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1-13 決戦

昨日がPVとかブクマの伸びとか過去最高最高を記録していたようです。

さらにさらに評価してくれた方もいるようで感謝とともにこれは頑張らねばならんなと奮起しております。

みなさん誠にありがとうございます。

初動は王魔狼だった。配下の魔狼に邪魔するなという咆哮あげてから、こちらを睨む。眼に狂気が灯り、二ィと口角が上がった刹那、姿が掻き消える。


やはり速い。ユートは身体が反射的に逃げそうになるのをじっとこらえる。


身体を右に振ってフェイント、そして左から飛びかかり。洗練された動きだった。


うまく躱して、反撃を加えようと望めば、それは達人にしか叶わないだろう。ユートにもそうしようという気は毛頭無い。


だから、ユートは――――――――――――


「―――――――〈連鎖する四肢(ボディ・チェイン)〉」


王魔狼の位置を正確に見極め、左腕に〈連結する四肢(ボディ・チェイン)〉を発動し、迫り来る牙を新たに現れた腕で受け止める。


無論、一秒とたたぬうちに王魔狼の牙が腕の肉を突き破る。


灼けるような痛みが再来、脂汗が噴き出すのがわかる。


王魔狼が勝利を確信したのか、笑みを浮かべる。


「そいつを待ってたッ・・・・!」


左腕の痛みを無視し、右手に握った剣を、王魔狼に向けて全力で振り抜く。


冷静に、かつ全力で。ユートが体操をするときに常に心掛けていたことと同じだった。


剣は油断していた王魔狼のどてっ腹に埋まる。今まで斬った魔狼よりずっと固い。ただ、手ごたえは確実にあった。


やはり応えたようで、王魔狼も一旦飛び退く。お互いの血がぼたぼたと地面に垂れて地を汚す。


「逃がすかァッ!!」


そこにもう一度、〈連結する四肢(ボディ・チェイン)〉を発動。左腕をもう二本増やし、王魔狼の毛を鷲掴みにし、動きを止める。じたばたと暴れるので、さらに一本増やして、尾を掴んで押さえ続けた。


そして、鋭い爪をむき出しにした前足での蹴りを躱しながら、近づく。


「これで・・・・・・死ねェッ・・・・・・!!」


剣を構え、力を切っ先に一点集中して槍のように突き出す。狙うは頭の中心、目だ。


ユートの全力を込めた攻撃は、狙い通りに突き刺さる。


が、王魔狼もしぶとい。突き刺さる剣で頭を地面とつながれてもなお、雄叫びをあげながらそのまま爪で切り裂いてくる。


腕、太もも、腹、次々に裂かれていく。血が滲む。視界が霞む。痛みのレベルはとうに吹っ切れていた。


それでもユートは、剣に込める力を強める。もう次にチャンスがやってくることがないことは、解っていた。


そして、ついに


剣が、ボキリと音を立てて、折れた。


王魔狼はというと、目に切っ先を突き刺し、血を噴き出したまま、


勝ち誇ったような声で吠えて、


そのまま――――――どさりと倒れた。


そうして、静寂が訪れる。ひんやりとした夜の森の空気が、満身創痍の身体にしみる。


「やった・・・・・・」


絶命したのは一目でわかる。それと同時に洗脳が解けたのか、魔狼が我に返ったように散っていく。王魔狼を殺したユートに襲い掛かろうとは思わないようだ。


「けど、立ち上がれねぇな・・・・」


ユートの体は地に伏したまま、動こうにも動けない。


視界が明滅して、ぼんやりと霞んでいく。


ユートはゆっくりと、意識を手放すのだった。





_____________________________________


「急げぇッ!」怒号を飛ばす。


アカリが戻ってきてから十分。王魔狼相手に持ちこたえるには、限界の時間だった。


先程までは次から次へと襲い掛かってきた魔狼が、突然に散っていったので、もしかすると、ユートがやってくれたのかもしれない。けど、それならユートが帰ってこない理由はわからない。急いで向かうに越したことは無いのだ。


「クランさん、こっちです!!」アカリが奥の方を指さす。


そちらの方を振り向く。


そこには、眼に剣を突き刺して絶命している王魔狼と、


幾重にも分かれて増えた奇妙な左腕から血を流し続けている、ユートが倒れていた。


「い、一体なんなんだろうよ・・・・・・」意味の分からない状況に、言葉が漏れる。


―――――――――邪教徒?


そんな考えが、脳裏をよぎった。






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