プロローグ
この地球には、2つの世界が、存在する。科学が発達した世界「エヴァン」、魔法が発達した世界「リーシャ」、どちらの世界も、干渉することなく、平和に過ごしていた。
「エヴァン…この世界は間違っているわ…私達は、一つになるべきなのよ」
「また…この夢か」
俺は、最近よく、この不思議な夢を見る。花畑のなかに、女性が立っていて、いつも同じことを俺に訴えかけてくる。
「まことー、朝だよー。早く起きなさいよー」
朝からうるさい、この声の主は、幼馴染の梔子雛乃。幼いときに、両親を亡くし、親族のいない俺を快く引き受けてくれたのが、雛乃の両親だった。だから、雛乃の両親には、感謝している。そういえば、自己紹介をしていなかったな。俺の名前は、柊真。私立星花学園の2年で、帰宅部、特技と趣味はない、成績は、中の上ぐらいの普通の高校生だ。
いつも通り、俺は、雛乃と一緒に学校に向かっていた。今日は、転校生がくるらしく、朝から妙にテンションの高い雛乃は、いつも以上にうるさかった。
「でね、今日来る転校生って、帰国子女らしいよ。かわいい女の子なのか」
雛乃は、帰国子女を女と思っているようだ。
「お前、ほんと、バカだな。帰国子女は、男にも使うぞ」
「そ、そんなこと知っているに決まっているじゃない」
苦笑いをする雛乃を横に俺は、今朝、コンビニで買ったパンを食べる。
「やっと…この時がやってきたのよ」
ん?なにか聞こえた。
あれは、雛乃の声じゃなかったし、一体誰なのだろうか。まあ気にしないでおくか。
と、まあ、学校に到着し、クラスメイトに挨拶をし、席につく
「よっ、真、おはよう」
「おはよう、優斗」
こいつは、俺のともだ…悪友の香谷優斗。昔からこいつには、苦労をかけさせられた。
チャイムが鳴り、担任が、やってくる。
「オーッス、お前らの新しいクラスメイトを紹介するぞ。さあ入って。」
綺麗な金色の髪に、小さな顔、スタイルもいい、顔は、ハーフなのかな、少し、白人っぽさがある女の子が、入ってきた。
「初めまして、ミルヒ・シュトレーゼです」
ミルヒ…どこかで、聞いたことある声だ。どこで、聞いた声だろうか。思い出せない。
「彼女は、最近まで、外国いて、日本に来るのは、初めてらしい。仲良くしてやってくれ、じゃあ、シュトレーゼは、柊の隣な、柊なんかあったら、聞いてやれよ。」
はっ、俺かよ、あの先生は、いつも俺に、任せやがって、彼女と、目が会ってしまった。
「よろしく…ミルヒって読んでくれて、かまわないわ」
あれ、日本語?最近まで、海外にいて、日本来るのは、初めてと言ってなかったか。勉強したのかな。
「よろしく、柊真だ。真でいいよ。ミルヒさん」
休み時間になり、ミルヒさんの周りに、噂を聞きつけた、他クラスの生徒まで、内のクラスに押し寄せていた。やっぱり皆、転校生好きだな。あんなのを見ていると絶対に転校したくないと思うね。
「あの…真君。今日放課後、この町を案内してほしいのだけど、いいかしら」
そういえば、昨日、ここに来たって言っていたな。
「いいよ、放課後はいつも暇をしているから。」
彼女は、微笑んでくれた。なんというか、あれだな…可愛い女の子とは、ああいう子のことを言うのだろうな。
「ん?なになに、ミルヒちゃんにこの町の案内をするの?私も行きたい」
と、やはりここで現れる、雛乃。こいつも、もっと清楚にできないものか……
「おっ真、俺ら友達だよな。」
優斗が俺の肩に手を置いた。
「お前ら、そんないきなりじゃ、ミルヒさん、びっくりするだろうが」
俺は二人の頭を押さえて、これ以上前に進めないように足を踏ん張る。
「私、大丈夫だよ。それに、みんなで行った方が楽しいと思うから」
ミルヒさん、あんたって人は……
そんなこんなで、俺達四人で、この、星ヶ丘町を回ることになった。
星ヶ丘町は、星が有名で、夜になると、町を覆う様に、星々が輝く町だ。だから、ここの、名物には、名前に星が入っているものが多い。なんと言うか、この町の人は、みんな星が好きみたいだ。俺も好きだしな。星ヶ丘商店街、星ヶ丘国立公園などの有名な場所を案内した。
「まあ、こんなところかな、俺が案内できるとこは」
そう言いながら、ミルヒさんに、缶ジュースを渡した。
「ありがとう、真君、雛乃さん、優斗君、今日は、楽しかったわ」
ミルヒさんは、俺らに笑顔を向けてくれた。
「ミルヒちゃん、私には、『さん』は、なくていいよ」
相変わらず、誰とでも仲良くなる奴だな。
「そう、じゃ…じゃあ、雛乃ちゃん。」
雛乃に、そう言った。ミルヒさんもの顔は、赤く林檎みたいになっていた。雛乃まで、顔を赤くしていた。
俺は、こんな日常が、ずっと続けはいいと思っていた。だが、この平和な日常が、今日終ろうとしていることを、今の俺は、知るよしもなかった。
ドガアアアアアアア
小学生の頃に見た、戦争映画の、爆撃音のような音とともに、黒い影が飛び出し、俺達の前に現れた。現れた黒い影は、漫画なので見るドラゴンのような姿をしていた。ワニのような鱗に、鋭い爪と牙。夢と思いたかった、でも、これは現実であるは、間違いない、同じように、雛乃と優斗も、また、目を見開き、今にも、腰を抜かしそうになっているのだから
だが、その中で一人驚きもせず、平然とドラゴンを見つめている少女がいた。そう、ミルヒさんだ。ミルヒさんはドラゴンを睨みつけていた。さっきまでの笑顔とは、まるで別人のようだ。
「また、あなた達ですか。きえてください。」
一瞬何が起こったのか分からなかった。ミルヒさんが消え、あのドラゴンが、後ろに吹っ飛んだ。ミルヒさんの手には、白く輝く綺麗な光、そう、それは、まるで星のような光だった。あんな少女にあのドラゴンを吹き飛ばすだけの力があったのだろか。
「みなさんには、本当のことを話します。私がいた国、いいえ、私がいた世界のことを…」
ミルヒさんは、よくわからないこと言い始めた。世界?国じゃなくて、世界。
「私がいた世界の名は、『リーシャ』あなた達の世界とは違い魔法が発達した、世界です。」
ここから、俺達の物語が始まった。