3-7 逃走劇
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「逃げろぉぉぉぉおおお!!!」
シューミルの手を引いて、走り出す。もう既に巣から数匹出てきていたので、追いつかれてしまうかもしれない。
シューミルの方はと言うと、元々足が速いのか、全速力で走っても手をつないでいられるほどには距離が開かない。スキルがなかったら普通に追い抜かれていたかもしれない。
「ッ!?」
ビィィィイン、と変な音がして、すぐ横を黒が掠める。それはそのまま木に突き刺さってしまった。すぐさま〈鬼神の魔眼〉。
〇貫き蜂
真っすぐ飛ぶのが得意な蜂。とても早いけど曲がれない。刺されるととても痛いぞ。
あっ、魔物じゃないのね。安心。とか言ってる場合じゃない。
今まではシューミルも刺されていないようだが、何匹か追いついては木に突き刺さっている。直線勝負は良くないかもしれない。
「曲がるぞッ!」
丁度よいタイミングを見計らい、右に九十度カーブする。
すぐに光が差し込む方が見えてきた。森の出口だろう。向こうまで逃げればなんとかなるかもしれない。
「もう少しだ。急げええええ!」
光のほうへ飛び込む。
「やっ・・・・た?」
すかっ、と空を切ったのは、足。
時間が止まったような気がする。下は・・・・・・川。
「わああああああ!?」
「ひゃぁああっ!?」
数分前と同じく、また二人は落ちることとなるのだった。
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「ダメかと思った・・・・・・・」
川からあがって、一息つく。
ユート達はひたすらに逃げ続け、何とか蜂から逃げ切れたのだった。途中一度も木の根に躓かなかったのは、僥倖としか言いようがないだろう。その代わりに川に落ちたけど。落ちたけど。
服が濡れてしまったので、さっさと帰るべきだろう。シューミルも大丈夫かな?
「って、どうした?」
シューミルは片手で足を抑え、苦痛に顔をゆがめていた。
靴を脱がせて調べてみると、結構腫れていた。
「捻挫? 落ちた時か?」
「・・・はい。私も気づいていませんでした。ここで落ち着いたら急に・・・・」
「シーチの実は一応十分量集まってるし、濡れちゃったし、急いでモーガンさんのとこに戻ろう。おぶってくから、乗って」
「いえ。片足でもなんとかなるので大丈夫です」
片足で立ちあがり、跳ねて見せる。余裕ぶっているが、相当痛いのだろう。額に脂汗が浮かんでいる。
「いいから。捻挫したのも元はと言えば俺のせいだし、遠慮しなくていいから」
半ば無理やり、シューミルをおぶって、歩きだす。
「・・・・・・申し訳ありません」
「ん? 気にすることはないって。俺も体操してた時よく落ちて怪我したりしてたから、ちょっと懐かしいよ」
「体操?」
「ああ、屈伸とかそういうのじゃなくて、マットとか・・・・なんて説明しようか。例えば、バク中とか側転とか、そんなのの上手さとかを競う競技があって、それを昔やってたんだよ」
体操をやっていた頃を昔と認識していたことに、口に出してから気づく。まだこの世界に来てから二週間と少しなのに、日本のことが遠く感じる。まあ物理的に遠いのは確かだが。
「――――――――――――私も、出来るでしょうか?」
「んー。どうだろうね。シューミルが体柔らかいのは見ててわかるから、多分向いてるのかな?」
「そうですか」
おぶってると思うんだけど、体の柔らかさで言うなら天使さんやわらかかったなぁ・・・・もちろん、別の意味で。
「――――――変な事考えてます」
「え゛!? 別ニ何モ考エテナカッタヨー」
むぅ、とふてくされる。そういえば、解りやすく感情的な反応を見るのは久しぶりかな?
「さて、もう少しでつくから、ちゃっちゃと着替えて、足をモーガンさんに治してもらおう」
「はい」
そろそろ乾いてきた伸びかけの髪をかき上げて、ユートは歩速を早めるのだった。
ステータスが出ないものに鬼神の魔眼を発動した時の説明文は遊○王のバニラカードについてるフレーバーテキストをイメージしながら書いてます。特に初代。あの妙に軽いノリの説明好きなんですよね。




