3-1 寝て待っても来るのはアホだった
3章は、学習的な何かです。
「ぁあ・・・・・寝た気がしねぇ・・・・・」
前日までの疲弊がさっぱり取れない。これも全てあのアホ女神のせいだと思うと腹が立ってくる。本物ミラ自ら連絡を回してきた辺り、適当なスキルを与えたくてあの人選にしたのではないかと思えてくる。
そしてめちゃくちゃな苦痛を受けてまで手に入れた面倒の種がここに・・・・・・やっぱりあった。
ギルドカードを見ると、《女神の祝福》スキルのレベルが二から三へ、そしてスキル内容に、追加が一つ増えている。
増えたのは〈喚命術―暗闇―〉か。いかにも、って感じの痛さだ。ただ、このスキルも今までと同様、また無駄に大変な目に遭う未来が見えるので、試し撃ちは誰もいない時にしておこう。
二度寝でも・・・・いや、する気にもならない。あぁ、怠い。
窓から差し込む光を避けるように転がる。日差しからして八時ごろだろうか。今日はモーガンさんにギルドの場所を聞いて依頼を一つくらいはこなして・・・・・・あー、さぼりたい。
「仕方ない。体操から始めるか」
ふぅ、と大きく息を吐き出し、ストレッチを始めるのであった。
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「それで、依頼についてだが」
朝食をとった後、神妙な面持ちでモーガンさんが言う。
「はい。僕にできることなら良いのですが」
「多分、大丈夫なはずだ。内容というのは、シューミルのことだ」
「??」
「昨日シューミルを見かけたなら多少気づいていたかもしれないが、彼女の様子がおかしいんだ」
言われてみれば、全体的に感情が薄かったような気がする。てっきり仕事モードはそんなものなのだと思っていたが・・・・・
「頼んだことをしっかりこなせるようになったのはいいんだが、以前はもっと感情豊かというか、元気な子だったのだよ」
「そうだったんですか。理由は・・・・言うまでもないですね」
勝手に大丈夫だと思って、勝手に安心していたが、やはり心にくるものがあるのだろう。自分だってあの狂った光景は目に焼き付いてしまっているし、それが母親だったのなら猶更だろう。
「いずれにせよ、このまま放っておけば良くないのは確かだ。ということで、君にはシューミルを元気づけて欲しいんだ」
「・・・・・・・・・・えっ?」
当然のように言うモーガンさん。元気・・・・づける?
「ああ、いや別にほめて調子に乗せてくれとかそういったことじゃなくて、ただ単に君に付き添わせるから、好きに使ってくれって意味だ。本当は仕事以外のことをさせて気を紛らしたほうがいいんだろうが、そう遊ばせるわけにもいかなくてな」
「でも、そういうこと気にかけるって、なかなか無いことでしょう?」
「ん・・・・・・まあ確かに多少珍しいことではあるが、シューミルを重労働用奴隷にするつもりは元々なかったしある程度は性格面も調整しておきたいからな」
要するに仲良くなって人との関わり方を思い出させることが目標か。人出が増えるのは確かにメリットだし、断る理由も見当たらない。
「はい。いいですよ。やっぱりモーガンさんは優しいんですね」
「む・・・普段は・・・いや、以前はそうでは無かったのだがな。まあいい。それじゃあ早速シューミルを呼ぶことにしよう」
モーガンさんが鈴を鳴らす。しばらくしてメイド服を着たシューミルがはいってきた。
「シューミル、これからしばらくユート君に仕えてもらう。奴隷証も渡してあるから、私と同じようにしっかりとした接し方をするように」
「はい。わかりました―――――――よろしくお願いします」
奴隷証と言うのは、奴隷に言うことを聞かせたり、反逆を制限したりするための証のことだ。魔力が籠っているらしい鈍色のメダルを、モーガンさんから手渡された。
「うん。よろしく。今日はギルドの方に行くから、ついてきて」
「はい。なんなりとお申し付け下さい」
な?と言わんばかりにモーガンさんからの目くばせ。そうですね、と頷いて、ユートは部屋を出るのだった。
えーっと。どうしよう。
想定外の依頼に少し困惑するユートであった。




