1-1 安定の王都スタート
1章は、決意的な何かです。
石造りの城壁、その反対に見える大きな城。辺りには市場が並び、人がやいのやいのと騒いでいる。
店先や城壁には旗が掲げられており、そこにはルーシェル王国という文字と女王のシルエットが書かれている。
ユートはこの世界に見合ったデザインの布の服に身を包み、天高く拳を突き上げる。
「っしゃーーーーーー!」
待ちに待った異世界転移。俺のセカンドライフ。楽しみでしかない。もちろん地球にいる家族も気になるし、体操の全国大会も気になるが、無理なものは仕方ない。色々ありすぎてもう多少諦めている。
ところで、女神規定とやらにより本来は人の少ない所に転移するはずのユートがなぜ王都にいるのかというと、
「若いです! もち未成年に見えていました!」とリュミさんを褒めちぎったらギルド登録分のお金とこの装備をもらって王都に送ってもらえたのだ。俺の話術の賜物としか言えるまい。「もち」の意味をモチ肌のことだと言ったのがよかったのかもしれない。
言語に関しても何らかの調整が自動的になされているらしく、そこの市場に売っている果物の値段も読めるし、話していることも意味が分かる。大した障害も無しに、俺の冒険は始まったのだ。
まずやることは決まっている。ギルドに向かい、登録して、一つくらい依頼をこなすことだ。リュミさんからは冒険者ギルド登録分の銀貨一枚しか貰えなかったので、登録してしまうと一文無しになるのだ。初日野宿とか盗賊出没ルートが目に見えているので、何としてでも避けたい。
手近な人を捕まえて道を聞き、指さされた方向へ向かう。たどり着いたのは、冒険者ギルドと大きく書かれた木造の建物だった。大きな二階建ての作りになっているあたり、かなり大規模な施設なのが解る。ユートは扉を押し開けて入った。
中には筋肉モリモリマッチョマンの大酒呑みがいっぱい・・・と思っていたがそれほどでもなかった。ガテン系の男が多いのは事実だが、鎧をまとった女剣士や、杖を持ってローブを着た魔法使いタイプの男も結構いる。冒険者とは結構ジェンダーフリーな職業なようだ。
悠斗はそれにひとまず安心して、受付と書かれた札が立っているほうへと向かった。そこにはユートより一つか二つくらい年上と思われる碧髪長身の女性が座っていた。豊満な胸につけられた名札にはユミナと書いてあった。
「すいません。ギルド登録をしたいのですが、受付はここで合っていますか?」
「ええ、合っていますよ。登録ですね? そこに掛けて少々お待ちください」
丁寧な物腰をありがたく思いつつ、木製のがっしりした椅子に腰かけて待つ。すぐにユミナさんが羊皮紙と羽ペンを持ってきた。
記入用紙には名前、性別、出身、得意武器とあった。得意武器は剣でいいか。
・・・・・・って。まずい。出身考えてなかったぞ。いきなり変な奴だと思われるのはごめんだ。
さすがに身分証明に嘘の地名を書くとばれる可能性もあるので、ここは出来るだけ穏便に行こう。
「すいません、僕は田舎の拾われ子なんですけど、出身ってどうすればいいんですか?」とできるだけ声を潜めて言う。
「出身はランクA以上になった方は必要ですが、それ以下なら必要はありません。もっとも、出身不明と出るので何らかの事情があるとは思われるかもしれませんが」
「はい、ではそうします―――――――出来ました」
次はユミナさんに連れられ、奥のほうへと案内される。
ユミナさんがギルドカードであろう板と果物ナイフを取り出し、差し出す。
「これに少量でいいので血液をつけて、それで登録は完了となります。身分証明もその時から可能となります」
ユートは左手に傷をつけ、ギルドカードに血をつけた。途端、名前と性別、出身と得意武器が浮かび上がった。左下には、Eと書いてある。ランクだろう。
「おめでと! これでキミも冒険者の仲間入りだね!」
ユミナさんに肩をバンバンたたかれる。先程までの他人行儀はどこかに消え去っていた。うん。こっちのほうが冒険者、って感じがしていいな。
「ありがとうございます。ところで依頼ってどうやって受ければいいんですか?その辺詳しく教えてほしいんですけど」
「ええ! 労働意欲のある人は大好きよ! キミは入りたてのEランクだから、採集が主になると思うけど、確か今日はまだ誰もやってない依頼が一個あるから、それやってみる?習うより慣れよ、ってね」
「はい! お願いします!」
こうして俺は、無事に冒険者ギルドの一員となったのだった。




