ユニオン
素人さん、コメントありがとうございました!
今後とも頑張りますので、よろしくお願いします。
相変わらず短いですが、どうかご勘弁を。
「ア、アメリカに行くんですか?」
「そうだ。」
柳沢さんの自信満々の顔を見ると、どうやら本当のようだ。
「けど、どうしてそんな唐突に?」
「まあ詳しい話は車の中でする。早く乗れ!」
と、柳沢さんはさっさと自分の車の運転席に乗り込んでしまった。
「アヤト、お前は何か聞いてるか?」
「いえ、僕はまだ何も聞いていません。」
どうやらアヤトもまだ詳しい話は聞いてないようだ。
「そうか…」
全く、あんな突拍子もない上司を持つと大変だ。
「僕はもう慣れましたよ?」
「うおっ!お前まで俺の心を読むな!」
アヤトは楽しそうだ。
「ははっ、アリスちゃんじゃなくても青山さんの考えてることはわかりますよ。青山さんはすぐ顔に出るし……
僕も青山さんと同じこと考えてました」
「お互い大変だなあ」
「ふふ、僕はもう慣れたって言ったでしょ?」
何をどうしたらあの上司に慣れるんだ?
プーーーーーー
「おいお前ら!早く乗れ!」
「おや、お呼びです。行きましょうか。」
―――――――――――――――――――
「二人とも、今回の任務は、平たく言ってしまえば警備だ」
「警備?なんのですか?」
「二人とも、明日ホワイトハウスで会合が行われるのは知ってるか?」
初耳だ。
隣を見るとアヤトも首を傾げている。
「まあ、だろうな。だってその会合、極秘だし」
…………じゃあ言うなよ。
アヤトも苦笑いしてるし。
「まあ要するに、会合があるから、そのホワイトハウスの警備をしろ、ということですね」
「そうだ。物分かりがよくて助かるな。しっかりやってくれよ」
「会合に参加するのはどこですか?」
「日本、アメリカ、ロシア、ドイツ、中国の5ヶ国だ。」
「ふむ…なるほど。日本以外は軍事大国ばかりですから……話し合いの内容は軍事関係のことと見てよろしいですか?」
アヤトが問う。
「ああ、軍事力の保有のバランスについての会合らしい…
どうせアメリカが日本の軍事力を減らしたいだけにセッティングされたものさ。」
「ふーむ…」
アヤトはしばらく考え込んでいたが、
「しかし解せないですね。何故僕達を呼んだんでしょう。アメリカならそれなりの警備をつけられるでしょうし、何より極秘の会合でしょう?警備はいるんですか?」
その言葉に柳沢さんは顔をしかめた。
――これはきっと、何かある。
「あの、本当のとこ何なんです?俺達が呼ばれた理由」
そもそも、アメリカが日本に頼るのは変だ。
日本を敵対視しているアメリカが果たして日本に応援を頼むだろうか。
「…実は今日の会合のこと…ばれているかもしれないんだ。」
柳沢さんにしては珍しく歯切れが悪かった。
「会合の場所や内容、参加国まで筒抜けらしい。…やれやれ、あいつらの無能さには呆れるよ。」
「ちょっと待って下さい、柳沢さん。」
アヤトが真剣な顔で尋ねる。
「誰に情報が漏れていたんです?」
「……………」
柳沢さんはしばらく黙り込んだ後、
「…ユニオンってテロ組織、聞いたことあるだろ?」
「ああ、あの軍事大国ばかり敵視する…」
「そうだ。会合に参加する国はほとんど、いや全て奴らの標的だ。流石にそれはまずいんでな。私達の自衛も兼ねてだ。」
「………やっぱり、日本が、その、ユニオンに狙われているのは…」
「ああ、強化型ASを持っているからだろうな。実際、アヤトのASは最強だ。…全く、自衛にしか使ってないから特別永世中立法は守っているというのに…」
「…それだけじゃないでしょうね…」
――――特別永世中立法は、10年前、永世中立国だったスイスによって提唱された条約だ。
その条約は、まず条約の加盟国は軍事関係のことは行えなくなる。
しかし、その加盟国に攻撃を行った国家に対しては反撃しても良い。
そしてその攻撃を行った国家に世界中の軍隊は無条件に攻撃できる。
特別永世中立法に加盟した国を攻撃した国は、漁夫の利を狙った世界中に狙われることとなる。正に理想的な均衡関係が出来上がるのだ。
この条約は国連で満場一致で可決された。
そして元々永世中立国だったスイスやオーストリア、そして日本など、軍事力を保有していない(自衛隊こそあったが)国が加盟した。
しかし、日本はその条約を――
「政治に使ったから――」
特別永世中立法には、軍事に関する条約を結ぶことも禁止していた。
日本はそれを逆手に取り、
安保を自分達から破棄したのだ。
当然、アメリカのバッシングは酷かった。
しかし、アメリカがどんなに抗議しても、所詮自分達の国益のため、どの国からも指示されず、むしろ彼等への風当たりは強くなっていった。
アメリカ国内でも政府への反発が大きくなっていった。
圧倒的に不利な状況。しばらくするとアメリカは安保から手を引いた。
そのことを祝福する国もあるし、平和の為の法を政治に使うなんて、という国もある。
そのユニオンはおそらく反対側の勢力なのだろう。
「で、会合の会場がユニオンに狙われるかもしれないから俺達はアメリカに行く、これであってますか?」
「いや、まだあるな。」
柳沢さんは妖しく微笑む。
「僕のASが…軍事目的で無いことを示すこと、それが目的ですね?」
「よくわかったな。百点満点だ。」
安保の件で日本を憎むアメリカは、日本がASを保有していることに反発していた。
当然、他にも反対する国はある。
そんな国に示すためだろう。
「流石。ずる賢いな。柳沢さんは。」
それに答えるかのように、柳沢さんはニヤリと笑う。
「二人とも頑張れよ。ボーナスは弾むぞ?」
「ヘイヘイ、頑張りますよ。
あ、そういやアヤトのASや、俺の銃はどうするんですか?」
「もうアメリカには送ってある。…ああ、それと、もしもの時のために、私がスペシャルなプレゼントを入れておいた。
困ったら使え。」
「何なんですか?プレゼントって。」
「うーん、ギリギリまで言いたくなかったが、まあそれだと不便か。」
柳沢さんが俺達の座っている後部座席を向いて笑う。
ちょっと、今運転中。前向きなさい。
「おまえら、聞いて驚け―――――」
この時はまさかその「プレゼント」が役に立つとは思わなかった。
ちなみに劇中で説明出来なかったことの補足をさせてください。
・核はまだ開発段階。
・冷戦はまだ続いている。
・家電等のレベルは現代と同じ。
ちなみに劇中の西暦は2016年です。説明し損ねたので(^-^;
コメントお待ちしてます。