異界の踏み込み
とりあえず、廃校の靴箱に靴を置き、靴を履き替え…たかったのだが、悲しい事に中靴を忘れてしまった。
「まあ廃校だし、誰にも怒られないだろ。」
そう思い、歩いても床があまり汚れない事を確認し、土足で玄関の先へ踏み込む。
たくさんの飾り物に埃が被った多目的室。後ろ側に机と椅子がまとめられた会議室。その隣の四部屋並んだ一年生の教室…その不気味で綺麗な風景を見て、昔の記憶に入り浸る…でも、思い出したのは高校時代や大学初期…中学時代のことは、あまり思い出せなかった。
廊下を歩いていると、トイレが目に入った。
「なんか気になるなー。」
今まで廃墟や廃校を見てきたが、トイレは一度も見たことがなかった。というか、昔から公共の場のトイレの臭いが本当に嫌いで、嗅ぎたくもなかった。でも、今日はなんか気になったから入ってみる事にした。
「やっぱり変わってないなー。」
…今日は変な発言をよくしてしまう気がする。臭いは学生の時のトイレと大体同じだった。もっと強烈にキツくなっていると思っていたけど、そんなこともなかった。あ、流石に女子トイレは入っていないよ!?
トイレの個室に入り、用を足す訳でもないが、座ってみる。あの臭いは苦手だが、一人の時間がとれるって意味では、少し安心できる気がする。
しばらくぼーっとしていると、足音が聞こえてきた。微かにだが話し声も聞こえる。誰かがここに来たのだろうか。でも、それにしては妙に雰囲気が変わった気がした。なんだろう。気持ち悪く、拒絶したくなるような感じ。今すぐにでも出て逃げたかったが、もしかしたら得体のしれない何かが目の前にいるかもしれない。どこか知らない世界に連れていかれるかもしれない。そう勝手に頭が考えてしまい、立つことすらできなかった。
動けないまま時間が経っていく。実際は時間が短かったのだろうが、体感は物凄く長く感じた。怖くて、辛くて、気持ち悪かった。
そんな時、何か上から音がしたような気がした。ふと天井を見てみると、得体の知れない、どろっとした何かが、上から流れてきていた。黒くて、ところどころに色収差が見えて、まるでバグが起きているみたいだった。
「うわっ…!」
それを見て急いでトイレから出た。正確に言うと出た"らしい"。そして、廊下を無我夢中に走った。さっきまではいなかったはずなのに、周りには沢山の人がいて、その人達が僕を指指してひそひそと何か言っているようだった。それが更に怖くて、足がもつれそうになるくらい、転んだら大怪我するくらいに、玄関まで走った。
「待って!」
なぜか周りにいた人達のうちの1人が追いかけてくる。怖い。怖い。怖い。怖い。頭の中にはその言葉しかなかった。
追いかけてきた人は足が速くて、後少しで玄関に着けるというところで肩を掴まれた。自分の中ではかなり全力を出していたから肩を掴まれたくらいでは滑って転ぶだろうと今なら思うが、なぜか身体がピタリと止まった。
「大丈夫?」
そう言われ、恐る恐る振り返った。身体を動かすことすら力が必要で、かなりゆっくりゆっくりと振り返る動きをした。
振り返るにしては結構な時間をかけて振り返り、追いかけてきた人の正体を見た。そして、それから記憶がない。恐らく意識を失ったのだろう。だって、あんなの見たら意識を失ったっておかしくない。
その人は、片目が無かった。
正確には、さっき見たどろっとした液体についていたバグ?のようなものに覆われていて、その上から眼鏡をかけていたからどうなっていたかはよく分からなかったけど、普通なら目がある部分から、血のような液体がたれていた。恐らく抉られたという表現が正しい気がする。
そんな人を見て、なんでこんなものが存在しているのか、なんでその人?は僕に話しかけてくるのか、全てがわからなかった。
そんな存在を見て、異界に迷い込んでしまったのだろうと思った。
この文章を読んで頂きありがとうございます。なゆと申します。今まで色々な物語を脳内で創っていましたが、小説として具体的に書き残すのは初めてですので、文法的におかしい部分や誤情報を書いてしまった箇所、語彙力の不足等があると思います。直せる様に頑張ります。
まだ未完成ですが、続きや別小説等が出たら読んでくれると嬉しいです。