5-6 狂乱の屠殺者 (後編)
設定を事故って二十分ほど遅刻しています。すまんのうm(._.)m
マッドブッチャー戦後半です。それでは本編どうぞ⋂(・ω・)⋂
「グオオオオオオッ!」
猛獣の咆哮とともに打ち出される拳が、地面を抉る。
初撃こそ回避が出来たものの、あれを連発されたら一分と持たないだろう。
目は血走り、こちらの隙を虎視眈々と伺っている。とても言葉が通じるとは思えない。
再び姿が消えたと思うと、背後から手加減無しの殴打。土埃が舞い上がる。
「これ、ちぃっと不味いんちゃうん?」
サヘルが援護に入りながら言う。ちょっと所じゃなく本当に不味いのだが、それは口に出さずとも伝わっていることだ。
攻撃を避ければ避けるほどマッドブッチャーの怒りのボルテージは上がっていくのか、どんどん攻撃は強力に、かつ的確になっていく。
「【風刃】」
素早い攻撃で牽制を行うが、全くと言っていいほど意味を為さない。全てが発動前に見切られているのだ。
もう一回雷鳴を当てれば・・・・いや、無理だろう。もうあの剣は持っていないから今度は回避を選ぶだろうし、そもそも中級魔法なんて発動までにお陀仏だ。
〈狂化〉の解除条件が解らない以上、逃げ回ることが最良の答えとも言えない。
かと言って、傷つけると余計に暴れそうな気がする。何の容赦もなく殺しに来てるしな。
何か、役に立つモノ、役に立つ知識、役に立つスキル・・・・・
―――――ある。不確定要素だが、一つだけ。
マッドブッチャーの動きをじっと見据える。やはり、<狂化>状態だと剣は使わないようだ。
これなら、剣での攻撃は、通らなくも無いかもしれない。
「<連鎖する四肢>ッ! せやぁっ!」
手を使って屋根に手をかけ、もう一度屋根によじ登る。直後、マッドブッチャーの拳が建物の壁に突き刺さり、悲鳴と同時に村人が逃げていく。
建物が倒壊するその頃には、ユートは既に次の屋根に飛び乗っていた。
「行けッ、サヘル!!」
「あいよ!」
隙を見せたマッドブッチャーのどてっ腹に、サヘルが曲刀を滑り込ませる。
しかし、想定通りそれはマッドブッチャーが拳で弾く。
今度は体勢を崩したサヘルを、マッドブッチャーが報復と言わんばかりに殴りつける。
骨に拳が食い込み、メキョッ、と嫌な音を立てた。
「ぐぅっ・・・・これまでや」
サヘルが光片となって消える。
が、それはユートが集中力をかき集めて後ろから飛びかかるのには、十分な時間だった。
勝利の喜びを噛みしめ充分に油断したマッドブッチャーの首筋に、アカリから貰った剣を大根斬りに振りおろす。
「<魔法剣>ッ! 食らえェェェッ!!!」
剣に宿った炎の魔力が、剣を赤熱させる。
効果も未検証で、勝てる確証もない捨て身の一撃。それでもユートには、これを使うべきだという確信のような何かが、あったのだ。
あの時の思考をサポートするように、湧いて出たこの意志。フィーリングはこれを使えと叫んでいた。
マッドブッチャーの肩口に剣がぶつかる。壁を殴った時のような硬い感触が返ってくる。
それを無視して、さらに力と、ありったけの魔力を籠める。
「グ・・・ァアアアッ!!」
手ごたえはあった。直後、返り血が吹き出し、剣に熱されて噎せ返るようなにおいを放つ。
背中にかけてばっさりと切り付け、すぐにバックダッシュで退避。追撃は、来なかった。
「グ・・・・オォ・・・」
斬られた傷口を押さえながら、マッドブッチャーが笑む。
こいつ、まだやる気か・・・?
サヘルもいない完全な一対一で、勝てるわけがない。
と、思ったら、急に大口を開けて笑いだした。
まだスキルが残っていたのかと身構えたが、そうでもないらしい。血が流れるままに、ただ笑っている。
「オマエノ・・・カチダ・・・・ガハハハハハ」
「お・・・おう。そりゃ良かった」
敵意がもうないことがわかり、急に力が抜ける。地面にへたり込んでしまった。
「と、ところで、その傷は大丈夫か?」
傷つけたのは自分だけど、少し心配になる。地面は赤く染まり、まだ血は流れていたからだ。
マッドブッチャーの方はというと、今思い出したかのように傷口を押さえ、
「グオオオオッ!!!」
と、大きく咆哮。傷口が余計開きそうだと思ったが、そうでもないらしい。不思議な光が体を包み込み、すぐに傷がふさがってしまった。
やっぱり、本気で殺し合っていたら、絶対負けてたな・・・と、今更のように実感する。
「タノシカッタゾ・・・マタアオウ」
そう言ってまた大きく笑い、踵を返す。
「・・・ああ。またいつか。今度は戦いたくないけどな」
地響きを鳴らしながら、満足げに帰っていくマッドブッチャーを、見送るのだった。




