受付嬢のおねえさんは見たシリーズ
ギルドの美人受付嬢の、とある春の一日のお話です。
本編とは少し離れた場所から、この世界を覗いてみました。
本編を知らない方でもそのままお楽しみいただけます。
気に入っていただけたら、本編もぜひ。
(あーあ、またこの季節ね)
ギルドの受付のおねえさんははため息をつく。年頃は20代金髪碧眼の美人な受付嬢である。
雪がとけ春が来た、冬の間でお金を使い果たしとうとう食い詰めて冒険者になるために地獄の門を叩く若者が集う。
「ヒャッハー、初心者への説明?いらねぇぜ、魔獣ぶっころしてくるからよぅ、じゃあな行ってくるぜ!」
(じゃあね、来世があるといいわね、次はもっとマシな所に生まれ変われるようにお祈りしてあげる)
(なんであの手の人たちってモヒカンでトゲトゲの肩パッドを装備してくるのかしら?流行り?)
色々な人が来る、若者から中年、元平民、元農民、なんだか犯罪者っぽい人、元貴族、本当にいろいろな事情を抱えてやってくる。
パーティーには仮契約と本契約がある、まずは話し合ってから仮契約をして2~3回ほどクエストをこなして本契約をする、メリットは存在する。パーティー限定の昇格制度である。一人一人はランクが低いけどパーティーでの相乗効果が認められれば解散やメンバーが欠けない限り昇格ができるのだ、その条件が本契約である。
「ちょっと、卑怯よ!そんなやり方!私たちも組みたかったんだから!」
怒声が響く。男性二人と女性二人のパーティと男性一人と女性二人のパーティーの女性だけでもめているようだ。
「まぁまぁ、みんなおちついて、まずは話し合おうよ、ね?」
なんとか宥めようと3人パーティの優男が間に入ろうとする。
最近メキメキ頭角を現している男性だ、冬の間も晴れている日や雪が少ない日を狙ってソロでクエストをこなし、すでに中級者レベルでもトップレベル、もう少しで上級レベルも見えている。
(まぁうちのギルドの中ではかなり強いかもね)
「あなた達、黙って仮契約申請して彼と無理やりパーティーを組んだのだって?そんな事ずるいわよ!私達だって狙っていたのに、今からでも変わりなさい!」
(そういう事ね、あの優男が断らない性格だと見抜いて勝手に仮契約申請をしてなし崩し的に本契約に持っていこうって魂胆ね、グレーゾーンね)
4人組パーティーの男も仲裁を試みる
「ちょ、ちょっと待って、君らはもう俺たちと仮契約を結んだんだろ、なにをいまさら.....」
「あなた達は関係ないから黙ってて」
話すら聞かずにシャットダウン、男たちは茫然と立ち尽くすのみだ。
色々話し合った後に訓練場で女性たちで模擬戦をして勝った方がパーティーを組む事になったようだ。
「怪我だけにはきをつけてねー」
優男が毒にも薬にもならない応援をしている。
しばらくして、女性全員が訓練場から戻って来た。
「悔しいけど、認めるわ。あなた達は最高のパーティーになるわ」
どうやら先に勝手に仮申請をした方が勝ったようだ。
「ありがとう、あなたたちも強かったわ、きっといい冒険者になれる」
その後女性二人と優男のパーティーはクエストに向かった。
「さて、私たちも負けていられないわね、クエストうけましょう、そこの男二人、まずは話し合いしましょ、どんなクエス......
「あ?何言ってんだ?もう仮契約を破棄して、俺たち二人で組みなおしたぞ」
「何言ってるの!契約破棄とか認められるわけないでしょ!」
「おねーさーん、そこのとこどうなの?説明してやって」
受付嬢が笑顔で答える
「はい、契約時にも説明いたしましたよね、仮契約は特にサインは無しでも全員の意志が解散となった瞬間に解約されます」
「私たちは解散の意志なんて示してない!」
「あのね、私以外にもギルド職員がいる目の前で、勝った方が優男とパーティーを組むって宣言した瞬間に解散の意志はあると見なされるにきまっているでしょ?実際あなた達が勝利した場合は解散することになったでしょう?勝負している間にあの男の子たちが解散の意志を私に伝えて再契約手続きをしました、ギルドの決まりです、契約を甘く見過ぎです」
「そんな、ね!ねぇ、もう一度仮契約しましょ?」
「馬鹿か?お前ら?俺たちは去年の秋から冒険者やってるけど命がけなんだよ、契約も守れねぇ尻軽女と組んでたら命がいくらあっても足りないんだよ」
「そうだ、俺たちは前衛だ、俺は盾持ちで前衛を支える、彼は短刀で最前線で命をはる、俺たちがこれから危険を冒して難しいクエストを受けられるのは俺が命がけで後衛を守り、彼が俺の負担を少しでも軽くするために最前線でかく乱をする、すべては後衛が大火力で決定打を決めてくれると信頼してこそだ、お前らは信じるに値しないし、頼れない。」
「おい、こいつらには難しい過ぎるだろ、翻訳してやるよ、ちょっといい条件があったからってほいほい契約を無視する頭が軽くて股も緩そうな尻軽女の為に命かけれるかって言う話だよ、話は終わりだ消えろ」
「ちょっと待ってよ、私達は魔法使いと弓使いよ、前衛いないとロクなクエスト受けられないわ、どうしろって言うの?」
「知らん、その辺の草でもむしって納品してろ、もしかしたら銅貨1枚くらいにはなるかもしれんぞ」
「あぁ、植物か。俺の出身は結構山奥でな植物は詳しいんだ、浅層でもこの時期ならまだそれなりの薬草があるはずだ、さっそく行こう」
「ちょ、ちょっと,,,,,,」
前衛の男二人は引き止める声を無視してギルドから出ていく。
「まぁこういう季節よねー、あの二人組はもしかしたらこのギルドのベテランになるかもね、植物に詳しいのも高得点、薬草採取は人気が無いからね、頑張ってもらわなきゃ」
その後後衛女性は二人で頑張ってみたものの鳴かず飛ばず、契約破りの噂はすぐ広がる、契約失敗はある程度許されるが契約破りは命を担保に仕事をする冒険者にとってタブーなのだ。
近いうちに娼館に新人女性が二人加わったと言う話題が出たきりその二人組の話をするものはいなくなった。
優男は女性二人に手をだして刺されたそうだ。その後の三人の行方も知らない。
「断れない男って言うのは実力があれば頼もしいけど、断らない男はある意味クズよね」
受付嬢は3人のパーティー解散申請書を読みながら一人独りごちる。
ギルドの受付というのは、色んな人間の出入り口です。
希望を持って来る人、夢破れて去る人、情に流されて損をする人。
受付嬢はそれを全部見ています。
本編「婚約者といちゃつく奴を注意したら決闘となり敗北〜すべてを失った男の物語」では、この受付嬢が見守る世界で主人公たちが動いています。
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