1-3 ここからもテンプレ
「ユミナさーん! 採集完了しましたー!」
日も半分沈んだころ、ユートが冒険者ギルドへ戻ると、そこはすでに酒場に早変わり。豪快な笑い声、食事を注文する声があちらこちらから聞こえてくる。もう出来上がっている人間もちらほら居た。
ユミナさんは・・・まだ受付に座っていた。受付時間はあと30分くらいなので、早めに報告を済ませておこう。ユートは人混みを避けながら受付まで移動した。ユミナさんは笑顔で出迎えてくれた。
「ナオリ草の採集、完了いたしました。これです」ユミナさんにかごいっぱいになったナオリ草を渡す。ユミナさんは中身を改めた後、「初めての人はスギテ草と間違えたりするもんだけど、結構目が利くのね。やるじゃない」とほめてくれた。鑑定さまさまだ。
それから報酬を受け取って、宿を探そうと思い、ユミナさんにお勧めの場所を訊いた。「そういうのは現役バリバリの冒険者に聞いた方がいいと思うけど・・・・」と言いつつ、幾つかおすすめしてくれた。
「―――はい。ありがとうございました。また明日来ます」おじぎをして、ユートはその宿に向かおうとした。すぐにユミナさんに引き止められる。
「――――ん? ユート君、こっちで食べてかないの? うちは料理ギルドの人が作ってるから味は保証するよ?」
詳しい話を聞くと、どうやらこの世界の宿は基本的に料理は出さないらしい。冒険者ギルドに登録していれば割引が効くので、基本的にここで食べていくのが一番安上がりでおすすめ、とのことだ。実際、一部の人間を除くと、大体の独身冒険者がそうしているらしい。
「ええ、じゃあそうします」
「そうね! あっ、ちょうどいいとこに。ギルー! ユート君案内したげてー!」ユミナさんが大声を張り上げる。ギルと呼ばれた大男がこっちを向く。体にはいくつもの傷がある、スキンヘッドが似合う筋骨隆々のごつい色黒男だ。
「おうっ、ゆ、ユミナさん、どうもっす。新人案内っすか? オレに任せろってんだ!!」結構軟派な口調で返事する。型無しとはこのことだ。顔が少し赤い辺り、酔っているのか惚れているのか・・・・まあユミナさんも頼み事をするくらいには信用しているようだし、悪い人ではないのだろう。
怖がらせるんじゃないわよ?とか念を押されていたギルさんが戻ってきて、「ギルだ!よろしくな!」と背中を叩いてガハハと笑った。やっぱり普段はそんな世紀末な感じなのな。
ギルさんと隣の席に座り、注文をする。暫くして料理が運ばれてくるころには、ギルさんの周りには結構の人がいた。少し話しているとわかるが、存外にとっつきにくいところのない人で、慕われているのだろう。
挨拶に来たその人たちとも少し話しながら、食事をする。料理はユミナさんの言う通りおいしかったけど、どれもかなり量が多かった。それでも食べきれたのは、偏に冒険者の豪気な雰囲気が性にあったからだろう。
酒を断った時に未成年だと言ったら不思議な顔をされたので、未成年者飲酒禁止法などという概念は無いか、あったとしてもずっと年齢が低いとかもはや形骸化しているとかそういうことだろう。所持金も心もとないし、ギルド入会二日目から起きられなくなるのは避けたいと言って誤魔化した。
中には戦闘のこつを教えてくれる人もいて、非常に助かる。
支えあっているのが目に見えるようで、ユートは少しうれしくなった。早く支える側になりたいものだ。
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ユミナさんの教えてくれた宿に向かう頃には、もう夜中になっていた。夜風が上気した頬に当たって、先程までの興奮をゆっくりと冷ましていく。
何とも言えない快感に浸りながらたどり着いた宿の名は、風之花亭、という名の、少し規模は小さいが、小ぎれいな宿だった。
因みに、ユミナさんも泊まっているのかと聞くと、「私はギルドの職員だから泊まりこみだよ! 今キミ、夜這いしようとか思った? 残念でしたー」と楽しそうに笑っていた。ただ湯上りの姿を見たかっただけなのに・・・と今更言い訳になっていない言い訳をしながら今日の依頼で手に入れたお金でチェックインを済ませると、風呂はなく、お湯を桶に入れたものを別料金で販売しているという旨を告げられた。
部屋には、椅子と机がとベッドと物置がひとつづつ。どれも古かったけど、暖かさと清潔感を両立させた不思議な感じで、遠征に行った時に泊まった旅館とは、また違う感じがする。
買っておいた寝間着に着替え、ベッドに寝転がって、息を吐き出す。想像以上に疲れていたのか、すぐに眠気が襲ってきて、何も考えることもなく寝てしまった。




