help信号の空を見て
頑張ってみました。
地上にはいでた俺。
周囲は森。
『人間はいない。どこへ行ってしまったのだ・・・。』
俺は頭を抱えた。
人間がいない世界などいらない。
とりあえず、人間を探しに歩く。
10分くらいだろうか。進み続けていれば突然目の前に大きな足が落ちてきた。
『人間だ』
見上げた俺は、全力でその人間の足の上に上った。
『俺は人間を観察したいんだ。君の住みかを教えてはくれまいか?』
俺の魂の叫びを聞いた人間が、ゆっくりとした動きで俺を見た。
『どうした人間。顔が青いぞ?』
俺の気のきいた一言。
それを言った瞬間、その人間は非情にも叫んだ。
「ギャァァァァアアァァアア!!ミミズゥ!!!」
『何故、恐れる?』
人間は俺の言葉を無視するかのように、巨大な足を大きく振り上げ俺を投げ飛ばした。
俺はなすすべもなく、飛んでいく。どこまで飛んでいけばいいのだろうか?
どこまで飛んでいけば、あの人間は俺に住みかを教えてくれるのだろうか?
我ながら可愛そうだと思うのは幻だろうか?
否、現に俺の体は傷だらけではないか!
俺は人間のキック力で飛ばされ、堅いゴツゴツした地面に転がり落ちた。
―ブルルルルルルゥゥゥウウゥゥ・・―
すぐ横を巨大な鉄の塊がものすごいスピードで通過していく。
私は恐怖に怯えた。
『あぁ、ベリー・・どうやら俺は選択を間違えたようだ。君という天使に気づけなかった俺を許しておくれ・・・』
謝罪などいまさらだ。
悲しみの私は体を曲げた。
そのときだ。
すぐ真上から、声がした。
「あー、ミミズじゃん」
「本当だ~」
人間でいう子供、いや少女の声だろうか。
『助けて・・くれ・・・ぇ・・・』
喉から出したhelpの叫び。
それに気づかないかのように二人の少女は会話を続けていた。
「森から出てきたんだよね?このミミズ。」
「え、じゃぁ森に帰すん?」
「・・っこのミミズ・・・よく路上で干からびてる『M』の形してる!」
「じゃぁ、このミミズもいずれ彼らのように死んじゃうん!?」
・・・死ぬ?俺が?
俺は喉の奥で笑った。
『俺は死なない。絶対にな?・・・ベリーという天使を取り戻すまでは死ねんのだよ。少女たち!』
カバンから何か缶のようなものを取り出した少女たちに言ってみる。
言っておくがこれは大人特有の強がりではない。本当の事だ。
そのときだ。
空から大量の水が落ちてきた。
雨とは比べものにならないほどの大量の水は飴の味がした。
少女たちは笑っていた。
「これで、このミミズは干からびずにすむね。」
「Mの形のSOSだったからすぐに分かったよ。」
「お大事にー」
少女たちは行ってしまった。
『・・・人間とは恐ろしい・・・』
俺は水たまりから這い出た。
体がべとべとする。
この時、俺の心に「人間は面白い」という文字はすでになくなっていた。
メラメラと憎しみが炎のようだ!
―チリリリーンー
鈴の音がした。
俺は振り向くと同時に、細いバイクのようなものにのった人間に踏み潰された。
俺の体はボロボロだ。
『・・・おのれ・・・人間・・・』
俺の体ではもう、どこへも行くことができない。
体中が痛いというよりも踏み潰されて感覚がなくなっていた。
・・・人間人間人間・・・
憎い、人間が憎い。。
俺は神に願った。
俺を人間にしてください、と。
絶対に憎き人間をぺちゃんこにしてみせると。
そのとき、俺の上に空から太陽がさした。
そして、キラキラした女神が降りてくる。
『あなたの願い、聞き届けました。』
女神は優しく微笑む。
美しい。
しかし何故それが人間の形をしているか・・
皮肉に思う俺の心情に気づいてか気づいてないかは分からない。
が女神は俺に手を差し伸べてきた。
『貴方を人間にしてさしあげます。』
その瞬間、俺の体は光につつまれた。
・・・・これで、人間に復讐することができる・・・・
俺は喉の奥で笑った。