表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
河内正則・栄光への道  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/33

2回の攻防

2回表 松原ドリームナインズの攻撃


松原の攻撃は、4番から始まる。


タイタンズのベンチでは、真央と絵里がまとめたデータが、もう頭に入っていた。

特にこの4番打者は、要注意だった。


とにかく当ててくる

長打もある

初球から思い切り振ってくる

ただし――弱点はインハイ

高めの内角に、つい手が出る癖がある


マウンドの智雄は、その情報をしっかり飲み込んでいた。

先発マスクの藤原航も、迷いなくサインを出す。


4番打者


初球から、やはり振ってきた。


ブンッ。


ものすごいスイングだった。

空振り。

だが、ただの空振りじゃない。

「振れる打者」だと一目で分かる。


智雄は表情を変えない。

二球目、外角低め。ボール。

三球目、超スローボール。ファウル。


打者は完全に“外”と“遅い球”を意識し始めていた。


航が、ここでミットを内角高めに構える。


(決める)


四球目。

智雄は同じフォームから、一気に腕を振った。


インハイ。


打者は、思わず反応してしまう。

鋭く振りにいったが、バットは空を切った。


空振り三振。


タイタンズベンチが小さく拳を握る。

データと配球が、きれいにはまった。


5番打者


この打者は、4番よりも粘るタイプだった。

初球、見送る。

二球目、ファウル。

三球目、ボール。

四球目、またファウル。


そして五球目。

外角寄りの球を逆らわずに運んだ。


打球はライト前へ。


ヒット。


松原ドリームナインズに、この試合初めての走者が出る。


6番打者


ワンアウト一塁。


松原ベンチが少し動く。

打ってつなぐか、走って揺さぶるか。


だが、智雄はそこも落ち着いていた。


初球、外角。ストライク。

二球目、超スローボール。ボール。

三球目、内角寄りの重い速球。ファウル。


打者はタイミングが絞れない。

そして四球目――外角低めの速球。


バットが空を切る。


三振。


ツーアウト。


だがその瞬間だった。

一塁走者が、少し大きく飛び出していた。


航は見逃さない。


捕球してすぐ、素早く一塁へ送る。


送球は一直線。

奈緒が受けて、戻ろうとする走者にタッチ。


アウト。


三振ゲッツー。


チェンジ。


2回表終了


松原ドリームナインズは、5番のライト前ヒットで初めて走者を出した。

だが、その直後に三振と牽制のような素早い送球で流れを断ち切られる。


智雄は、マウンドを降りながら小さく息を吐いた。


「……よし」


航がミットを軽く叩く。


「インハイ、完全に効いたな」


タイタンズは、松原の強打を力でねじ伏せるんじゃない。

弱点を見抜いて、そこを突く。


その野球が、2回もきれいに形になっていた。



2回裏 タイタンズの攻撃


この回は 6番から。


松原の投手は、球そのものは悪くない。

むしろ、しっかり打ち取っている。


――それでも、タイタンズは点を取る。


6番 金町圭介(三)


初球、見送る。

二球目、ファウル。

三球目、ボール。


そして 4球目。


金町はしっかり振り抜いた。


打球は強い。

だが――


サード正面。


三塁手が構えて捕球。


サードライナー。


ワンアウト。


7番 村瀬涼太(右)


村瀬は、タイミングを崩されながらも食らいつく。


初球、ボール。

二球目、ファウル。

三球目、ボール。

四球目、ファウル。


そして 5球目。


振り抜いた打球は――


高いバウンドのショートゴロ。


ショートが前へ突っ込む。

バウンドに合わせて捕球。


一塁へ送ろうとするが――


間に合わない。


送球をあきらめる。


内野安打。


ワンアウト一塁。


8番 朝倉美羽(左)


美羽は迷わない。


初球、見送る。

二球目、ボール。

三球目、ストライク。


そして 4球目。


フルスイング。


打球は――

またしてもショート方向。


同じような打球。


ショートが飛び込む。

だが、処理しても間に合わない。


一塁にも、二塁にも投げられない。


内野安打。


ワンアウト一・二塁。


タイタンズベンチがざわつく。


9番 池永智雄


ここは迷わない。


バントの構え。


初球、外れる。

二球目――きっちり決める。


三塁側へ転がす。


処理されるが、確実に進塁。


送りバント成功。


ツーアウト二・三塁。


1番 梶原和樹(中)


ここでまた、タイタンズの“いやらしさ”が出る。


梶原は強振しない。

“転がす”意識。


初球、見送る。

二球目、ファウル。

三球目――


バットの先で押し出す。


打球は、セカンドとファーストのちょうど真ん中。

しかも、かなり深い位置。


どちらも一歩遅れる。


捕っても間に合わない。


タイムリー内野安打。


三塁走者が生還。


2-0。


さらに二塁走者も三塁へ進む。


2番 宮本さくら(二)


追加点のチャンス。


さくらは粘る。


初球、ボール。

二球目、ファウル。

三球目、ファウル。

四球目、ボール。


そして 5球目。


外角低め。


振ったが、バットは空を切る。


空振り三振。


スリーアウト、チェンジ。


2回終了


松原の投手は、打ち取っている。


サードライナー

ショートゴロ

ショートゴロ

セカンド寄りのゴロ


どれも、芯で捉えられているわけではない。


それでも――


1点を失う。


しかも守備に走らされ、

一つ一つのプレーで集中力を削られていく。


ベンチへ戻る松原の投手は、悔しそうな表情を浮かべる。


(打たれてないのに……)


その感覚こそが、タイタンズの狙いだった。


ヒットで崩すんじゃない。

リズムを壊して、疲弊させる。


試合はまだ序盤。

だが、見えないところで差が広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ