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帰りの電車の中で、一月は考えていた。
――アイドルという職業は、本当に尊敬に値する。人気が全ての、一見華やかに見えて、厳しい実力社会だ。ファンの愛は一瞬で憎しみに変わる。……その恐ろしきパワーたるや。
愛に飢えた人たちがいる。誰にも愛されることのない、さみしい人たちが。そんな人たちに愛を分け与える。……その見返りで金を稼ぐ。悪いことじゃない。需要があるのだから。
愛と金で、アイドルはできている。
(でも……)。一月は思った。
……虚しい。あれだけ懸命に、純粋にすきだった俺の想いは。みんなの愛は。
垂れ流されてしまっているように感じていた。器に注がれるはずのもの。一人で受け止め切れるはずもない、多量な愛だ。
(やっぱり、間違っていたのかもしれない)。彼は思った。自分自身が決して報われることのない恋愛だった。真に欲しいものではなかったのだと、彼は気付きはじめていた。
……みんながすきなユカリンじゃなくって……。
……たった一人を愛して、その人からたった一人、愛されることが、幸せなんじゃないだろうか……。
浪費されていた自分の愛を思うと、ひたすらに虚しかった。
……じゃあ、これからはだれの為に……?