5-5 狂乱の屠殺者(前編)
戦闘だけで二部構成ぶち抜いてます。戦闘シーンって書くのに時間かかるんですね。ここだけで数日かけてるはずです。
案の定、初手はマッドブッチャーだ。多くの血を吸ってきたのであろうその大剣を、横薙ぎに払う。
ユートはそれを後ろに躱しながら、スキルを発動する。
「〈喚命術—暗闇—〉サヘルッ!」
途端大きな紫の魔法陣が展開され、骸骨剣士が召喚される。
「よーやくワイの出番かいな。おっ、再戦っちゅうことやな。望むところや!」
縦、突きと続く二、三撃目を捌きながら、サヘルがそう言う。
以前は魔力がごっそり持っていかれてきつかったが、魔力の最大値が上がった分こちらにもまだまだ戦う余裕はある。今の筋力ではガードが不可能な大振りの攻撃をサヘルに捌いてもらって、スキを見て一撃与える作戦だ。
二対一で戦うのは卑怯な気がするが、これも自分のスキル、つまり自分の攻撃の一つなので文句は言わせない。
実際、マッドブッチャーもそのつもりだったのだろう。待ってましたと言わんばかりにサヘルに攻撃を叩き込んでいる。
もちろん、サヘルが前回僅差で負けていることもわかっている。その差に自分の能力が押し勝てるか、そこが勝負所だ。
ただ、これだけでは押し切れそうになくなった時の策も、一応だが考えてあるのだ。
ルール上、連鎖する四肢で出した腕に攻撃を掠らせればそこで試合終了になる。少しどころじゃなく痛いけど、損失自体は特に無い。
え、村人が全員食われるって? 知った事か。・・・・多少心が痛まないでもないけど。
「【射撃】」
攪乱の為に何度か発動し、弾幕を張る。が、マッドブッチャーはそれを俊敏に躱したり、剣で受けたりしている。やはりこれでは決定打には程遠い。
ユートの剣は勿論サヘルの曲刀やマッドブッチャーの大剣ほど大きくないので、攻撃を受けることは愚か、捌くことすらできない。その分小回りが利くから手数で押せると思ったのだが・・・
「グオオオオッ!!」
マッドブッチャーは全て、それらによる攻撃を捌いて見せる。熟練度に圧倒的な差があるのがよくわかる。
剣を自分の腕のように自在に操り、攻撃特化の思考で一撃を狙いに来る。見かけや腕力によらず、こちらの弱点というのもをよく把握しているようだ。
ただ、フェイントがないのは有難い。盗賊の男よりかは直線的で剣筋が読みやすいので、回避は大丈夫だろう。
無論、このまま続けていれば、先に体力が切れるのはこちらの方だ。サヘルに体力や疲労があるのかどうかは知らないが。
魔力も体感で残り半分ほど。いくらかは《再生力》が癒してくれるにせよ、乱発できる量ではない。
短期決戦で決めたいが・・・・・・・・・。
「グオ!」
「うわっ!?」
他のことを考えていたせいか、当たりそうになってしまった。
いや、マッドブッチャーも、こちらの動きを読んでいるのだ。癖や勘を読み取って、最善の攻撃が出来るように行動を変更している。
「それなら・・・〈連鎖する四肢〉ッ!」
増やした腕を屋根にかけて、器用に登る。予測できない動きをしていれば、とりあえずは安泰だろう。
「〈身体収納〉からの・・・・・くらえっ!!」
収納しておいた石を、フェイント代わりに顔面めがけて投げつけ、それに対応しようとして発生するスキを当てにして斬りかかる。
「ォオッ!」
すんでのところで弾かれる。が、意表を突いた動きではあったようだ。
全員が少し距離を置き、膠着状態となる。
「フシギナ・・・・マネヲ・・・・」
そう言うマッドブッチャーの目にも、少し疲れが見える。
案外、押し切れるのか・・・?
「サヘル! 前を支えておいてくれ!」
「何か企んどるんやな、あいよ!」
サヘルが剣をさばいている間に、【射撃】で攻撃する。
そしてその遅めの弾速に目を慣らした後で・・・・一気に魔力を溜める。
「【雷鳴】」
破裂音とともに、光速の雷弾がマッドブッチャー目がけて駆ける。
無論、発動は数秒を要している。弾道は読まれ、すでにマッドブッチャーの剣に阻まれていた。
しかし、それはユートの狙い通りだ。大剣に落ちた雷弾は、大剣を経由して腕に流れる。
「グオオオッ!?」
マッドブッチャーの体が震える。どうやら成功したようだ。
マッドブッチャーと言えど、電気による体の硬直は対応できなかったらしい。武器を取り落としてしまった。
「貰ったでぇ!」
サヘルがそこに、すかさず攻撃。
「やった!」
———と思った刹那、マッドブッチャーの姿が掻き消える。
元々幻影であったかのように消えてしまったマッドブッチャーは、次の瞬間には、ユートの隣にいた。
「グオオオオオオッ!!」
凄まじい気迫で、ユートめがけて拳を打ち出す。
辛うじて避けるが、拳はそのまま地面に突き刺さり、ひび割れを作る。桁違いの威力だ。
—————《狂戦士》スキル、〈狂化〉。
そんな文字を見たかすかな記憶が、ちらりと頭の中をよぎった。
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