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「よいしょっとじゃあ、散歩でもしてパトロールでもしますか」

「散歩なのかパトロールなのか」

「どっちもだよどっちも!」


 ベンチから立ち上がり歩き出す。


「そいやさ、さっきのゆうパイは担当ついてなかったけど、見えないだけ?それともいるのが珍しいの?」

「いや、担当はいる」


 なんかしっくりこない返答だなー


「だが死神も適当なもので、面倒見たり見なかったり様々だな」

「は?何のためにいるのさ、税金返せ税金!」

「本人に言え」

 ごもっともー。


「でもそしたらそもそも何のためにいるの?いてもいなくても変わらないならさ」

「四十九日の間に成仏できるように気持ちを整理する手助けだ。

大体の霊はお前のように、一つ、一つもう出来ぬことを知っていき、最期には未練を残さず消えていける。

しかし全員が全員というわけではない」

「ふ~ん、逆に言えばほとんどは死神なんて必要ないわけね~。残念だったわね私みたいな普通(?)の幽霊担当で」

「仕事だからな」

「真面目だねぇ」


 あれか?刀の神だったから実直とかそんなん?


「で、じゃあ成仏できなかったらどうなんの?」


 ちょうど、交差点に差しかかる。


「アレを見てみろ」

「んん~」


 目を細め額に手を当てる。

 よくわからないけどなんかぶつぶつ言ってる霊がいるな。


「アレは地縛霊というやつだな」

「はぁ~あの有名なっ!いや~生きてる間はついぞお目にかかれなかったけれどね!

珍しいもん見た、ちょっと出版社に売り込みに行かないと!」

「どうやって売り込むんだ」

「言いたかっただけだよ!しょうがないじゃんそういう楽しみしかないんだからっ!で?地縛霊がなんなの?悪いの?」

「未練が強すぎて、四十九日を過ぎて尚、幽霊で居続けた結果、

ああして自我もなくなり、感情だけが残る。

そして強すぎる感情は時に現世にも影響を及ぼすこともある」


 その交差点の角には花が瓶に活けられており、事故があったのだろうと予想される。


「言われてみると、生きてた頃もあそこは事故が多いって聞かされてたな。それってアレの影響かね」

「さぁ、だがやりきれない思いが一人、一人と積み重なり、残っていくとすれば。どんどん悪影響になっていくことは間違いなさそうだが…」


 ちょっとそれは何とかしたいな

 もう自分は死んじゃったけど、母親とか兄弟が事故に巻き込まれたら私も悲しい。


「ちょっとあれ何とかできないの?」

「できん」

「もう、役立たず!」

「死神ができることなんて限られている。なんせもう死んでいるしな」

「まぁわからんわけでもないけど」

「そもそも生きてる間も神が何かしてくれたと思うのか?」

「…それは確かに。正月にはお賽銭も上げて参ったし。葬式にはお金を出したし(自分が払ったわけじゃないけど)お守りや、時には破魔矢も買ったし、あれぇ、マジで無駄金じゃね?あ、ちょっと待って、お参りしたあと1000円拾ったけどアレは!?」

「偶然だな」

「無駄だった!」

「全て無駄とは言い切れないがな」

「なんでよ、結局こうして死ぬんじゃん!」

「それでも生きてる間は、自分の心を慰め続けなくてはならないこともある」


 死んだ父のことを思い出す。

 母親はどんな気持ちだったのだろうか…。


「まぁね。でもほんとにあれは何とかならん?」

「現世に及ぼすほどの力、それは生きているに近しい。かといってこちらの世界に顕現している。

中々手を出せるものはいない」

「じゃあどういった事ならあなたは手を出せるの?」

「成仏しようとする者。四十九日が経ち、霊と消失の境界だけ携わることが出来よう」

「今はまだ私にも何もできないということ?」

「触れることぐらいはできるが本質としてはそうだ」

「そっかー」



-----


「で、実際問題四十九日までなにしたらいいの?」

「好きにすればいい」

「・・・逆に長くない?好きにすればいいったって、なんでもできるようで何にもできないじゃん」

「ちょっと止まれ」


 死神がそう言うと、こちらのポケットに手を伸ばし

「ちょちょちょちょちょっ、セクハラっセクハラだよ!それ!ああ~警察も裁判所もない!

それをいいことに、泣き寝入りしかないのか…」

「何を言っている。コレだ」

「ん~?これは?」


 なんか見覚えないものがポケットに入っていた。


「六文銭だ。いわゆる三途の川の渡し賃だな」

「あ~あ~聞いたことあるなぁ。これないと途中で落とされて溺れるんだっけ?」

「そういう話もあるらしいな?」

「実際のところは?」

「見ての通り三途の川なぞ無いな」

「だよねぇ」

「だが、それは有効だ。それを使えば少しだけ現世のモノと引き換えることができる」

「えっと…つまり?」

「端的に言えば、少しだけ生前の食事を味わえると言えばいいか」

「・・・それってどういうシステム?」

「知らん。そういうものだ」

「ふ~んじゃあさ、これを解明すれば幽霊世界で大儲けできるじゃん?さっすが私天才!」

「四十九日後にお前は消えるんだぞ?」

「そうだったー!」


「とりあえずマックマック!」

「ここまで来てマックか」


 死神がマックとか言ってるのなんかおもろい。


「いいじゃんたまにはジャンクなものが食べたくなるの!」

「たまにどころかそれが無くなれば最後の食事だがな」


-----


「ああ、この味たまらん!」

「よかったな。最近はそれを棺に入れる風習も少なくなったと聞く。それが未練へとつながるのか、あるいは…」

「はふっへお!ふぁっふふ?」

「全部食べてから喋れ」


 もぐもぐもぐ


「なんで幽霊はバリューセット頼めないんだよ!飲み物ついてればいいのに!」

「我儘言うな。六文銭入れてくれただけでもありがたいと思え。そもそもビッグマックを頼んだのが間違いだったのではないか?」

「いや、最後だと思うと、ビッグなマックじゃん?名前を冠する商品なんてさ選ぶしかないよね」

「まぁ好きにするといいが」

「なんだその結論!適当過ぎないか!」

「何を言っても嚙みついてくるな」

「任せて!」



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