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2-6 奇妙な共闘

洞窟内は、想像以上に広かったが、想像以上に居心地が悪かった。光源も規則的に置いてある松明で中途半端に先が見えて、じめっとした空気と時々通る蝙蝠が恐怖感を煽ってくる。


ただ、一本道なのはよかった。迷うことはないからだ。奥まで歩いたが、人はいない。左右に四つずつ、一番奥に一つある部屋にいるのだろう。一番奥の部屋の戸が無駄に豪華だったので、ここが首領がいるのだとアタリをつける。


「順につぶしていくしかなさそうだな。端から順にいこう」声を最大限小さくし、ひそひそ声で決める。


「逃走を考えて手前からにするとして、ユート、右と左、どっちにする?」


モーガンさんが聞いてくる。どこかで聞いた話によると迷ったら人は左を選ぶと聞いたことがあったので、右を選択した。


シューミルに聞き耳を立ててもらい、音がしないことを確認してからそっと戸を開ける。


酒瓶などのゴミが散乱していた。というか、空気が籠るせいか臭い。汗と色々が混じって大変なことになっている。


「盗賊は居ないけど・・・・・別の意味で居たくない場所だな・・・次に行こう」


仕方なく左へ行こうとしたが、笑い声が聞こえてきたのでパス。手前から二番目の右の扉に聞き耳。音はしないらしい。ユートは軋む戸に少し肝を冷やしながらゆっくりと戸を開けた。


「寝室?」


古い木組みの二段ベッドがいくつも壁に沿って置かれている。二人ほど寝ているらしい。


忍び込んで起こすのも怖い。引き返そうか、と言って戸を閉めようとしたら、モーガンさんの服の袖をシューミルが引いた。


指さした先には、束になった鍵が置いてある。


「役に立つかもしれない。一応持っていこう」モーガンさんが机の上にある鍵束を取ろうと部屋に入る。


息を殺し、忍び足で鍵束のすぐそばまで行く。


「るっせーよバァーヤロー!」

「ッ!?」


突然大きな声をあげられて、思わず声をあげそうになる。シューミルに至ってはしっぽをピンと立てて毛が逆立ってしまっている。不覚にもちょっと和んだ。


「っきしょうめ・・・・」


盗賊はもう一度眠りに入っていく。


「なんて大きな寝言だ・・・・」

「寿命が縮んだような気がしますね・・・・・」


鍵を取り終え、ついでに吸魔の奪撃で二人の盗賊を昏倒させてから戻ってきたモーガンさんが、あきれたように言う。急にどっと疲れが出てきたような気がして、休憩がてら壁に寄り掛かろうと思ったが、黒い苔がびっしりと生えていたのでやめた。


一息ついてから、「それじゃあ左に―――――」と向き直りかけた瞬間


その扉から、人が出てきた。


「――――っと、誰だオマエ?」


見知らぬ顔に呆気にとられる盗賊が握る縄の先には、手錠で繋がれた人達。


「不味い! (吸魔の奪撃(ドレインタッチ))」


いち早く我に返ったモーガンさんが、吸魔の奪撃で盗賊を足止めする。何かあったときに聞こうと思ったのだろう、手加減しているのか意識までは奪っていないようだった。


「総員、山を下った街道にある馬車までシューミルに従って移動! その後警戒態勢に入れッ!」


モーガンさんが手早くナイフで縄を切り、奴隷に指示を出す。奴隷はシューミルの後を追って黙って走って行ったが、みな歓喜の表情を浮かべていた。


「モーガンさん、俺たちも早く逃げよう!」

「・・・・・」


モーガンさんは答えない。代わりに、まだ意識のある盗賊の腹を蹴り込む。


「獣人の母親が一人、まだ残っているはずだ。何処に居る。言えッ!」


獣人の母親とは、さっき見当たらなかったシューミルの母親のことを言っているのだろう。モーガンさんは今までに見たことがないほど激高している。だが盗賊は答えない。


追撃。体を折って苦しむ盗賊の表情は余裕綽々。勝ち誇ったかのように自慢げだ。


「ハッ、あの獣人だろう? 俺はどうなってるかは知らねェなぁ。ボスが気に入ってどっかに連れていったようだし、知ってるんじゃねぇか? ご丁寧に俺が連絡しといてやったから、感謝しな」


と言って、砕けた緑の石を取り出す。すぐさま〈鬼神の魔眼〉で鑑定。


理力の爆鳴石(小)

魔力が詰まった結晶。砕くと魔力が溢れ、大きな音だけが鳴る。


直後、火薬が爆ぜるような破裂音が洞窟内に響く。直後、戸が開き数人の盗賊が出てくる。武装をしていない辺り、どこかに纏めておいているか持っていないか、どちらにせよ大したことのないことは推測できるが、出てくるのはそれだけではすむまい。


案の定、奥の扉から大剣を持った細身の男が現れる。手練れであることは、鑑定しなくとも分かる。


「ユート、盗賊を任せてもいいか。私はあいつと戦う」

「いや、モーガンさんはドレインタッチで盗賊を片付けてください。一対多ならモーガンさんの方が向いているはずです。それに相手が大剣なら勝算がある・・・と思います」

「恩に着るよ。それで行こう。出来るだけ早く片付けるから、それまで耐えてくれ」


言い終わると同時に、モーガンさんの姿が掻き消え、盗賊が数人倒れる。出来た道を移動して、男と対峙する。


「君が相手かい。さァ、どうやって殺してあげようかな?」




※TRPGとか好きだったりすると勘ぐってしまうかもですが、この章に食人鬼は出てきませんのでご安心ください。

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