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アーネル=フィオーネは見た


「シンラ!こっちだ!」


俺はシンラの手を引き、魔物から逃げていた。


今年の魔物討伐祭ハンターフェスタは例えるなら地獄絵図。デビルクロウが破壊した檻から逃げ出すA級の魔物。その魔物がさらに檻を破壊し、負のサイクルが続く。


「ジンスケさん!まっすぐ行くと魔物がいます!曲がりましょう!」


シンラは耳をピクピク動かしていた。恐らく魔物の足音を聞きわけたのだろう。さすが獣人だ。




♢♢


「オラァ!」


ゼネスは並の冒険者では太刀打ちできないであろう上級の魔物を次々と蹴散らす。


「はっ!」


その近くでアーネルもゼネス以上の速度で魔物を叩き伏せる。



ズシンッ!ズシンッ!


そこへ現るはデビルクロウ。その佇まいはある種の風格すら伴っている。


「……」


戦闘態勢をとるアーネル。しかしゼネスは、


「待ちな。このデビルクロウは俺に譲れ。」


そして答えを聞く前にゼネスは炎の魔力を使用し

、加速する。


炎波指刺ヒートフィンガー!」


濃密な魔力を纏わせた右の貫手はデビルクロウの心臓を的確に、かつ暴力的に貫いた。


「すげぇ……」


「さすがフィオーネのNo.2だ。格が違う…!」


事実、ゼネスはアーネルを除けば全グループ含めてもトップかも知れない戦闘力を誇る。


「へっ!こんなカスじゃ遊べもしねぇな!」


「ま、まだだ!」


「あん?」


主催者の中年男性は悲壮な表情で叫ぶ。


「今のは幼生だ!大人のデビルクロウはさらに二回り大きく、強い!さらに今回のデビルクロウは私が見た中でも最強のデビルクロウだ!頼むっ!捕まえてくれ!」


「ははっ!楽しくなってきやがったぜ!アーネル!どっちが先に仕留めるか勝負だ!」


「ゼネスさん。遊びじゃないんですよ。」




♢♢


ズドオオオン!


うぉっ!


俺達の目の前に巨大な何かが降ってきた。


そして巻き上げた砂塵はようやく霧散し、何かは姿を現す。


「そんなっ……デビル……クロウ!?でもこれは大きすぎる!」


「これが……デビルクロウか」


黒い蛇のようなボディに六つの瞳。そして十の腕。極めつけはその並々ならぬ圧力プレッシャーだ。


「ああ……」


その強烈な敵意に当てられたシンラは粗相してしまう。


「シンラ、大丈夫。」


俺はシンラの前に立ちふさがる。


「俺が守る…!」


「gurugaaaaaaaaaa!!!!」


デビルクロウは咆吼とともにその巨体に見合わぬ速度で直進してくる。


目を瞑るシンラ。そして俺はーーー。


「オラァァァァァァ!」


♢♢


〜アーネルside〜


「おいアーネル!あっちだ!」


「分かってます。先に行きます!」


私はギアを一段階上げてゼネスさんを追い越す。


「あっ!待て!」


そしてついにデビルクロウを見つけた。


あれはムミール食苑にいた土下座の人とゼネスさんが絡んでた女の店員さん!?


デビルクロウは彼女を守るように立つ土下座の店員さんに襲いかかる。


間に合って!


私は全速力で駆け抜けたが間に合わない。そう思った時、ありえない光景を見ることになる。


「オラァァァァァァ!」


なんと彼はあの速度のデビルクロウを微動だにせず受け止めた。


それならまだ分かる。私もそれならできる。でもその後、彼はなんとデビルクロウを投げ上げた。


ただ投げ上げたんじゃなくて、上空まで投げ飛ばした。


人間技じゃない。デビルクロウの体重は数tに及ぶ。それにあの個体は特別に巨大だ。それをあの高さまで投げ飛ばすことは私ですらできないことだ。



そしてデビルクロウは遠方まで高い放物線を描いて、地面へと激突して絶命した。


「え?デビルクロウは?」


「襲いかかってくると思ったら遠くに飛んで行ったよ。よかったぁ……」



彼に先ほどの獣のような鋭さはまるでなく、この前のときのように何事も無かったかのように笑いかける。


なぜ彼は力を隠すのだろう?あれだけの強さがあれば何でもできるだろう。


「はぁ、はぁ、アーネル!お前速いんだよ!

んで、デビルクロウは?」


「……終わりました。」


彼に興味が湧いた。初めて手を合わせたいと思った人物だ。


「ジンスケ……か。」


♢♢


「いやーあんたらも大変だったね!」


「死ぬかと思いました。」


ムミール食苑戻り、俺たちは事の顛末を話した。



「でもジンスケもやるときはやる男さー。シンラをよく守ったさー!」


「そうね〜。さすがジンスケね〜。後でおねーさんがよしよししてあげるね〜。」


シルナとクラリナも話に乗ってきた。


「ク・ラ・リ・ナ?」


そしてシンラは背後に修羅を浮かばせてクラリナの肩を掴む。


「なによ〜。シンラはただおしっこお漏らししてただけでしょ〜?そんなシンラに変わってあたしがご褒美〜!」


「シンラ、その歳でお漏らしはあちきでもしないさー。さすがにヤバイと思うさー。」


「う、うううるさい!あの状況はほんとに怖かったんだから!」


「シンラ…。それでも女の子としてどうかと思うよ…」


遂にはミーマさんにまで口撃されたシンラは顔を赤くして




逃げた。



ドタドタドタ!バタン! ガチャリ。



「みんなやりすぎだよ…。」


俺はさすがに見て見ぬ振りはできなかった。


その後シンラが立ち直るまで3日かかった。

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