表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

ヨハン 2

 次の日、ヨハンはハアロ大将軍の邸宅の回りをうろうろと歩いていた。

 ハアロ大将軍。リエッサ王妃の父。


 昨日、薬を運んだ町医者は馬車を降りた所で殴られて拉致られた。

 気が付くと自分は椅子に縛り付けられ、回りを覆面の男達が囲んでいた。

 男達は物騒な武器を持っていた。ハンマーやバール、ナイフなどである。

 町医者は青くなった。

 散々脅かされ「ハアロ大将軍の家に住むルシール様に届けている」と白状した。

「ルシールとは誰だ」と聞いた所「ハアロ大将軍の義母様だ」と言った。

「誰が飲んでいるかは分からない」と町医者は言った。


 ヨハンは予感が的中したと感じた。まさか、ハアロ大将軍の妻があの薬を数か月も使う筈が無いだろう。という事はやはりリエッサ王妃か。

 まさか、家族ぐるみで詐欺?


 アクレナイトは騙されているのだ。

「何てこった……」

 ヨハンは呟いた。


 と、道の向こうからがたがたと花売りのワゴンが近付いて来た。ワゴンを押しているのは中年の女性と若い女性だ。二人は衛兵に何かを話している。門が開いて花束を持った若い女が屋敷の中に入って行った。ヨハンは物陰に隠れてその様子を伺う。

 暫くすると女は出て来た。


 ヨハンは花売りのワゴンに声を掛けた。

「俺にも花をくれないか」

 花売りは愛想よく「勿論です。どれが宜しいですか」と聞いた。

「適当に花束を見繕ってくれ。恋人にやるんだ」

 そして女の顔をまじまじと眺めた。女はベールで半分顔を隠している。

「さっき、この屋敷へ入っていっただろう?」

 ヨハンは言った。

「ええ。いつもこのお屋敷で奥様がお花を買ってくださるのです」

 女は答えた。

「ここはハアロ大将軍の家だろう? リエッサ王妃の実家だ。リエッサ王妃はよくここへ帰って来るのかい?」

 ヨハンは尋ねた。

 花売りの二人はお互いの顔を見合わせる。

「さあ……私どもには分かりません」

 若い女が答えた。

「この屋敷には奥様と誰が住んでいるのだろう?」

「さあ……」

 ヨハンは屋敷に視線を移す。

「若い女性はいないのかな?」

「……お会いした事は御座いませんが……」


「いつもはどこで花を売っているんだい?」

 ヨハンは笑顔で女に尋ねた。女性ならうっとりとしてしまいそうな優しい笑顔だ。

「王宮の前の広場です」

「じゃあ、俺が誰かに花を届けてくれと頼んだら届けてもらえるのかな?」

「喜んで」

 年嵩の女が微笑んで言った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ