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2-4 仮面の奥は


はぁはぁと荒い息を上げる少女を宥めながら、仮面のとれたモーガンさんがこっちをじっと見る。


露わになった素顔は、落ち着いた声にマッチした、目鼻の通った顔立ち。


そして何より――――――どう見たって女性だった。


「――――――――――――ふぅ。仕方ないわね」


と一段高くなった滑らかな声で言って、シルクハットを脱ぐ。後頭部でお団子に纏められた髪の髪留めを外すと、背中まで届く金髪が自由になり、夜風に揺れる。


「自己紹介をやり直しましょうか。私は奴隷商、モーガン・サージェント。れっきとした女性よ」


「え、ああ。はい。僕はユート・ヒイラギ。男性です」


思わずこっちも名乗ってしまう。知ってるわ、さっき聞いたもの。と笑う声は、やっぱり普段より高い、女性の声だ。


「・・・・・・・・何よ。まだ疑ってるような顔してるわね」

「え・・・・っと、念のためなんですけど、それがわかるようなスキルを持っているのでそれを発動してもよろしいでしょうか? 視線が合うとアレなので後ろむいといてくれると助かるんですけど」

「ええ。それで誤解が解けるなら構わないわ。誤解というか、奴隷商が女だと実力行使に出たりする輩がいるから男のフリをしていただけなんだけどね」


じゃ、遠慮なく。と言って後ろに回り込み目が合わないようにしてから、(鬼神の魔眼)。


モーガン サージェント/女性-27歳

体力 120/120

魔力 10/10

腕力 45

知力 67

敏捷 53

耐性 52

スキル

《拷問Lv24》(峰打ち・急所察知・吸魔の奪撃・心理掌握)


女性であることが分かったとかよりそのスキルが気になる。それなりにレベル上がってるってことは・・・・いや、深く考えるのはやめておこう。


「はい。確認できました」(鬼神の魔眼)を止めてから、言う。その間もモーガンさんは少女の背中を撫で続けていたので、大分落ち着いてきているようだ。


「そう。ならよかったわ。男のフリしている理由はさっき言った通り。魔力が無いって言ったのは私自身魔法適性が低くて魔力が少ないっていうのと、声を変えるのに魔力を使っているから収支が合わなくなるからね。ほら、こんな風にね(・・・・・・)


最後だけ低い、けど優しい声に変わる。そんな魔法もあるのか。


「けれどこうやってバレてしまったことだし、楽だから街につくまではこのままでいるよ。あなたもそっちの方が嬉しいでしょう?」


言葉尻に妖艶な笑みを乗せて問いかけてくる。答えは是非それで、だ。


「にしても、全く気づきませんでしたよ。完全に男だと思ってました」

「人間、顔が判らなければ結構騙されるものよ。あなたも気をつけなさい?」

「本人が言いますかそれ・・・・」


そうこうしている内に、撫でられるがままになっていた少女が、「もう大丈夫です。ご迷惑をおかけしました」と立ち上がろうとして、ギョッとする。その顔はご主人様じゃない!と言いたげだった。


「どちら様・・・・でしょうか」


警戒を露わにしてモーガンさんに尋ねる。彼女が獣人である証とも言える長い尾も、ピンと立っている。


多分変装状態でしか接してこなかったのだろう。モーガンさんが女であったことを説明すると、「ご主人様でしたか。判らなくて申し訳ありません」と深く頭を下げる。その表情は何故か少し嬉しそうだった。モーガンさんも「今は怒らないから、あまり怖がらなくていいわ」と笑っている。


「あ、そうだ。この人に自己紹介しなさい」と少女に言う。


すぐに少女がこっちにとてとてとやってきて、ぺこりと頭を下げた。


「先程はご迷惑をおかけしました。シューミルです。猫種の獣人です。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく。ユートだ」


少女改めシューミルは、猫種の獣人だったらしい。小柄なところや目がくりっとしているところが、確かに猫っぽいと言えば猫っぽい。


「この人も助けてくれたんだから、感謝しなさいよ?」

「助けて・・・・・・? ぁ、お母さん・・・ぁあぁ・・・・」


瞳孔が小さくなり、血の気が失せる。自分の血に濡れた服に気がつき、叫び声をあげそうになる。


「失言だったわね。ほら、安心しなさい。大丈夫。あなたも、あなたの母親も、大丈夫。あなたの母親はあいつらに連れ去られたの。明日、必ず助け出してあげる。だから今日はゆっくり休んで、明日に備えなさい。あなたは大丈夫。あなたは大丈夫・・・・・」


うなされるシューミルを介抱しながら、優しく諭す。その様子はまるで怖がる妹をあやす姉のようだった。


「ってことで、助けてくれないかしら?」


と即座にこっちを向いてウインク。抜け目ない人だなぁ。


―――――全く、断ろうにも断れないじゃないか。最初から断ろうとは思ってなかったけど。






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