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3-4 頭の痛い子

今回はちょっくら鬱話なので、ご注意を。それでは>⋂(・ω・)⋂<

「―――――――ッ!!」


突然、脳をぐらりとゆらすような大きな叫び声が耳元で聞こえ、ユートは無理やり覚醒させられた。


「こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいいいいいいいいやああああ」


手をバタバタと振り回しながら、獣のものとは違った、鋭い絶叫を響かせる。


慌てて抑えこもうとするが、上手く体をよじって逃れられた。


叫びながら、何かから逃げるように転がる。平衡感覚も失ってしまっているようだ。


思っていたよりも重症だ。これはやむを得ない状況か・・・・?


ユートは今にも自分の目に爪を突き立て自傷行為に及ぼうとするシューミルに、〈鬼神の魔眼〉を発動。


「――――ひッ!?」


怯んだ隙に、表示されるステータスには目もくれず、一気に抑えにかかる。副作用の有効活用だが、恐怖感を与えてしまったようで、さらに慌てさせる結果になってしまった。


「やめてやめてやめていたいいたいいたたたたいいたいいいいいい」


抑え込むことには成功したものの、焦燥は失せないようだ。じたばたと踠こうとする。


鬼神の魔眼はもう切ったが、まだ目を合わせないほうがいいかもしれない。そう判断し、シューミルをうつ伏せにする。


「いやいやいやいやいやいやあああああ」


激しい拒絶の後、咳き込み、嘔吐。吐瀉物を避けるようにシューミルを移動させようとしたが手間取ってしまい、少し自分が汚れてしまった。


異臭を意識しないようにしながら、空嘔吐(えず)きを繰り返すシューミルの背中をさすってやる。


しばらくすると落ち着いてきたのか、呼吸が落ち着いてきた。


「大丈夫、大丈夫・・・・」と、出来るだけゆっくり、怖がらせないように囁く。


それから、どれだけ経っただろうか。ぽつりと、ごめんなさい、と声が聞こえてきた。


「もう大丈夫かい?」

「・・・・・はい」


シューミルを解放する。シューミルはのそりと起き上がり、数度咽せたあとに、もう一度「ごめんなさい」と言った。


「気にすることは無いよ。さ、片付けでもしよっか」


ここで暗くしたり怒ってしまっても仕方が無いので、明るく言う。けどそれはシューミルに余計な不安を与えてしまったようで、ごめんなさい、ごめんなさい・・・と何度も謝られてしまった。


ユートはその後も、何度も謝られながら、片づけをすることになるのだった。



______________________________



「――――という状況で。どうしましょうか」


朝食。モーガンさんは相変わらず結構な量を食べている。因みにユートは片付けなどを済ませていたら夜が明けてしまったので、あれからはほぼ寝ていない。


「困ったな。実は私もそこまでとは思ってなかったな・・・・・」

「楽観視していたら悪化するだけですよ。早急に対応すべきです」

「かと言って、医者に頼んでも無駄とも言えるしな」

「どうしてですか?」

「私の〈心理掌握〉スキルでも似たような効果を出せるのだが、いずれにせよその効果は一時的なものだ。薬師に落ち着くような薬を処方してもらったとしても、その場凌ぎにしかならない。根本的な腫瘍(トラウマ)を切除してあげなければ、いつか必ず苦しむことになる、そうだろう?」

「・・・・・・・・」


そうは言っても、本人はその痛みを一瞬でも取り除ける方を望むだろう。モーガンさんの考えは独善的にも見えた。


しかし、それが奴隷の『持ち主』である本人の考えなのだから、仕方ないのだろう。


「でも、どうして僕に頼もうと思ったんですか?」

「―—―君もさっき言った通り、多少楽観視していたということもあるが、なにより君は不思議な存在に見えたのでな。君が常人とは違う何かを持っている気がした、それだけだ」


それはスキルのことを言っているのだろうか。それとも転移前の記憶のことを言っているのだろうか。もしかするとそのどちらでもないのかもしれない。いずれにせよそれはモーガンさんにしか分からないことだ。


「失望しましたか?」

「いや、そうでもないさ。しっかり考えてくれているようで私としては嬉しい限りさ」

「そうですか。意外な気がします」

「まあ、どちらにせよ、今日は任務には行けないのだろう? それならば街をぶらついてみるとかはどうだ?」


部屋に置いておいた軽防具が汚れてしまったので、洗濯しなければいけないのだ。今はモーガンさんからもらった着替えを着ている。盗賊のアジトに行く前日の夜にシューミルに毛布を貸したお礼だとか。


「そうですね、それではそうしておきます。あ、モーガンさんも来ませんか?」

「いや、私はいいよ。帰ってきたばかりでまだまだ忙しいからね」

「そうですか。頑張ってください」

「ああ。君こそな」


モーガンさんはいつの間にか空になっている食器をメイドに渡し、部屋を出ていく。いつ食べてたっけと不思議に思いながら、ユートは急いで朝食を胃に詰めるのだった。





次回「デート回」(書いてたらいつもより長くなってますが一話で出し切ります)

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