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4-7二人の旅路




「あっ、出口が見えてきましたよっ!!」


シューミルが、森の終点を指さす。確かに、森はそこで途切れていて、なだらかな平原が覗いていた。


「思ったより早く進んでたみたいだから、今日は昼から近くの村でのんびり過ごせそうだね」


馬車の長旅は体が鈍ることだし、少し体を動かしておくのもいいかもしれない。魔法ばかり鍛えて体力が落ちてしまっては、元も子もない。


「地平線って、初めて見ました・・・」


シューミルが感動している。地平線の先の距離はたったの4,5キロくらいだということは黙っておこう。


ユートも実は地平線を見るのはこれが初めてだったりする。日本にいると4,5キロにおいて何もないということはあまりないのだ。


「ん、シューミルってどこかの戦争奴隷なんだっけ? 元の国、どんな所だったの?」

「えっと、リュートの国の向こうのルーシェル王国の向こうの、ヤラトゥという山の中にある国です。麓にあるトリエ王国に母さんと行った時に、水平線は見ました」


そう言って、遠い目でまた地平線を眺める。思い出させてしまったようで、少し申し訳なくなった。


「そっちの方にも、いつか行きたいと思う?」

「・・・・・・はい。今はトリエ王国の属国になってしまいましたが、行ってみたい・・・です」

「そっか。覚えとくよ」


しんみりとした空気。それを打破するように、向こうから別の馬車がやってくる。


どうやら、かなり急いでいるようだ。馬を使い潰す商人なんて新人にも居ないだろうし、ひょっとして、何かから逃げているのか?


「シューミル、こっちに来ている馬車の後ろを追っているものが見えない?」

「えー・・・・っと、見えないです」


目がいいシューミルですら見えないのだから、もう撒いてしまったか全国手配クラスの大罪人か・・・いずれにせよ関わりたくない相手なのは事実だ。


それは向こうも同じらしく、憔悴した表情のまますれ違い、速度を保ったまま森に突っ込んでいった。


国家間の急使といった様子でもないし、なんだろうな・・・?


「ま、考えても仕方ないか。そろそろ村も見えてくるだろうし、そこで話を聞いてみようか」

「そうですね」


念の為周辺警戒をしつつ、村へと向かうのであった。




_________________________________________





「ようこそいらっしゃいました。ごゆっくりしていって下さい」


村の長らしい人物がそう言って、歓迎してくれた。


規模は前に任務で行ったウッカ村の半分ほど。小さな村だが、小さいならではの密接な関係のせいかやってきたことがあっという間に知れ渡ってしまったようで、三十分後には村の子供たちと遊ぶことになってしまった。


寝る場所も食事も準備してくれるというのだからまあいいだろうと半ば諦め、今はかくれんぼの最中だ。


「はい、お兄さん、見っけた」


建物の陰にいたのだが、見つかってしまった。広場の中心に移動する。


「あら、見つかっちゃったんですか」


シューミルもそこで座っていて、女の子たちと草冠を作っている。こういう遊びは世界共通なようだ。


「私も天井に張り付いていたんですけど、見つかっちゃいました」


なかなかに忍者してるなぁ・・・


「面倒見がいいんだね」

「はい。まだ向こうにいた時は、近所の子たちをまとめるお姉さんだったんですよ?」


へえ。そのくらいの年だと小さい子と幼稚なことをすることに抵抗を示したりすると思っていた。実際ユートにもそんな頃があったので、シューミルは凄いと正直に思う。


「あんまり積極的に話しかけてくれる訳でもないし、反抗期か何かかなー、って勝手に思ってたんだけどね」

「はんこーき? なんですかそれ?」


どうやら、反抗期という概念すらなかったようだ。確かに、小さい子が母親にお母様と言っているのを何度か聞いたし、親子の立場差というか、年功序列が激しいというか、そういう面もあるのだろう。


「私が余り話したりしないのは、礼儀を考えるのが少し苦手だから・・・それに、奴隷が喋りすぎるのはよくありませんし」


細かいことを言えば、時々敬語が変だったり、慌てると失敗を重ねたり、それが無礼につながっていることもあった。


それに、母親が生きていた頃のシューミルを詳しく知っているわけではないが、あれから少し内向的になってしまった面もあると思う。


「うーん・・・シューミルの言う通り、奴隷がやいやい騒いでたら変な感じがしないでもないけど、俺からすればシューミルは・・・なんだろう。ただの主人とただの奴隷じゃなくて、あの時も言った通り、仲間だと思ってるんだ。一緒に旅をする、仲間」


「そう—————ですか」


シューミルは、困ったようにうつむいてしまった。


「だから、もし何かがあっても見捨てたり使い潰したりするつもりは無いし、信頼を置きたいし置かれたい。そのため———って言ったら変だけど、沢山話してシューミルのことを知っておきたい」

「私の・・・・ことをですか」

「うん。変かな?」


シューミルは少し考えた後、顔を上げてくれた。そして、花が咲いたような笑顔で、


「私を救ってくれた時から思っていたんですけど、ご主人様は変ですね」


う・・・・地味に毒舌。ぐふっ。



アイエエエ!?シューミルチャン!?シューミルチャンナンデ!?

シューミルちゃんは身体能力高いけど使い所をあまりわかってない娘です(笑)

次回は、ちょっと不穏な話かもだよ⋂(・ω・)⋂お楽しみに(^^)

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