履きつぶされたローファー
最寄り駅で電車を降り、改札を出て階段を降りている時に、ふと視界に気になるものが入った。それは男子高校生が履いているローファーだった。どう見てもなんか形がおかしい。
その違和感を探るべく私は彼の足元を注視した。そしてローファーがとんでもない形に変形しているのがわかった。彼のローファーの踵部分は完全に死んでいた。
どういうことかというと、踵部分を踏み潰した結果、スリッパみたいな形のローファーになっていたのだ。本当にスリッパみたいに踵部分がなくなっていた。ここまで綺麗に踏み潰すとはなかなかやるな君……と彼の背中にそっと呟きながら、彼がとても器用であることにも気づいた。
スリッパのような靴では歩きにくいし、何かの拍子にぴょーんと数メートル前後に飛ぶことだってあるだろう。致命的なのは全力疾走が不可能ということだ。
朝寝坊して駅までダッシュ! ができないということだ。
彼はダッシュと無縁の生活をしているのか、それともスリッパ化したローファーでもダッシュできるすべを身につけているのか。それは彼のみぞ知る。
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