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1-16 白衣の女神

蒼がどこまでも続く空間に、ユートは立っていた。


「――――――――ああ。七日経ったのか」


そういえば七日目の夜にまた会おうとか言ってたっけ。


「ユート様。お迎えに上がりました」


また前と同じく、突然後ろから話しかけられる。振り向けば、前と同じ天使。


「シュミス・・・・さんだっけ? 今回も宜しく」


シュミスさんは一瞬戸惑い眉を顰めたが、すぐに何事もなかったかのように、目を瞑ってください、と言った。


名前は間違っていなかったはずだが、何か違ったのかもしれない。まあいいけど。なんて思いながら目を閉じるとすぐに、ふわりと浮き上がる感覚。目を開けると景色はやはり一転していた。


二つ並んだ白色蛍光管。リノリウムの床。上にレールを通すタイプのカーテンで分けられた個室。


「・・・・保健室?」

「正解」


奥の扉を開けて入ってきたのは、幼女でもなく高校生でもなく、白衣を纏った大人の女性だった。ただ、顔の面影や雰囲気でこれがミラなのだろうとわかる。


「お疲れ様、リュエル。もう帰っていいよ」


天使をしっかりと労って、帰らせる。これも前に会ったミラとは違う所だ。


「―――――って、リュエル? シュミスさんじゃなかったんですか?」


ミラは少し考え、ああ、と納得したように頷いた。


「彼女たちは特に見た目に差は無いからね。君が前に送ってもらったのがたまたまシュミスだっただけで、彼女はまた別人、いや別天使だよ。因みに私も、君が前回に会ったであろうミラとは別だな」

「女神って、何人もいるものなんですか? 前回のよりかなりしっかりした対応な気がしますが」


ミラは困ったような顔をして、いや、そうじゃない、と言った。


「君が最初に会った私は、多分幼い外見をしていて、ぐーたらで、我儘ばかりだっただろう?」

「ええ。まんまその通りでした」

「あはは、手酷いね。――――それが本物の私だよ。今君の前に立っている私は、私のお手伝いとして私が私の過去を切り取って作った紛い物さ」


ん? 私が、私の―――なんだって?


「えっとちょっと待ってください。・・・・えと、今ここにいるのは本物ミラの過去で、けど年上に見えるし仕事もできる、ですか?」

「まあ、見た目は好きに変えられるからね。それに、仕事が出来るって言ってくれるのはうれしいけど、私は仕事をするために作られているから、仕事が出来ないヤツは切り捨てて作り直されて、いやでも働く羽目になってるのさ。さ、そんなに無駄話をしてちゃ消されそうだ。仕事を始めよう」


おどけたように言っているが、本音なのだろう。表情が物語っている。


「それじゃ、この七日間分の記憶を覗かせてもらうわね―――ああ、何をしていても文句も何も言わないから安心していいわ」


ミラがユートのおでこにそっと触れる。大した違和感もなくすぐに手は離され、ミラがくっくっと笑いだす。


「よくここまで生き延びたわね。ちょっと見直したわ」


多分王魔狼との戦いのことを言っているのだろう。


「君を案内したのは新人ちゃんでしょう? ちゃんと感謝しておきなさい」

「ん?どうしてですか?」

「なんだ、気づいてなかったのね。あの子、剣をくれたでしょう? あれ、君が一回までなら死んじゃっても身代わりになるよう、魔法が込められていたわ」


つまり、あれが無かったら・・・・・想像するだけでも恐ろしい。リュミさんには御の字だ。


「じゃあ次、何か要望とか、なかった?」

「全てあの能力が悪いと思います」


即答した。もっとマシな能力があれば事を穏便に運べたものを。もちろん貰えなかった、とかよりは断然いいが、要望と言えばそれ以外に思い当たらない。


「それもそうね」とミラは言い、くっくっと笑う。


少し私に話を通してみるわ、と言い、スマホを取り出し何やら通話を始める。電波通ってるのかとか女神もハイテクだなあとか自分と会話するってどうなんだろうとか馬鹿なことを考えて待っていると、しばらくして、オッケーらしいわ、と指で丸を作って教えてくれた。


それからしばらくして、通話を終えたらしいミラがこっちに向き直し、笑顔で言った。


「君にミラ様からお達しがあった能力を追加しておいたわ。向こうに戻ったら必ず確認すること」

「はい、ありがとうございました」


ミラがまたおでこに触れる。視界がぐらりと歪み、平衡感覚がなくなる。


「また会えることを望んでいるわ」最後にそんな声を聞いた気がした。



これで一章は終了となります。ありがとうございました⋂(・ω・)⋂

沢山読んでくれる人がいて咽び泣きそうです(どこぞの議員レベルで)

次回から二章ですが、やっとヒロインを登場させようかと思っています。

感想・評価お待ちしております。


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