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河内正則・栄光への道  作者: リンダ


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28/33

序盤の攻防

1回表(岬 0-0)


航はミットを外角低めに置いた。

正則は一球目からそこへ置く。ストライク。


1番

相手の先頭打者は「見てくる」タイプ。簡単に振らない。

でも正則は焦らない。際どい球でカウントを整え、最後は詰まらせて二ゴロ。


2番

二人目、初球を狙い打ってきた。

打球は鋭いが三宅奈緒の正面。一塁でアウト。


3番

三人目、粘られてファウルが続く。

航が一度マウンドへ行く。


「大丈夫。最後、外低めでええ」


正則がうなずく。

投げ込んだ球は、外角いっぱい。見逃し三振。


三者凡退。

初戦の硬さを消すように、タイタンズが先に“空気”を取った。


1回裏(タイタンズ 0-0)


梶原が粘る。左サイドの“出し入れ”がいやらしい。

ストライクに見えて外れる。ボールに見えて入る。


8球目、梶原は逆方向へ運ぶ。ライト前。

一本目が出てベンチが少し軽くなる。


さくらは送らない。投手戦でも“最初は揺さぶる”。

カウント2-1から引っ張って一二塁間。

……セカンドが一歩で入ってアウト。


亜由美、詰まらされながらも三遊間へ転がす。

だがショートの守備範囲。間に合う。


二死一塁。

奈緒が打席へ。

相手は外を徹底。甘くならない。


奈緒の打球は強い。

でもライト正面。


先頭が出ても、点にならない。

投手戦の匂いが、ここで濃くなる。



2回表(岬ゴールデンクラブの攻撃)


先頭打者がバットを短く持って入ってきた。

「当ててでも出る」――そんな構え。


航はミットを低く構える。外角低め。

正則はそこへ置く。ストライク。


二球目、同じコース。

打者の目が「外」に寄った瞬間、三球目は内角へ。

詰まらされた打球は三塁方向へ転がる。


三塁の金町が一歩前で捕って、一塁へ。

アウト。


二人目は、初球の緩い球に泳がされる。

速い球を待っていた体が前へ突っ込む。

二球目の速球を振り遅れ、ファウル。


航は焦らせない。

もう一度、緩い球でタイミングを外す。


打者は耐えきれずに手を出し、

ふわっと上がった打球はセカンドへ。


宮本さくらが、落ち着いて捕る。

アウト。


三人目。

岬ベンチは「まず塁に出ろ」と声を飛ばす。

けれど、正則の投球は“かわす”というより“支配”に近い。


外角低めでストライク。

次は高めを見せて、最後はまた低め。


打者のバットは空を切る。

見逃し三振。


三者凡退。

岬はタイミングを合わせようとしているのに、合わせさせてもらえない。

正則の緩急とコースの出し入れが、じわじわ効いてくる。


2回裏(タイタンズの攻撃)


5番、藤原航。

マスクを被る男は、打席でも落ち着いていた。


左サイドの投手の“外の出し入れ”を、無理に追わない。

ファウルで粘り、甘く入った球だけを待つ。


6球目。

ほんの少しだけ高い外角。


航はコンパクトに振り抜いた。

打球は二遊間を抜け、センター前。


ベンチが小さく湧く。

投手戦での一本は、それだけで重い。


続く6番、金町圭介。

ここは送って、得点圏――と誰もが思った。


だが金町は強行。

左サイドの球にタイミングを合わせきれず、

体の前で当てた打球が、セカンドへ転がる。


「取れる!」


岬のセカンドが入って、二塁へ。

ショートが一塁へ。


ダブルプレー。


一瞬で、走者が消える。

投手戦特有の、容赦のなさ。


7番、村瀬涼太。

バントもできる、粘りもできる。

でも相手投手はここで、初球からストライクを取りにくる。


村瀬は反応して振った。


鋭い打球。

――だが、サード正面。


岬の三塁手が、胸の高さで捕る。

サードライナー。


三人で攻撃終了。


ベンチに戻る金町が唇を噛む。

航が軽く声をかける。


「ええヒットやった。切り替えよ。次、守りで流れ取る」


金町はうなずく。

投手戦は、一本のヒットより、一本のアウトが空気を変える。


そして正則は、もうマウンドへ向かっていた。



3回表(岬ゴールデンクラブの攻撃)


岬のベンチが、はっきりと声を飛ばした。


「インコースは手ぇ出すな!」

「詰まらされるだけや!」

「アウトコース、腰より低め拾ってけ!」


さっきまでの“なんとなくの待球”とは違う。

狙いが具体的になったぶん、怖さも増す。


航はしゃがんだまま、正則の顔を一度だけ見た。

正則はうなずく。


(外を狙ってくるなら――外に投げない)


航が構える位置は、インコース“ど真ん中”じゃない。

ボール半分から一個分、ベース寄り。

ギリギリ、ストライクゾーンにかかる角度。


打者の目にはこう映る。


(内……ボールか?)

(いや、入ってくる……?)


4番先頭打者


初球、内寄り。ストライク。


岬ベンチから「手ぇ出すな!」の声が飛ぶ。

打者は我慢する。


二球目。

今度は外角低めに“落とす”球。ボール。


(来た、狙い球)


打者の重心が、外へ寄る。


三球目。

航はもう一度、ベース寄りのインコースにミットを置いた。


正則が投げ込む。

打者は反射でバットを出しかけて、止める。


ストライク。


一瞬で、打者の中の“作戦”が揺れる。


四球目。

外角低め――狙い球に見える高さ。


だが最後に沈む。

打者は拾いにいって、二ゴロ。


アウト。


5番二人目


岬の打者はさらに徹底する。

インは見送る、外低めだけ拾う。


航はそれを逆手に取った。


内を二つ続けて見せ、

三球目で外へ――行かない。


外に見せた軌道で、また内。


打者が泳ぎ、ファウル。


最後は高低差。

内の高めを見せて、同じ腕の振りから外の低め。


……と思わせて、インのベース寄りへ。


詰まった当たりが一塁側へ転がり、

奈緒が拾って一塁へ。


アウト。


6番三人目


ここで岬が、ついに“作戦通り”の形を作る。


外を待って、外を拾う。

腰より低め――その言葉通り、

バットの先でうまく運ばれた打球が、レフト前に落ちる。


この試合、岬にとって貴重な一本。

ベンチが少し湧く。


でも航は慌てない。

正則も表情を変えない。


(一本は打たせてもいい。次を切る)


7番四人目。

岬はここで、バントも視野に入れる。


航は内野に小さく合図。前進しすぎるな。

正則はクイックで走者を釘付けにする。


投げるのは、またあの位置。

インコース、ベース寄りのギリギリ。


打者は外を待っている。

差し込まれる。


セカンドゴロ。

さくらが二塁へ送って封殺

スリーアウトチェンジ。



3回裏(タイタンズの攻撃)


この回、打順は 8番から。


8番 朝倉美羽(左翼)


美羽は簡単には手を出さない。

相手の左サイドのリズムをじっと見ている。


外角低め、ボール。

内角、ファウル。

外角、ファウル。


岬の投手はコーナーを丁寧につくが、美羽は食らいつく。


四球目、五球目、六球目――

ファウル、ファウル、ボール。


カウント 3-2。


七球目、ファウル。

そして 八球目。


外角低め。


美羽は振らない。


「ボール!」


フォアボール。


投手戦の中で、大きな出塁だった。


9番 河内正則(投手)


正則はバットを短く持つ。

ここは確実に繋ぐ場面。


初球ボール。

二球目ファウル。

三球目見送る。

四球目ファウル。


打席は長くなる。


六球目、七球目、八球目と粘り、

カウントは 3-2。


そして 九球目。


外寄りの球を、正則が鋭く振り抜いた。


打球はセンターへ一直線。


センター前ヒット。


ノーアウト 一・二塁。


タイタンズベンチがざわめく。

この試合、最大のチャンス。


1番 梶原和樹(中堅)


岬バッテリーはここでインコースを攻める。


初球、内角。


梶原は迷わず振り抜いた。


鋭い打球。


しかし――


真正面。


岬の一塁手が反射的にグラブを出す。


ファーストライナー。


そのまま一塁ベースを踏む。


一塁ランナーの正則もアウト。


ダブルプレー。


しかしその間に、

二塁走者の美羽は捕球を確認してからスタート。


一塁手がベースを踏みに行く間に、

悠々と 三塁へ進塁。


ツーアウト三塁。


2番 宮本さくら(二塁)


さくらは冷静だった。


初球ファウル。

二球目ボール。

三球目ファウル。

四球目ボール。


カウント 2-2。


そこから粘る。


六球目ファウル。

七球目ボール。

そして 八球目。


少し甘く入った外角。


さくらは思い切り引っ張った。


鋭い打球がレフトへ。


しかし――


レフトが一歩前へ。


グラブに収まる。


レフトライナー。


「スリーアウト!」


チェンジ。


ノーアウト一・二塁から始まったチャンス。

しかしまたしても あと一本が出ない。


投手戦は、まだ続く。



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