レノン湖 2
老夫婦は訝し気に訪れて来た女を見た。
ここを買い入れた貴族の奥様に絶対に人を入れてはいけないと言われていた。誰が尋ねて来ても、私の遣いだと言ったとしても入れるなと強く言われていたのだ。
「あのう……。どんな御用で?」
「ミア様の御遣いで卵を買いに来たのです。それで、その序にこのぶどうジュースを持って行ってくださいと言われました。いつもルシール様を良く見てくださっているのでお礼だそうです。本当はもっと早くに着くはずだったのですが、生憎船が空いていなくて」
そう言って女は籠の中の卵を見せた。
「おやまあ。わざわざこんな所まで卵を買いに? まあ貴族様の考える事は分かりませんな」
「このジュースだけお渡ししたら帰ります。船を待たせてあるので。これは生ジュースです。御夕食はまだですか? えっ? これから? 良かった。間に合って。明日になるとまずくなるので今日中にどうぞ。でもルシール様にはあげないでくださいね。生ジュースはお腹をこわしますから。夜中にオムツの交換は嫌ですよね」
そう言って紫色のジュースを渡した。
◇◇◇
「もう、良い頃かしら?」
ルシールは窓から中を覗いてみた。
老夫婦と娘は机に突っ伏して口から血を流している。
即効性のある毒を入れたぶどうジュースを彼等は飲んだのだ。
ドアの鍵に針金を差し入れてドアを解除する。そんな事は朝飯前だった。
内側からドアにカギを掛けた。
カンテラを持ってドアをひとつずつ開けて確かめる。
思わず鼻歌が出た。アンが歌っていた『私の子馬』。
一番奥のドア、そこを開けるとベッドに横になった老女がいた。
ルシールはにやりと笑った。




