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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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松原戦



大阪府大会 3回戦

大阪タイタンズ vs 松原ドリームナインズ


岬ゴールデンクラブとの投手戦を制した翌日。

タイタンズの次の相手は、打撃のいいチーム――松原ドリームナインズ。


真央と絵里がまとめたデータには、はっきり書かれていた。


初球から振ってくる打者が多い


強く振る分、長打が出る


ただし、タイミングを外されると崩れやすい


特に“速い球待ち”の打者が多い


川原監督はその紙を見て、すぐに決めた。


「先発は、智雄や」


ベンチの空気が少し変わる。


智雄が顔を上げる。


「俺、先発ですか」


監督は頷く。


「松原は打撃がいい。

せやからこそ、まともに打たせたらあかん。

お前の、あのスローボールと速球。

それに、内外を使ってタイミングを狂わせる」


有村が腕を組む。


「速い球一本で来る思わせて、60キロ投げられたら、そら狂うわな」


絵里が補足する。


「松原の中軸、前でさばくタイプです。

差し込まれたら打球が死にます」


真央が続ける。


「あと、アウトコースを狙う打者が多いです。

外を待たせて、内へ入れるの効きます」


川原監督がホワイトボードに書く。


3回戦・投手起用

先発


池永智雄


超スローボール(60キロ前後)


重い速球


内外いっぱいを使う


プレート左右も使う


“打ちにくさ”で崩す


2番手


星野慎一


テンポ勝負


ストライク先行


守備にリズムを作る


クリーンアップ二巡目あたりから投入


リリーフ


河内正則


終盤の勝負どころ


コントロールと緩急で締める


流れを絶対に渡さない


監督が言う。


「智雄でタイミングを壊す。

星野で流れを切る。

最後に正則で締める」


智雄はゆっくり頷いた。

岬戦で見せたあの投球が、今度は最初から武器になる。


「……やれます」


正則が横から短く言う。


「最初から飛ばしすぎるなよ。

相手、勝手に崩れる」


智雄が少しだけ笑う。


「分かってる。今日は“力勝負”やなくて、“時間勝負”や」


星野がグラブをくるっと回す。


「で、俺が片づけると」


有村が即ツッコむ。


「その前に抑えろや」


ベンチに少し笑いが広がる。

でも、その笑いの底にある緊張は消えない。


スタメンの考え方


松原ドリームナインズは打球が強い。

だから守備を少し固める。


外野は一歩深め


美羽は終盤の守備固め候補


航はこの試合もマスク


金町は三塁でそのまま起用


村瀬はバントと小技で流れを作る


川原監督は最後に言った。


「相手は打ってくる。

でも、打ってくるなら“打たせ方”がある。

今日は智雄の球で、松原のフォームを壊す」


智雄は、ブルペンへ向かう前に一度だけ空を見た。


先発。

大事な試合。

しかも“打撃のいい相手”。


でも今は、前みたいな焦りはない。


自分には、使える武器がある。

正則から学んだ間。

翼の“おちょくりサーブ”を応用した時間差。

そして、自分の重い速球。


(よし)


大阪府大会3回戦。

タイタンズは、また違う顔で勝ちに行く。




試合前ミーティング:控え選手の起用


松原ドリームナインズは打撃のいいチーム。

タイタンズベンチでは、川原監督がホワイトボードの前に立っていた。


「今日は、守備と走塁でも相手を揺さぶる」


そう言って、監督は一つ名前を書き足す。


川上 眞子(6年)


ベンチが少しざわつく。


眞子はこれまで主に控え。

だが、チーム内では有名な存在だった。


足のスペシャリスト。


スタートの速さはチーム随一。

一歩目の加速が圧倒的で、塁に出ればほぼ止まらない。


チームメイトからは、こんなあだ名が付いている。


「韋駄天」


そしてもう一つ。


「女イチロー」


理由は二つ。


外野の深い位置からでも正確な送球


内野守備での俊敏な反応


監督が言う。


「今日はショートに入る」


ショートの亜由美が少し驚いた顔をする。

だが、すぐにうなずいた。


亜由美は遊撃だけでなく複数ポジションを守れる。

だからこその配置転換だった。


監督が続ける。


「眞子の足は、この試合で使う」


「松原は打ってくるチームや。

打球も速い。守備範囲が広い方がええ」


真央がデータを補足する。


「松原の打球方向はセンターから右が多いです」


監督が頷く。


「ショートが一歩でも早く動けばアウトにできる」


眞子は帽子のつばを押さえて、小さく頭を下げた。


「はい」


有村が笑う。


「韋駄天ショート、出陣やな」


梶原が言う。


「守備範囲、頼むで」


眞子は少し照れながら言った。


「ボール、全部取りに行きます」


ベンチの空気が、少し引き締まる。


この試合のポイント


松原ドリームナインズ

→ 打撃型チーム


タイタンズ

→ 守備・投手・走塁で崩す


先発:池永智雄(緩急投球)


二番手:星野慎一(速球)


リリーフ:河内正則コントロール


さらに


ショート 川上眞子


韋駄天の守備と足で、

試合の流れを変える役割を担う。


川原監督が最後に言った。


「今日のキーワードは三つや」


「タイミング」

「守備範囲」

「走塁圧力」


そして眞子の方を見て、笑う。


「韋駄天、準備ええか」


眞子はしっかり答えた。


「はい、行けます」


大阪府大会三回戦。

タイタンズの新しい布陣が、グラウンドへ向かう。

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