す策が桜クラスにはあるのか、それとも為す術もなく敗れてしまうのか!?」


ここぞとばかりに橘クラスは射撃とタックルを組み合わせた複雑な攻撃を仕掛け畳みかける。ここにきて足回りの差が大きく出ているようだ。


「やはり防戦一方だ! あっという間に壁際に追い詰められてしまいました。まるで猫とネズミ、狩る者と狩られる者のようであります!」


壁と水たまりに挟まれて動けない桜クラスの機体に、橘クラスの機体が砲身を向ける。これでとどめ、というつもりらしい。


そして、ウィークポイントめがけた的確な魔力弾が発射される直前、


桜クラスは、盾を構え、体当たりを仕掛けていた。


「おおっとこれは決死のタックル、窮鼠猫を噛むと言いますが、まさにその通りでございます! 一矢報いる、その念で攻撃を仕掛けました!」


橘クラスは慌てて機体を後ろに下げる。ただ、そこには水たまりがあった。


もちろん、足に二人配役している橘クラスの機体にとって、水たまりから抜け出すことは造作ないことだった。


それが普通の、水たまりだったのならば。


突如、水面が高く隆起し、中に潜んでいた三メートル越えの怪物が飛び出す。観客席からも悲鳴が上がった。溶けかけた泥の塊で構成されたそれは、辛うじて人型を保っている。


「この巨大なクレイゴーレムは一体いつ仕込まれたものだったのでしょうか!? まさかこれは、魔道具をわざと一か所に集めておいて、こうやって水を介し一つの人形として纏めたものだというのでしょうか!?」


クレイゴーレムはがっしりと橘クラスの機体の上半身を掴み、押さえつける。虚を突かれて対応が遅れたのか、巨大な泥の塊を壊すだけの力がなかったのか、うまく振りほどけなかった。


そして、無防備になったウィークポイントの中心に、一発、魔力弾が撃ち込まれた。


試合終了を告げる大きなブザー音が鳴り、橘クラスの機体ががっくりとうなだれた。


「しょ、勝者、なんと、桜クラスだぁぁぁぁっっ!!! あの窮地を見事にひっくり返し、逆転勝利をして見せたぞぉぉっ!?」


わっ、と歓声と拍手が会場を包む。それと同時に気が抜けたのか、巨大なクレイゴーレムも形を保てなくなり泥の塊に戻ってしまった。


アズキ達の桜クラスのほうでは、もうすでにクラスメートからの胴上げを受けているが、本人は驚きと疲れでまだ実感がわかないようだった。今度研究室に遊びに行く時におめでとうと言っておこう。


負けた橘クラスのほうも、驚きと悔しさが半分半分くらいのようで、まだぼうっとしている。


「今年の優勝は桜クラス! 大逆転からの勝利、実にいい試合でした! と、いうことでこれで親交戦を終わります! 選手は退場してください。皆さまは熱い拍手を!!」


拍手喝采の中、両チームが一礼をして出ていく。


「お待たせいたしました。親交戦はいかがでしたか?」


抜群のタイミングで、ロイツェフさんが声をかけて来る。この人ごみの中からどう見つけ出したのだろうか? それに最初に会ったときと同じく、話しかけられるまでさっぱり気配に気づかなかった。


「はい。とても面白かったです。今から入学前調査ですか?」

「ええ。やり残したことがなければついてきてください」

「わかりました。シューミルもですか?」

「そうですね。メイド詰所へ向かってください」


ユートはロイツェフさんについて、入学前調査へとむかった。




感想・ブクマ・評価などありがとうございます。

よかったら読了後のランキングタグポチッ☆をお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ