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3-11 命は風邪薬では買えない

今回は後半急展開します。元はニ話あったけど没連発で縮んだんだ・・・



「うむ。これで無事薬が作れそうだな。ありがとう」


モーガンさんにマッドブッチャーから貰った薬草を手渡す。久しぶりに強敵と戦えたことを喜んでいたらしく、沢山くれたので、余った分はリンリンアルさんに十分に注意をした上で渡しておいた。


「ああ。お代を渡していなかったな。いくらだった?」

「それがですね・・・・・」


ユートが事情を話すと、モーガンさんは目を丸くして言った。


「マッドブッチャーって、あのマッドブッチャーか!?」


話を聞くに、どうやらこの辺りの主的な存在だったらしい。討伐に行った冒険者で無傷で帰ってきたものはいないとか。


「いえ・・・別に討伐したわけではないですよ? たまたま居なかったので、そのスキに頂いてきただけです」


モーガンさんはそれを聞いて、深くため息をつく。


「ユート君。君は私の言いたいことを聞き違えているようだね。確かにノーコストで薬草を入手できた点は認めよう。ただ、その為に負ったリスク、それはお金で支払えるものではない。つまり、風邪薬を手に入れるために馬鹿なことをする位なら、諦めて薬を買うべきだったということだ」

「けど、薬は高騰しているようでしたし、その場所を教えてくれた人がマッドブッチャーのことを教えてくれなかったので」


確かに、あそこでマッドブッチャーに言葉が通じていなかったら、命はなかっただろう。ただ、モーガンさんがここに来る途中で、沢山の奴隷を失っているのは事実だ。その光景は今でもはっきりと焼き付いている。その損を考えると、モーガンさんが十分に資金を持っているとは思い難い。ユートはそう思ったのだ。


ただ、その言い訳はモーガンさんの気に召さなかったようで、やれやれ、と呆れられた。


「たかが奴隷の風邪薬に、君の命は惜しすぎる。そのお人好しと騙され体質が私の感じていた不思議な所だったのかもしれないな」


シューミルにたかが、と言う辺りに、異世界の命の軽さを感じる。が、それがここでの常識なのだろう。


「失望しましたか?」


また、尋ねてみる。モーガンさんは、さあね、とはぐらかした。


「ともかく、君はもっと見聞を深め、計算高さを身に着けるべきだ。商人が言っているんだ。間違いのないことさ。今回は今回、もう仕方のないことだ。これは君のリスクに対する補填と、勉強費だと思ってくれ」


お金を手渡される。今度は薬草の相場ぴったりの値段だった。


「私は調合に向かうから、それでは」


モーガンさんは疲れた様子で、自室の方へ戻っていった。




_______________________________________




「見聞を深めろ・・・・・・・・ねぇ」


ユートは本屋に来ていた。図書館のような施設はなかったので、ここで本を買おうと思ったのだ。シューミルの風邪が治るまでは、任務をこなさなくてもいいように思えたからである。モーガンさんに少し腹が立っていたということもあるかもしれない。


候補としては、色々なものに対して知識をつけられる図鑑系、魔法に対する知識が入る魔法書、この世界の常識や実態に触れられる歴史書や伝記などを考えている。


羽箒で埃をはたいていた店主と思しき老婆に、そのような本がないかと聞く。老婆は一つの本棚を指して、向こうの何処かにあるじゃろう、と答えた。


早速指示(さししめ)された本棚を漁る。ユートは余りその手の本を読むほうではなく、専ら漫画専門だったので、少し疲れる。


「どうかえ。見つかったかね?」

「はい。大体は」

「若ぇのに感心なこった。学生かね?」

「えーっと、一応冒険者です」


向こうで学生だったなんて情報は必要ないだろう。というか学校があるんだな。貴族専用とかかな?


老婆はそうかえそうかえ、と嗄れた声で頷き、また何処かに戻っていった。


本の横に書かれた値札を見ながら、本を選別していく。結局選んだのは入門編らしい魔法書2冊と、上下巻に分かれた旅行記のようなものだ。図鑑は高かったし、植物や魔物とジャンルに偏っていたのでその都度〈鬼神の魔眼〉に頼ることにして諦めた。


それを老婆の所に持っていく。老婆は片隅を指さして「あそこじゃ」と言う。見ると、老爺が座って居眠りをしていた。老婆は羽箒で老爺をたたき起こした。老爺はまだ眠そうに会計をしてくれた。


値札を読むのに苦労している辺り、老眼なのだろう。この世界にメガネはあるのかな? 古代エジプトのころからレンズという概念はあったそうだが、どうだろうか。


無事会計を済ませ、本屋を出る。モーガンさんの屋敷に辿りつくころには、日は暮れていた。


部屋に戻ると、シューミルはいなかった。通りかかった執事に聞いたら、別室に移動させたとのこと。


すぐに夕食に呼ばれたので、そっちに向かう。モーガンさんは食べ終えたらしく、もう居なかった。


次の日もモーガンさんは少し冷たくて、接しづらかった。


任務に行く気にはならなかったので、シューミルの隣で一日中本を読んでいた。シューミルが申し訳なさそうにしていたから、本を読みたいから、今日は休日にしたんだと言った。ここ数週間は忙しかったので、このくらいはいいだろう。実際、かなり勉強になる内容だった。


薬をシューミルにあげるとき、モーガンさんが「君は手がかかるなぁ」と言っていた。モーガンさんの目の下には隈ができていて、疲れているのがはっきりわかったけど、シューミルが聞こえないふりをしていたのが見えたから文句は言えなかった。それが奴隷と持ち主の関係なんだろうと割り切った。


次の日もまた、本を読んだ。おととい買ってきた本はこれですべて読み終わった。魔法は何度か試してみて、一番簡単な【射撃(ショット)】だけは使えるようになった。ただ、魔力の消費が高い割に威力は低めなので、余り使うことはないかもしれない。


シューミルの風邪も明日には治りそうだ。明日からはまた一緒に任務に行けるかもしれない。少し楽しみにしつつ、眠りについた。




けど、それは叶わなかった。


朝、シューミルの部屋に行ったけど、シューミルは居なかった。


代わりに、書置きが置いてある。


『ごめんなさい』



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