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4-5 シューミルちゃんのお買い物

特に大して意味の無い閑話的なシューミル視点の話です。

別に伏線張ったりしているわけでもないので、読み飛ばしても構いません

が!! シューミルちゃんはかわいいので読みましょう。



私は今、ご主人様に渡された買い物リストを手に、街を歩いています。


朝出発する前に、ご主人様は「読み書きは完璧にこなせるようになってほしいんだけど、ちょうどいい先生はいないかなぁ」と言っていましたが、良いのでしょうか。


ご主人様はそのようなことをなさらないのかもしれませんが、文字が読めない奴隷に手紙を運ばせて、内容が周りに知られることを防ぐこともあると聞いたことがあります。


でも、この買い物リストは丁寧な字で書かれていて、その物の相場まで書かれています。それほど重要な内容ではないからかもしれませんが、相場まで書いてあって、作るのにとても時間がかかっているものなのはわかります。それだったら自分で行って私に運ばせれば楽なのではないかとも思います。


ご主人様は「一人で行ってたら日が暮れちゃうから、半分ずつ分担しよう」と言っていましたが、私に買い物を任せられるかどうか、調べているのでしょうか?


————そうなると、俄然燃えてきました。いかに素早く、いかに安くて良いものを見極められるか、それが役に立つことの証明になるのかもしれません。


よしっ、と気合を入れてから、私は商業区へと駆け出しました。



_____________________________



「嬢ちゃん、そんなにウチの品物を見つめて、ネズミでもいるのかい?」

「うーん・・・・・・・・これと、これを下さい」

「ははは、これの品質を見たかったのか。品質を大事にするとは、感心な娘だね」

「はい。ありがとうございました」

「うんうん。まいど」


リストの一番最初、携行食料を無事に買えました。商業区についてからまだ数十分しか経っていないので、上出来と言えるでしょう。


この国に来る前、モーガンさんにお使いを頼まれたときの失敗を活かして、なんとかうまくやれているはずです。


お財布もちゃんと持ってるし、物を選ぶときはしっかり何件か回りました。怪しい店は避けていますし、しっかり商品も受け取り忘れていません。


・・・そう考えると私、昔は失敗だらけだったんですね。


少し落ち込みながらも、私は次の項目に目を通します。えっと、私の分の・・・・・・下着・・・ですか。


ご主人様が気を遣ってくださったのでしょうか。下着と書いてある部分は、言い回しを何度も書き直されているようです。ご主人様、シャイなんですね。


確かに私も恥ずかしいですが・・・・・少しうれしいです。何でしょう、照れる、というのでしょうか。満更でもない、というのはこういうことなのかもしれません。


ご主人様の優しさを感じながら、私は服飾通りの方へと向かいます。


さっきよりも、少し小走りで。




_________________________________________________




「ふぅ、これで全部・・・・ですよね」


私は、買ってきた品物とリストを照らし合わせながら、最後の確認を終えます。


「よしっ!!」


ご主人様の言った品物を、日が昇りきる前に買えましたし、書いてあった相場より少し安くできました。ご主人様はもう帰っているでしょうか。あとはこれを持ってお屋敷に帰るだけです。


お屋敷への最短距離を見繕って、角を曲がります。ちょうど、移動式の露店とすれ違いました。


あの露天は・・・・どこかで見覚えがあります。どこでしたっけ?


ふと、歩きながら考える私のお腹がくぅと鳴って、それで思い出しました。


確か、最初にご主人様とここに来たとき、ご主人様がくれた冷たくて甘いお菓子の露店でした。ご主人様はそふとくりーむ?に似ていると言っていました。


甘くて、美味しかったなぁ・・・・・・はっ、いけません。早く戻らないと。


振り返った露店に、値段が書いてあるのが見えます。えーっと・・・私が相場から削った額より少し安いですね。


—————————ああ、見なかったことにしたい。


昼前、お腹がすく時間です。あのお菓子は、とっても美味しかったです。


バ、バレなければ・・・・? いえいえ、これはご主人様のお金です。勝手に使ってしまってはいけないはずです。


けど、それでもご主人様が予定していた額より安くなりますし・・・・


————まさか、甘いものの誘惑がこんなに凶悪なものだとは思いもしませんでした。


振り向いたまま、足が前にも後にも進みません。私の中で、理性と誘惑が大喧嘩を始めています。


ちょ、ちょっとだけ見に行くだけだから・・・


そう言い訳をつけて、露店を追おうとするその瞬間、


「おっ、シューミル? そんなところで突っ立っててどうした?」

「ぴゃあああ!?」


ご主人様に、ポンと肩をたたかれます。変な声を出して飛び上がってしまいました。


「驚かしちゃったか、ごめん。買い物は終わった?」

「はははははいぃ!! 全部買い終えましたっ!!」

「そんなに慌てて、どうしたんだ?」

「い、いえ! なんでも!!」


これです!と買ってきた物を見せて話を逸らそうとします。


「ん、うん・・・別に公衆の面前で下着を見せてくれとは言ってないよ?」

「ひゃぅっ!?・・・・・す、すいません・・・・・・」


今度はまた別の失敗をしていたようで、大きな声を出してしまったせいもあって、人目が集まります。顔が熱いです。


「はいはい。そんなに緊張しなくてもいいさ。じゃ、帰ろうか。あっ、丁度そこにいるし、この前食べたお菓子、また食べる?」


へっ・・・?


ご主人様は、さっきの露店を指さしています。


「見た感じちゃんと買えているようだし、ご褒美だよ。ちょっと買ってくるから、これ持って待ってて」


私に自分で買った分の物資を渡して、すぐにお菓子を二つ持って戻ってきてくれます。


「はい。一つあげる」

「はっ・・・はい」

「ん、どうした? お腹空いてない?なら俺が二つ食べるけど」

「えええっ!?」

「ははは、冗談だって。こぼすなよ?」

「はい!」


買い物は大成功! とは言えませんが、やっぱりこのお菓子は・・・・甘くて、冷たくて、おいしいです。




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