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3-2 森のくまさん(hard)


「シューミルって、戦えたりする? 一応、いざって時に自衛くらいできると嬉しいんだけど」

「はい。多少でよければ心得ております」

「よかった。それじゃあ普段は回収とかをやってくれ。何かあるかもしれないから、気は抜かないようにね」

「はい。わかりました」


余計なことを一切言わない、必要最低限の返事。表情にも感情は見当たらない。


確かに盗賊のアジトに行くまでにちょっと話したけど、その時はもっと明るかったような気がする。


「それじゃあ、外に出ようか」


城門で手続きをして、外に出る。今日はめぼしい依頼は無かったのでモーガンさんの仕入れを手伝おうと言うことで、魔物を狩って素材を売るつもりだ。シューミルのことも考えて、多少弱めの魔物が出る場所を選んでいる。ヴァルトスパイダーという蜘蛛の糸を集めるのが主な目的で、道中に出た魔物も狩ろうと思っている。


警戒すべき事項は迷子になること。ただこれは森の深いところに入った場合で、道になっている部分から離れなければ問題は無い。


・・・・・・・・よし。大丈夫だな。クラン達がやっていた通りにリスクアセスメントを行ってみると、その大切さがわかる。被害を最小限に抑えるためには、咄嗟の判断だけではどうにもならないことだってあるのだ。


装備点検も済ませて、森へと入る。因みに剣は収納せず腰に下げている。シューミルにも短剣を渡しておいた。


森に入ってすぐに、木に赤い布を巻き付けておく。どの道を使ったか覚えておくための目印である。


街道を通ってこの国に来た時も思ったが、木の一本一本が大きい。背が高いというのもあるが、一本の太さが太いため、結構視界を遮られることになる。光の入りも悪いため、不意打ちにはもってこいなのかもしれない。


本日のメイン討伐対象であるヴァルトスパイダーも、木から急に降りてきたりすることが多いらしい。ただ、あまり強くなく、というかほぼ危害を与えてこないため、これを狩ろうと思ったのである。


「・・・・ってわけで、この蜘蛛の糸の回収を頼みたいんだけど、いいかい?」

「はい。了解いたしました」


丁寧に返事をする。別に自分だって冒険者としてはまだまだ経験も浅いけど、クランやファスターと居たせいか、ここまで丁寧にされると少し気恥しい。もうちょっと部活みたいというか、元気な感じがあったっていいと思「わぷっ」


話しながら後ろ歩きしていたせいか、何かにぶつかってしまった。振り向いて確認すると、そこには巨躯。毛むくじゃらのモノがそこに居た。


「く、熊!?」


不意を突かれすぎて、腰が抜ける。ってかここに熊が出るなんて聞いていなかった。


「ンだよ熊扱いしやがって・・・・」

「しゃべったああああ!?」


その熊は手を持ち上げ頭を掻きながら、「熊は服着て二本足で歩かねぇだろうが・・・」とぼやく。どうやらそういう魔物でも幻覚でもないらしい。


「・・・・はぁ。ほんとに熊じゃないんですね。焦りました」

「確かに俺は熊種の獣人だし、勘違いされやすいことは認めるが・・・俺はれっきとした冒険者だ。覚えとけよ」

「はい。ところで、どうしてここに?」

「あー。釣りにでも行こうかと思っているなら、よしたほうが得策だぜ。今日はさっぱりだった。餌が余ってるから売ってやってもいいぞ?」

「そうだったんですか。ありがとうございます。僕たちはヴァルトスパイダー狩りなので大丈夫です」

「そうか。結構やり手かと思ったんだが、初心者だったか。俺も年取っちまったなぁ。いや、そっちのお嬢ちゃんに合わせてるって感じかな? まあいい、貫き蜂には気をつけろよー」


手を振りながら、のっしのっしと歩いていくその姿は、やっぱり熊そのものだった。


「それじゃ、気を取り直して再出発・・・って、どうした?」


シューミルが困ったような目でこっちを見ている。


「私に合わせていただかなくても・・・その、構いませんので」


おずおずと言うシューミル。さっきの熊獣人の話を聞いていたのだろう。


「いや、ここの森に来るのは初めてだから色々確認しておきたかったとか、シューミルの実力を確認しておきたかったとか、そういう理由もあるんだよ? 一回くらいはシューミルだけで戦ってみてもらうつもりだし」

「そう・・・でしたか。すいません」

「うん。それじゃあ行こうか」

「はい」


それから、特に問題もなく、ユートたちは狩りを進めるのだった。




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