3-5 デート回
私は二次元を趣味とする高校生です。クオリティーはお察し下さい。
ユートは部屋のベッドに寝転がり、頭を抱えていた。
課題を失くしたのに忘れただけと答えてしまった時のようなフラストレーションが、その数倍の密度でのしかかる。ベッドの上をごろごろと往復しながら、呻き声を漏らす。
街に行くことになってしまったが、計画も情報も何もない。初見の街を楽しく周ってこいってなかなか無理ゲーじゃなかろうか。
「目的は一つ、シューミルのトラウマを解決すること・・・・」
つまりは過去に縛られないように現実に居場所を作ってあげること・・・になるのか? 勝手な判断だが大体は間違っていないだろう。これを解決するのは異世界的なものというより、和を大切にする現代日本人としての知識や常識ではなかろうか。
よし、それならば少し客観的に考えてみよう。
あるところに、いやなトラウマをもつ少女がいました。その子に現実の良さを教えてあげるためと名目をつけて街を回りたいと思います。無論、楽しいほうがいいでしょう。
「つまりこれはデート・・・・・・?」
いやいや違う。シューミルに何かして楽しんでもらわないといけないからデートじゃない・・・・・ってあれ?
「俺は必要だった物資を買い物に行く。それにシューミルついてくる。俺さらっとシューミル楽しませる、シューミル喜ぶ。これで万事解決オッケーハッピー・・・・・・・・・・・・・駄目だ緊張で死にそう」
余計なことを考えると頭が自爆しそうだ。頭を大きく振って雑念を払い、集中する。
「これは、任務であって、デートではない。――――よし、これでいこう」
たまたまデートのような形になっているだけだ。大事なのは形じゃない。
「ただ、形はあくまでデートに見えるかもしれない。それなら経験を活かせばいい―――――――」
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軽く自虐をかましながらも、慎重に頭を動かす。
経験がないなら、シミュレーションに頼ればいい。
一件、ひっかかった記憶があった。
昔、幼馴染がそんな恋愛シミュレーションゲームをおすすめしてきてやらされたような・・・・
内容は・・・・・・男の子を操作して男の子を攻略するやつだったかと。しかもR指定。
「駄目じゃねぇか・・・・・」
展開や喘ぎ声に具合を悪くしたことを思い出し、がっくりと項垂れる。
こうなったらヤケクソだ。当たって砕けろでいいやもう。
ユートは軽く身だしなみを整えた後、部屋を出て、シューミルを探しに向かった。場所を知らなかったので、途中にいたメイドに尋ねた。今は部屋に戻して休ませているらしい。
ドアをノックして、名前を呼ぶ。
返事は無かった。だけどすぐに、ゆっくりと少しだけドアが開いた。
顔を見せないまま、「・・・何でしょうか」と弱々しい声が聞こえてくる。
ユートは軽く深呼吸し、出来るだけ平然を装うことにした。
「えっと、ちょっと町でも歩こうか、ってさ」
「お買い物ですか? わかりました。しばらくお待ちください」
すぐに支度を済ませて、出てくる。格好は相変わらずのメイド服だった。
「その格好で行くの? 別に仕事を頼むってわけじゃないし、普段着があるならそれでいいよ?」
「持ってないです。すみません」
「あー、いや、持ってないならいいよ。別に必要なことでもないからね」
「そうですか。わかりました」
ユートが知っている場所はここと冒険者ギルドと街の外くらいだ。商業区の方に出てみて、出たとこ勝負しか選択肢は無い。意を決して、ユートはシューミルを連れて出るのだった。
街は、思ったよりも賑わっていた。この辺の区画を商業区として店を固めているようで、そこまで大きくはないもののにぎわっていた。露店も多く出ていて、活気がある。
「この国に来てからまだ商業区を見に来てなかったと思ってね」
「はい。それでは荷物を持ちます」
「え? いやいいよ。シューミルはついてきてくれればいい」
どうして自分が呼ばれているのか、わかっていないような顔をしている。先行きが心配だ。
まずは市場の方に行き、食料品関係を補充した。見たことのない食べ物や、ゲテモノ系の料理もあって(食べたりはしなかったが)、結構楽しめた。
次に露店で軽く昼食をとりながら、装備品を見る。魔力が籠っているらしい剣や、どう使うのかも解らないような変わった武器など、興味をひくものが沢山あった。
いやあ。商業区は面白いなぁ。
―――――って、ダメじゃないか!!
シューミルは自分の役目が解らずにそわそわしている。到底楽しめているとは言えない状況だ。
「ちょっとここで待ってて」と言って席を外す。
「どうしようか・・・・・・」誰もいない所で、自然とため息が漏れる。
「お困りのようアルね。そこの亜人の子とケンカでもしたアルか?」
声のする方を向くと、そこには赤いチャイナドレスのような深くスリットの入った服を着た妙齢の女性。話し方といい何と言い率直に言って胡散臭い。
「何ですかいきなり・・・・・・」
「私はリンリンアル。そこの店で薬草を調合して売っているアル」
そういえば甘いものをあげてみるのはどうだろうか。近くには・・・・・・・おっ、丁度よく移動式露店がアイスのようなものを売ってるな。
「うちの薬草なら運気も一緒に上「リンリンアルさん、それどころじゃなくなったんで、また今度ー」
「リンリンアルじゃなくてリンリンアルー!」と訳のわからないことを叫ぶリンリンアルさんを無視して、露店の方に行き、アイスを二つ注文し、シューミルの所に戻る。
「はい、これ。一つ食べていいよ」
「はっ、はい。いただきます」
びっくりするシューミルにアイスを渡し、一つを自分の口に運ぶ。うん、昔どこかで食べた紫芋アイスをさらに甘くしたような味だけど結構いけるな。
「・・・・・・おいしいです」シューミルの表情が少し緩む。成果は上々だ。
「それじゃあ、これ食べ終わったら次はシューミルの服を買いに行こうか」
「?」
不思議そうにするシューミルのメイド服を指さしながら、言う。
「その服、少し大きいよね。昨日の夜汚しちゃって着替えたからだと思うんだけど、自分のじゃないでしょ? 他の服も持っててもいいんじゃないかって思ったから」
「そ、そうでしょうか・・・・・・・・?」
「うんうん。あとアイス垂れそう」
「わっ!?」
慌てて垂れそうになったアイスを啜るシューミル。端的に言ってかわいい。
それからしばらくして、丁度よさそうな店を探して入る。
店にはやたらにテンションの高い店員がいた。その店員にリードされながら、服を選んでいく。何度かシューミルに試着させたが、素材がいいのかどんな服も似合ってしまったので、絞るのに少し手間取った。因みに着せ替えさせられるシューミルはもっと困惑していたが、どこか少し嬉しそうだった。
結局、水色のワンピースを選び、シューミルに買ってあげた。混乱していたけど、着て帰るかと聞いたら頷いてくれた。さらさらそうな髪が少し気になったので、リボンとかはどうかと思ったけど、猫耳があるのでヘアピンにした。
「うん! これでよし! っと。かわいい感じだね」
「そ、そうですか・・・・」
急に褒められてはわはわしている所もかわいい。って可愛いしか言ってないような気がする。
「さて、そろそろ日も暮れちゃうし、帰ろっか。モーガンさんもきっと似合ってるって言ってくれるよ」
「はい!」
出る時よりも元気になったシューミルを連れて、屋敷に戻るのだった。




