5-1 朝起きたら荒縄で縛られて転がってた
5章は、激闘的な何かです。よろしくお願いします。
起床と同時に、ユートは体の痛みを感じた。
筋肉痛とは違う、関節にくる感じの痛みだ。なぜか、目も少しかすんでいる。
「おやおや、もう目を覚ましましたか。なかなか眠らないので困っていたのですが、今度はすぐに起きてしまうのですか。面倒この上ないですよ」
「・・・・・・? どういうことだ・・?」
視界がクリアになると同時に、長老らしき男がこちらをしげしげと眺めているのに気づく。
四肢の痛みの正体は、背中でしっかりと結ばれた縄。腰が痛いのは、変な体勢で硬い板の上にのせられていたからだ。
記憶をたどるが、縄を受けるようなことをした記憶は無いし、そもそもこの男はなかなか眠らなかったと言っていた。
最後に覚えているのは、宴会を催すと言われ、食事を出された時だ。
つまり、何かを盛られた・・・?
だとすれば、なかなか眠らなかったのも、早く起きたのも頷ける。《再生力》が働いたのだろう。
「シューミルは何処だ!?」
「ああ、あの亜人ですか。安心して下さい。まだ向こうの部屋で寝ているでしょうね」
よかった・・・が、危険な状況なのに変わりは無い。
「この村には縄で縛って歓迎する風習でもあるのか?」
「面白いことを言いますね。・・・・そうです、と言っておきましょうか」
「何をする気だ?」
「そうですねぇ・・・・祭り、とでも言っておきましょう。現に私たちはそれを祭りと呼んでいます」
表情を読ませないためか、それとも心底楽しんでいるからなのか、男は笑っている。笑顔のポーカーフェイスほど気味の悪いものは無い。
「こちらの用意が整うまで、そのまましばらくお待ちください。一つアドバイスをしますと、諦めも重要、ですよ。それでは」
そう言い残して、男は部屋を出て行った。
_______________________
「さて、目下はシューミルの救出、馬車の奪還、逃走、が目的か」
〈連鎖する四肢〉で自由に動かせる腕を確保し、〈身体収納〉に収納していた剣を取り出して縄を切ったユートは、部屋を出てシューミルの居場所を探していた。
村人全員が加担しているわけではないのか、この離れの中に人はほとんどいないようだ。
時々聞こえてくる物音や話声を避けつつ、時々窓をのぞき込んでシューミルを探す。
三度目に覗き込んだ部屋に、シューミルはいた。
まだ眠っていた。やはり睡眠薬を飲まされたのだろう。服もそのままだし、ケガをしている様子でもないので、寝ている間に何かをされたという線は薄い。
村人の目的が何かは分からないが、早々に逃げ出した方が良いことには違いない。
その点、大体の状態異常の回復を早めてくれた《再生力》スキルは素直に評価されるべきだろう。
そういえば狂った要素がないのはこのスキルだけだが・・・・・そんなことを考えていると制約が追加されそうなのでそろそろ思考を止めておこう。
縛られたままなのは少し申し訳なかったが、そちらの方が運びやすかったので安全になるまでは縛られたままにしておくことにして、シューミルを担ぐ。
逃げるべきは・・・どこだろう。ユートが逃げ出したことは近いうちに気づかれてしまうだろうし、子供たちとのかくれんぼで分かった通り隠れるのは時間がたつにつれどんどん不利になっていく。全員を動員されるとしたらこの小さな村の中では三十分も持たないだろう。
幾分かの食料は収納してあるので籠城という手もあるが・・・・・それで勝ちに持っていける未来は見えない。
かと言ってここを飛び出して馬車まで強行突破するのは無謀すぎる。
やはり、一旦退こう。紐で自分とシューミルを縛って、近くにあった箱を踏み台にして、ユートは天井へと上った。箱で天井にいることがばれてしまいそうだったので、足先を箱につけた状態で〈身体収納〉を発動し、証拠を隠滅しておいた。
まずはシューミルを起こそう。【水流】を出来るだけ抑えて発動し、シューミルに水をかける。本当は【解毒】を発動したかったのだが、治癒系中級魔法なので諦めた。
「んぅ・・・ん?」
「シューミル、静かに。状況を話すからよく聞いて。痛い所は無い?」
シューミルの縄を解いて、状況説明を開始する。
活動報告でもちょっと話しましたが、PV数や評価の記念ということで、二月一日に短編(現実・恋愛もの)を投稿します。
タイトルは「おもいでと断捨離」です。いつもと同じく九時に投稿するので、ぜひ読んでみてください。




