レノン湖 4
「ふう……」
ルシールは乱れた髪を直した。
顔に枕を乗せたリエッサは動く気配が無かった。
「……殺してしまったか。全く。わざわざこんな遠くまで来た甲斐が無いではないか……」
枕を外して老婆の着衣を直した。
かっと見開いた目の瞼を下ろして、手を胸の上で組ませた。
90年もの間戦って来た自分の体を愛おしそうに撫でた。
「よく頑張ったのう……。偉かった。本当に偉かった。ゆっくりと眠っておくれ。さようなら。ルシール」
そう呟く。
窓の外はとっぷりと日が暮れて真っ暗になっていた。
ルシールは身じろぎもせずに命の消えた我が体を見ていた。
一時、眠ってしまったらしい。
気が付くとベッドに突っ伏していた。
遺体は穏やかに横たわっている。その頬に手を伸ばした。
部屋にはカンテラの明かりが揺れていた。まだ油が切れていなかったらしい。
窓から月明りが差し込んでいた。遅い月が上ってきたのだ。
ルシールは辺りを見回すと厚手のショールを手に取った。
馴染み深い自分のショール。それを肩に掛ける。
ルシールはカンテラを持って台所へ歩いて行った。
「……しかし、ルイス・アクレナイトめ。許せん。儂の仕事を邪魔しおって……。だが、もう仕方が無い。そっちは諦めてハアロとアクレナイトをぶつけるか。共倒れしてどちらも滅んでしまえばいい。いや、その前に憎いブラックフオレストを先に潰さないと……油はどこだ?」
ルシールはぶつぶつと言いながら油を探す。
台所から油を持って来るとそれを3人の遺体の回りに撒いた。
カンテラの火を油に落とす。床が燃え出した。
それを確認するとルシールはこっそりと裏口から出て行った。
何もかもが寝静まっている。
誰も歩いていない道をルシールはマントを着けて歩き出した。マントは闇に溶けている。
農家は夜空に火を噴き上げ真っ赤に燃え出した。




